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#34 聖夜の暗闘

白瀬雷人は東京ルルイエでのクリスマス演説を前にして、東京のお台場、埋め立て地の何もない土地にいた。


「ここまで来れば十分か……来るがいい。

クリスマス前に全力を投入して私の身柄を浚い、当日にはさらし者にする……

必ずそうすると思っていたぞ」


白瀬が巨大スタンロッドを抜き放つと、その白雷に照らされる無数の妖魔の影。

その数数千だろうか?空中には転移門となる魔法陣が浮かび上がり、無数の雑兵を送り出している。


「数で押せば倒せる。正論だ。だが、奇襲とは予測されていれば逆に利用されるモノだ」


白瀬がスタンロッドでくるりと円を描くと、それが合図だ。

数キロ先の高層ビルから無数の援護射撃が飛び、白瀬に敵の第一陣が届く前に撃ち殺す。

白瀬の足下に一番槍であっただろう妖魔の首が転がり、白瀬の足に潰された。


「さあかかってくるがいい悪漢共。私は一人ではない。この弾丸の一つ一つが貴様らへの国民の怒りと知れ!」


お台場の空き地は一瞬にして戦場と化した。襲い来る妖魔とそれを打ち倒す弾丸の雨。

さらにはマンホールに潜んでいた狩人たちが姿を現し戦い始めた。


これより始まるは歴史に記されない暗闘。

「クリスマスの演説は予想に反し何事もなく行われた」

ただこの一行を記すためだけの戦いだ。



「らんららん、らんららん。ようやく待ちに待った再侵攻ができるみゃう!

白瀬雷人!お前みたいな右翼とリベラルの悪いところ取りみたいなやつをぼっこぼこにしたかったんだみゃう!」


弾丸の洗礼を抜けて何名かの妖魔達が白瀬の前にたどり着く。

白ロリメイドドレス姿の猫耳幼女。


「いやいや、油断しちゃいけないよ。集団戦を行う機会が少ないとは言え、この人はかなり頭がいい。

まだまだ手札を持ってるはずだ。だから、メインディッシュは後にしないとね……」


氷の刀を持った戦闘服の美丈夫。


「いえいえこれは前菜ですよ。第2次侵攻の時みたいな、第三次再侵攻で日本を滅ぼすための、ね……

こんな国、滅んでしまえば良いんです。私たちが腐った財界の粛正も、社会の改革もやってあげますから。

だから死んでください。速やかに死ね!」


チャイナドレス姿のカンフー女。


「うひひひ、何にしろ思い切り略奪できるのじゃあー。軍団も動かせるし、たのしいのじゃよ!」


巫女服の狐女が符をひらひらと振り回しながら空を飛んで笑う。

いずれも、度重なる戦乱ですっかり野生を取り戻した妖魔達、あるいは戦場に染まった元人間たちだ。

その殺気を白瀬は正面から浴び、しかし揺らぎはしない。


「言いたいことがあるならば、その力を持ってぶつけてくるが良い。

それがお前達の政治のやり方だろう。否定はしない。それも現実だ。

だが、私はそれほどやわではないぞ?」


そして白瀬を守るように多くの狩人や退魔師たちが立ち上がる。


「何より、私にも背負う物がある……勝つのは我々だ」


ごうっ、と鉄槌に炎が燃える。鉄槌のイルマだ。


「なんだって、社会の負け犬同士で戦争せにゃならんのよ。

まあ、お前ら外道に落ちたから仕方ないね。何が略奪だブッ殺すぞ人間不良債権がよ!」


刀が鳴る。よみがえった剣豪、柳生十兵衛三厳。


「やれやれ、生前はとんと平和だったがねえ……よみがえった先の時代で合戦たぁ、仏さんも粋な事をしなさる。

歴史に残らねえ暗闘……良いじゃあねえか」


4mの鉄パイプが妖魔達を両断する。獲物を選ばない剣聖の狩人の業だ。

何であれ、彼が持てばそれは名刀となる。


「くふ、くふふふ……やはり合戦はいい。空気が違う。ああ、楽しみだ。楽しみだなあ!」


黒コートに黒ハット姿の狩人たちが思い思いの凶器を持って現われた。


2丁のリボルバーが火を噴き、八角棒が妖魔の頭を叩き潰す。符と炎が焼き尽くす。


「畜生、こんな戦争状態じゃあアサルトライフルでも持ってくるんだったかな」

「何にしても、終わったら一杯強いのを飲みたい所だ。専門じゃねえんだよこういうの」

「生きて曽良場に戻りたいものだが……うーむ」

「ゴッちん、こっちは何千年生きたかわからないやつと符術勝負だぞ!?正直やってられない」


思い思いの私服に身を包んだ連合の退魔師たち。

彼らもまた、この暗闘にいた。高度な政治的な駆け引きの末のものだ。


「夜はこれからだ」

「お楽しみは……これからだ!」



誰かが言い、それが切っ掛けとなった。

大乱戦の始まりである。


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