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#24 百鬼を束ねる者VS特攻装警

紫の魔力光が溢れる。


「最終通告だ!抵抗を止めろ!さもなくば撃つ!」

「どうぞ。その程度の火器で止まるとはそちらも思っていないでしょう?

さあ、始めましょう。特攻装警。まずは……少し手狭ですわね」


鬼院がちょいと手を動かすと議員の家はめきめきと音をたてながら広がっていく。

緋色の絨毯の応接間がまるで無限に広い合わせ鏡の中のようになる。


「撃て!」


30の銃口が火を噴いた。

しかし、彼らが見たのは空中で静止する30の弾丸だった。


「さて、どうしましょうか……とりあえずお返ししますわね」

「防御魔装展開!」


警察官達の手につけられたスマホから魔法陣が浮かび上がり銃弾を安全に地面に落とす。


「では、私からも……『式・輝く多方面体』」


鬼院はぱんぱん、と手を鳴らすと煙と共に淡く輝くルービックキューブのような物体が現われる。


砲台(ターレット)だ!移動陣地構築!」


指揮官の号令の元にそれぞれが腰からチョークのような魔術武器を取り出し地面に線を書く。

するとオーロラのような魔力光でできた簡易な盾が現われる。


「そろそろいいかしら?」


鬼院は浮かび上がり、ぱちんと指を鳴らすと輝く多方面体から光弾が毎分6000発の連射力で降り注ぐ。

それはさながら魔法式のバルカン砲だ。にわかがかりの魔力壁ではどうしようもない。

稼げて数秒……だがそれで十分な時間だ。


「『羅生門作戦』開始。イージスレーザー・スモークディスチャージャー起動」


警官隊の中の一人がコートを脱ぎ捨て戦闘服を露わにする。

体の周囲に無数の兵器が浮かんでいた。

肩部から迎撃レーザーが、腰部から煙幕が。

レーザーは弾を打ち落とし、煙幕はその威力を減衰させる。

たった一人で警官隊を守る要塞となるその者は何者か?


「ああ、たしか5号……だったかしら?」

「第一段階完了」

「よくやったエリオット!よし、攻めろセンチュリー!」


アトラスが人間たちを守りつつ指示を飛ばす。


「おうよ!」

「いいえ、ではこういうのはいかが?『幻術・心滅獣身』……あら?」


鬼院が洗脳魔術を行うが、人間達は議員を保護しつつ順調に撤退中だ。


【強制浄化プログラムシステム『ルコサイト2』作動中です。そのまま撤退を】


警官達のテレパシーネットワークに涼やかな声が響く。

4号ディアリオだ。


「プログラム……?そういえばそんなのが得意なモノもいたわね。

では空は?木偶ならば木偶らしくもっと楽しませてくれないとね」


鬼院がちょいと指を動かすと天井の高さが数百メートルまで伸びる。

しかしその天井から出てくる者が一人。


「木偶だってかまわない。それで守れるものがあるなら!

あんたみたいな「人でなし」よりは……!」


電磁気制御式推進ユニットを備えた女性型。

天使のようなシルエットのそれは。


「6号機フィール!ええそうよ。戦いとはこのように優雅でなくては」

「何を期待しているのか知らないけれど、あなたのためにやれることはたった一つだけよ。

生かして逮捕する。それが私たちにできること」


高周波ブレードが鉄扇とぶつかり合い、電磁波が魔力波と相殺し、乙女達は空を舞う。


「やるわねえ。空の飛び合いで私にここまで食らいついた者はまれだわ。

もう少し楽しんでいたいのだけれど、残念ね。あなたでは役者不足」

「そんなことは解っていたわ。だから、私たちは一人で戦っていない!」

「へえ、何をするか見せて貰いましょうか……っ!」


鬼院の足に密かに結わえられた単分子ワイヤー。

その先を持つのは警視庁退魔機動隊の面々だ。


「ただの人間だって、足手まといになっているばかりではない!」


30人の祈祷により単分子ワイヤーは呪的呪縛となり鬼院を空から引きずり下ろす。

そして単分子ワイヤーはセンチュリーの持つワイヤーウィップ「アクセルケーブル」とつながり―

センチュリーの有機物ATP基複合反応人工筋肉がうなりを上げた。


「これが俺達の!警察の意地だ!」


引きずり下ろされる鬼院の先にセンチュリーの拳が待ち構える。


【超高圧加圧コイル・リニア複合式「電磁発勁システム・イプシロンロッド」発動】


電磁力の爆発は八極拳の正しい術理により繰り出され―その拳は鬼院に、届いた。


「があっ!」

「逮捕だ、鬼院楼蘭!」


鬼院は地面に這い、そして手錠がかけられる。


「ふ、ふふ……すばらしいわ人間達、そして人の作りしロボット達!

今一時は負けてあげましょう」


どろり、と鬼院の姿が溶け崩れる。


「せいぜいこの体の研究でもすることね」


つまりは、この鬼院の体は遠隔操作の傀儡だったのだ。

だがアトラスは静かに闘志をにじませて宣言する。


「……せいぜい勝ち誇るがいい。

何度でも逃げるがいい、何度でも権力に頼るがいい。

だが、俺達はお前を捕える。たとえ何度でも……!」


これだけの被害があってなお捕えられない。

それは屈辱であり、脅威だ。

しかし、この場の誰もが闘志に燃えていた。


「お前が何をしようが、それで諦める理由にはならない」



結論から言えば、特攻装警は鬼院に勝った。しかし捕えられなかった。

捕えたと思ったモノは「剣聖」の言うとおりラジコンのように遠隔操作で動く使い魔でしかなかった。

しかし、遠隔操作とはいえ鬼院とやり合って全員生還、さらには勝った。

これを持ってアンドロイド警官の有用性は大いに知られることとなった。


つまり「警察も案外やれる」と信用回復の一歩を踏み出したのである。

これが後に退魔警官やロボット刑事による日本の自浄作用の先駆けと言われることとなる。

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