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猫イモウト  作者: 須羽ヴィオラ
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第十章 願い #4

 でも、夢じゃないんだ。私と三笠君はお互いに同じ思いを持っているんだ。

 明日から私達は友達以上の関係で居られるんだ。明日も、明後日も、その後も。

 そのとき私は、大変な事実に気がついた。

 私はあることに気がついて愕然とした。

「大変だ。どうしよう」

 思わず不安の声を漏らす。


「どうしたの。濱野さん?」

「私、大変な事に気がついたの。私達が、元の世界に戻ったら、私達の記憶は一体

どうなるんだろう」

「そうか。翠ちゃんは人間のままだから、ネコモリサマを捜す事もない。隠れ家に

行く事も、時間を遡る事もない。全部、無かったことになる」

「私達がお互いの胸の内を確かめあった事も無かったことになる……」

「元に戻ったら、みんな忘れちゃう…って事か……」三笠君が唇を噛み締める。


「そ、そんなの嫌だ。私達、折角お互いの気持ちを確かめ合ったのに…。それに、

もしも、元の自分に戻ったら、とても三笠君に告白する勇気なんか無い」

「僕も、同じかも……しれない」

「そんなの嫌だ。両片思いで告白できないまま、離ればなれになってしまう。どう

しよう?」

 胸が痛くなってくる。

 二人とも、みんな忘れてしまう。忘れた事すら、忘れてしまう。

 嫌だ、嫌だ。そんなの。


「濱野さん。落ち着いて。前に、翠ちゃんが猫になったときの話を聞かせて貰った

けど、一旦は翠ちゃんを忘れて、最後には思い出したんだよね。それは何故?」

「それは、多分。翡翠のせい」

「カワセミ?」

「私、子供の時にみた翡翠の羽の色に魅せられて。翡翠は、私のマスコットキャラ

なの。その羽の翠色から、翠の事を連想して、思い出したの」

「なるほど、強く心に残っている記憶から、連想できれば良いんだね」

「多分…。でも、三笠君との事を連想できるようなものは、まだ…無い」


「無いなら、作ればいい」

 三笠君が、何かを決心したように力強い言葉を発する。

 同時に三笠君の両腕が私の肩に伸びる。

 エッ、エッ、エッ。

 三笠君の顔が近づいて来て、唇を何かで塞がれた。


 息を飲み込む。

 突然の事に驚いて、声が出ない。


 私、いまキスしてるんだ。三笠君と。

 心臓が喉から飛び出るほどの高速回転になる。

 顔がヤケドしそうなほどに暑くなる。

 その熱が、首筋から肩、胸へと広がっていく。


 驚きと緊張で息苦しくなってきた。

 えーと。どうやって呼吸をしたら良いんだろう。妙に冷静にそんな事を考える。

 三笠君の熱い鼻息が私の頬にかかる。

 そうか、鼻で息をすれば良いんだ。

 詰まっていた呼吸を鼻から吐き出す。


 思いの外、強い鼻息になった。ウワー、三笠君に嫌われたりしないかな。

 三笠君の表情を確かめようと、視線を動かすと、三笠君は目を閉じていた。

 そうか、キスの最中は目を閉じてるもんなんだ。

 慌てて目を閉じる。


 視界が塞がれた事で、唇の感触がより鮮明なものになる。

 自分の唇なのか三笠君の唇なのか、区別がつかない。

 頭がぼーっとなり、足の力が抜ける。

 縋り付くように、三笠君の背中に腕を回す。

 三笠君も私の背中に腕を回す。

 互いの体が密着する。

 体温が通い合う。呼吸が同期する。心臓の鼓動を感じ合う。

 私と三笠君は、いま一つなんだ。

 二人で、一つの体を共有しているように感じる。


 二人を取り巻く世界が、私達の中の一点に溶け込んで行くように感じる。

 時間さえもが、私達二人と一体の物になろうとしている。

 私の感覚も心も、全てが時空の中に溶け込んで、私は光り輝く点になっていく。

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