表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫イモウト  作者: 須羽ヴィオラ
22/39

第七章 隠れ家 #2

 プルルルル、プルルルル、プルルルル。

 呼びだし音続く。

 プルルルル、プルルルル。

 どうしたんだろう、なかなか出てくれない。


 モシモシ。

 やっと返事が返って来た。

「もしもし。アーちゃん?」

「ああ、美寿穂ね。ちょっと待ってて…」

 そこで、アーちゃんからの通話が無音になる。

 暫く経ってアーちゃんから反応が届く。

「お待たー。今、蔵の虫干しをやらされてたんだ。美寿穂のお陰で、抜けられた。

助かったよ。で、何の用?」

 とアーちゃんから。

「アーちゃんに教えてもらいたい事があるの」

「私に? 一体なに?」

「ちょっと待っててね。今、電話代わるから」


 えー!? 誰と? アーちゃんの大きな声がスマホから漏れ出てくる。

「もし、もし。電話代わりました。三笠です」

 えー!? 三笠君!? なんで三笠君が美寿穂と一緒にいるの?

 アーちゃんの大音量で、スマホが震える。

 三笠くんも、その声に気おされ、スマホを耳から遠ざける。

 アーちゃんのリアクションが収まるのを待って、三笠君が口を開く。

「あの…、ちょっと事情があって、濱野さんと一緒に探し物をしてるんだ」

「何々、どんな事情? 詳しく教えて!」

「いや、それは後で。…で、その探し物なんだけど…」

「ああ、そうだったね。で、何探してるの? 私に分かるようなこと?」

「奥寺さんの家って、代々この街に住んでるんですよね」

「うん。そうだよ」

「猫守神社って知ってる?」

「知ってる知ってる。和菓子の仁連屋本店の中に有るんだよね。仁連さんと私んち

懇意にしてるから、知ってるんだ」

「僕たち、そこに居るんだ。それで、仁連屋さんの猫守神社は、新しく建てられた

(やしろ)らしいんだけど、以前の社、本社が何処にあるのか知りたいんだ」

「それなら、仁連屋のお祖父さんに聞いて見れば?」

「それが、旅行で不在なんだ。それで、奥寺さんのご家族の方なら、知ってるかも

知れないと、素子さんに言われて、連絡したんだよ」

「なるほど。うちのオババなら知ってると思う。でも…」

「でも…?」

「オババは知り合いの年寄りとアメリカ西海岸に旅行中」


 どうなってるんだ。アメリカ西海岸がブームなのか、この辺りでは。

「奥寺さん自身は、猫守神社の本社について聞いたことないかな?」

「そういえば、小さい頃に聞いたことがあるような…」

「それ、思い出せない」

「ちょっと待って、今思いだす。うーんとね。なんか、日本風じゃない名前だった

気がする。アリスとか、エミリーとか、マリアとか。マリア、マリア。そうだ!!

思い出した!! マリアナだ。マリアナ」


 マリアナ? マリアナっていったら、マリアナ海溝とかマリアナ諸島くらいしか

思い出さないけど…。

 まさか、猫守神社の本社って、海外に在って、しかも海の底なの? 

 それじゃ、24時間以内に探し出すなんて、無理ゲーじゃないの。

「マリアナ…。解った。ありがとう、とても参考になった」

「本とに役にたったの?」とアーちゃん。

「うん」しっかりした声で、三笠君が答える。


「じゃあ。美寿穂と代わってくれる」

 アーちゃんに促されて、三笠君がスマホを私に返してよこす。

「美寿穂! 美寿穂! 美寿穂っ! あなた、どうしたの。どうやって、三笠君を

落としたの?」

「いや、別に…そんな…(落としたとかじゃなく)。たまたま、色々あって…」

「その、色々っての、後でたっぷり聞かせて貰うからね。じゃぁ、ガンバ!!!」

 アーちゃんの大きな声と共に通話が切れた。

 私と三笠君は顔を見合わせて笑った。


 アーちゃんとの話が終わり、私と三笠君は素子さんにお礼を言って店を辞した。

 最後に素子さんが「ショーマ、がんばれヨ」と声をかけてきた。 

 アーちゃんも、素子さんも、私達に何をがんばらせたいんだ、

 

 仁連和菓子店を出る。

「あの。これから、どこへ 」

「マリアナさ」

「だから、それは何処?」

 ふふふ。と三笠君が笑う。

 三笠君、意外と意地悪だ。行き先を教えてくれない。

 それとも、私を焦らせて面白がってる?

「ごめん、ごめん。今、教えるよ。とにかく自転車に乗って、走りながら話そう」


 翠を自転車の前かごに乗せ、私は自転車の荷台に横ずわりで腰を下ろす。

 スカートで外出したことを今更ながら後悔する。

 じゃぁ、行く。三笠君がペダルを漕ぎ出し、自転車が動き出す。

「少し飛ばすから、僕に掴まってて」

 三笠君に促されて、右手を彼の腰に回す。なんか、すごく恥ずかしい。


「奥寺さんの言っていたマリアナだけど、多分、猯穴まみあなの事だと思う」

「マミアナ?」

「そう。マミっていうのは、タヌキの事。つまり、猯穴は狸の穴ってことになる」

「狸? ここら辺に、狸なんて、居るの?」

「狸が居るかどうかは分からないけど、猯穴って名前の古墳はある」

「古墳?」

「そう。そして、古墳とかには、神社が建てられてる事が多い」

「そうか! 猯穴古墳にも、神社があって…」

「…それが、猫守神社の本社の可能性が高い」


 すごい! 一挙に展望が開けてきた気がする。

 三笠君、凄くカッコイイ、とっても頼もしく思えてきた。


 私達を乗せた自転車は街中を離れ、住宅街をぬけて郊外の田園地帯に至る。

 見渡すかぎりの水田に青々とした稲穂がなびく。涼しいげな風が吹き抜けると、

稲穂の海原に波の模様が走り抜けて行く。

 何て清々しい瞬間だ。

 しかも、私は三笠君と一緒に居る。


 ガタン。

 段差を乗り越えた拍子に自転車が弾んだ。

 キャッ。と小さな悲鳴が漏れだす。

「もっと、しっかり掴まってて、これから道が悪くなるから」

 うん。

 と答えて、私は三笠君の腰に回した腕に力を込めた。

 それから、私は思い切って自分の体を三笠君の背中に未着させる。

 三笠君がピクリと反応する。

 だって、しっかり掴まってって、言われたんだもん。と自分自身に言い訳する。

 三笠君の背中が熱い。三笠君も私の体温を感じてくれてるだろうか。

 無言のままの二人と一匹を乗せた自転車が、稲穂の海原を駆ける。

 ああ、空を飛ぶって、こんな気分なんじゃないかと思う。

 この瞬間が永遠に続いてほしいと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ