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#23 怪盗団VS特攻装警2

センチュリーは夜の永代通りを白バイで駆け抜けていく。


〔おう、兄貴。現場の方はどうなってる?〕

〔無事に、と言うのもおかしいが証拠品の数々は盗まれたようだ。所轄に通報があったよ。

かけつけて半分は証拠保全、半分は逃げた怪盗を追っている……というのは建前で、実際は鬼院を見張っている。

今回の目的は鬼院を上げることだからな。最悪、議員の前で化けの皮を剥がせれば目的達成といっていい〕

〔オーケー、俺は怪盗団の方を追う。兄貴は本丸の鬼院を頼んだぜ〕

〔ああ、手はず通りに行くぞ〕

〔さあ、大仕事だ気合い入れていくぜっ〕


ガォン、とフルチューンされた白バイが夜風を切っていく。

しかし信号止めだ。

歩行者は多い。仮装の者もいる。


「ちっ、今日は月一の百鬼夜行か……人間まで仮装して混じるんじゃあねえや」


この非常事態に……と毒づくセンチュリー。

しかし妙だ、遅い。遅すぎる。信号だってこちらが青になっているというのに。

百鬼夜行の酔っ払い妖怪とはそんなものだが、しかしそれにしても異常だ。


「仕方ねえ、ちと無粋だが……」


センチュリーはパトランプを点灯し、拡声器を使って呼びかける。


『緊急車両通ります。道を空けてください!』


しかし妖怪達は聞こえないふりだ。

それどころかこちらを見て笑っている。


「そんなに急いで、どうせ怪盗団を捕まえにいくんだろ!?」

「政府の犬は帰れ!税金ドロボーがよぉ!」

「俺たちだって納税してるっつーのに守ってなんかくれやしねえじゃねえか!」


どうやら相手は完全には無辜の民というわけではなさそうだ。

どうするか。威嚇?それはよろしくない。まだそんな段階ではない。

ならば……


「強行突破だ!」


白バイがうなりを上げると車体に張られた「交通安全」の符が輝き、白バイを空に飛ばす。

空を飛ぶ歩行者を避けつつだが、なんとか百鬼夜行を突破した。


「くそっ!また罠か!」


しかし、その先もまた罠であった。

空間変成術により本来永代通りであったはずの道は立体的な迷路に変っていた。


〔こちらセンチュリー!怪盗団の仲間と思われる連中の罠にはまった!

永代通りで空間変成術を発動しやがった!くそっ……どうする兄貴!〕


しばらくの沈黙の後アトラスは冷静に判断を下した。


〔永代通りの異変はこちらでも感知した。そこは他の奴らに任せろ。

しかしどうやら、怪盗団そのものはもう東京ルルイエまで逃げおおせてしまった。

お前は身動きがとれんとなれば……よし。

お前はそのまま怪盗団を追う振りをして囮になれ。誰が邪魔してきたか記録しろ。

そこから怪盗団の背後を探れるかもしれん。ディアリオと共同して事に当たれ〕


はあ、とセンチュリーはため息をついた。どうやら今夜は蚊帳の外らしい。


〔舞台にも上がれず途中退場かよ……!わかった。一杯食わされたのは俺だしな。

このまま囮をやる。追って指示を待つ!オーバー!〕

〔ああ、適当に記録したら赤坂に合流しろ。そちらの邪魔もいつまでもいるわけじゃない〕


怪盗団は逃げおおせた。ならば、フェイズ2だ。

本丸である鬼院の逮捕。それはしくじれない。



「おやおや……ご自慢の弟君は遅刻のようですわね」


テロリストの首魁、鬼院楼蘭の変装した姿「シャ・マーフェイ」は細い目をさらに細めて笑った。


「はっ、もうしわけありません。もしよろしければお聞きしたいのですが、容疑者の一人が空間変成で妨害を行っていると……

そちらは鬼門遁甲の本場の方でしたね?そちらの任意となりますが、すみやかな解決のためにご協力を願えますか?」


鬼院はふふっ、と笑い議員に目配せする。すると議員は湯沸かしポットのように赤くなってアトラスを罵った。


「君!失礼じゃないか。先生は無関係にもかかわらずこの場に残ってくださったのだ!

この上頼ろうなどとロボット警察はたるんどるんじゃないかね?!」


現場につめかけた警官のほとんどが裏を知っている。

テロリストをうかうかと家に上げてまだ騙されている議員を見る警官達の目は冷たい。


「は、申し訳ありません。

ところで、もう一つお聞きしたいのですが。

なぜマーフェイさんは毎秒50回も魔術パターン迷彩を行っておられるのですか?

その……なにか魔術パターンを特定されるとまずいことでも?」

「貴様!」


議員が情けなく怒るのを鬼院は手で制して目をわずかに開けて氷のような笑いを見せた。


「私は国を捨てた身、警察の方に言うことではありませんが祖国からのいやがらせもありますのよ。

あくまで防犯・護身のためとお考えくださいな」

「ほぉう、そうですか……秒間50回の魔術パターン変更迷彩がこの国で出来た者はたった5人でしてね。

2人は省きますが……

一人はパトリック・R・ハルマン。もう一人は神子守。そして……鬼院楼蘭。指名手配犯です」


鬼院はふふっと扇子で口元を隠して笑う。ひらりとチャイナドレスが揺れた。


「まあ、まあ……それは恐ろしい。私がその鬼院楼蘭とでも?」

「身の潔白のためにぜひご協力を願えますか?」


鋼鉄の体と妖しの身が火花を散らすように向かい合う。

ここが正念場だ。ここで尻尾を捕まえねばこいつは逃げおおせてしまう。


「さあ、どういたしましょうか……それよりも。あちらに潜まれる方たちを逮捕してくださいな」


そこには誰にも気づかれなかったが、鬼院が指刺すとゆらりと人影が現われた。

黒いハットに黒いコート。「同盟」の制服だ。

人食い妖怪や黒魔術師を「獣」と呼び狩り殺してきた生粋の狩人達。

それが妖怪の総帥たる鬼院に近づく。

すなわち、鬼院をこの場で殺しに来たのだ。


「ああ、ああ。茶番はもううんざりだ。特攻装警。どう見てもそいつは鬼院だろう。

悪いが殺らせてもらうぞ。化けの皮は剥がしてやる。

鬼院を逮捕するならば良し。こちらの邪魔をするならば、斬らせてもらう」


手に持つのはただの木ぎれ。

しかし、だからこそこの男は「剣聖」と呼ばれる。


「『剣聖』久根白露……!『同盟』も一線級を出してきたか」

「どうする?退くならば斬らん」

「……疑わしきは罰せず。今は守るべき市民だ」

「そうか。法の番人らしくて良い事だ。だがいいのか?もう始まっているぞ」


音が遅れて聞こえた。天井がただの木ぎれで斬られて崩落する。


「ぬうっ……!」


アトラスは周囲を守らんと天井から手近な人間を守った。

さすがに鬼院ではなく、警官だが。

アトラスに無線が入る。


〔アトラス。応戦するふりをしながら後退しろ。鬼院の化けの皮を剥がすところまではほっておけ。

そこからは両方捕らえる〕


「上」の人間の指示だ。これでアトラスは憂いなく戦えるだろう。


そして崩落の埃が晴れると、そこには顔に一筋の傷をつけられた鬼院がいた。

マーフェイという偽装が剥がれ、元来の顔である鬼院のものへと変っていく。


「やれやれ……もう少し化かし合いを楽しんでいたかったのですけれど……まあ、いいでしょう。

ええいかにも私こそ鬼院楼蘭。『百鬼』が首魁ですわ。さあ、どうなさいます『同盟』そして警察の皆様」

「ま、マーフェイ様……?」


議員は驚きで呆然とした顔で口を開けていた。


「ああ、相変わらず察しも視野も悪い方ですわね。あなたの知能に合わせて話すのは疲れましたわ。

愚かで、欲に塗れた醜い人間。つけいるには楽でしたけど。

まだわかりません?騙したのよ」


ぱくぱくと口を開けている議院をよそに状況は進んでいく。


「どうもしない。今回は警察のサポートだけだったからな。

これ以上の協力は足手まといだ。どうせ、お前は捕らえきれん。脱走したところを膾にしてやる。

ああ、それともその体自体がラジコンか何かなんだろう?無駄なことはしないとも」


そういうと久根は逃げるでもなく静かに気配を消した。

警察はほとんどが鬼院を向いている。完全武装だ。


「さて、警察の皆様はやる気のようですわね……いいでしょう、少し遊ぶのも悪くないわね。

特にそちらの人形……ええと、特攻装警。一体とは物足りませんけど、その性能を試してあげますわ」

「そうか。だが一つ間違っているぞ鬼院楼蘭。……一体ではない」


ガォン、と窓の外から音がする。


「ヒーローってのは遅れてやってくるもんだ!」


センチュリーの白バイが窓を突き破って入ってきた!

20近くの銃口が鬼院を捕捉している。


「鬼院楼蘭、内乱罪を含め25件の容疑で逮捕する!」

「いいでしょう。それができるなら」


魔力の紫の光がほとばしり、銃のポインティングレーザーと交わった。

この騒乱の夜の第二幕が始まるー

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