選択肢
謁見の間でザクスは王より報酬を選ぶことを迫られた。
選択肢は
1.貴族になって騎爵を受ける。
2.軍部での指揮官位(隊長や兵長より上)に昇進する。
3.軍役している王女・王族の娘・大公の娘・公爵の娘・侯爵の長女の5名の内、
誰かを特権兵として受け入れる。(どの方も美しい人らしい)
4.30人くらい特権兵として受け入れる。(軍より人選される)
5.王都に住居を準備され、家族を呼び寄せることができる。奴隷召使い付き。
(20年間の生活保障付き、村の住居は国に取り上げられる。)
6.軍務情報局(司令官・参謀を非常に多く輩出している部署)へ転属する。
7.英雄シンヤ・マガミ子爵の側近として仕える。(王都貴族の中で一番の求人倍率が高い仕事)
……ザクスは眩暈がするのを感じた。
どれも、自分にとって利点がない。平穏無事穏やかに生き残って(後略)を満たす選択肢がない。
「言い忘れておった。希望するなら一つと言わず、複数でも全部でもよいぞ」
ザクスは王に追い打ちをかけられた。
「考えますのでしばし時間をいただけますでしょうか」
「よい、ゆっくり考える時間をやろう」
考える時間を与えられても退室は許可されない。
選択肢の説明の時の話術により、ザクスはどれも受け入れにくいものに感じた。
一つ一つ検討してみる。
1.は貴族…貴族になんかなりたくない。しがらみに縛られるのは勘弁してほしい。
2.は軍での役職…隊長をしたが、非常に向いていない。使われるのはいいが人を使う性格ではない。
3.は非常に危険なにおいがする申し出。何が楽しくて貴族令嬢を囲うなんてするのか。貴族になりたくないと思っているのでこれはない。美人らしいが、逆に手が付けられなかったり、周りの難癖が怖い。
4.はもっとひどい。勝手に人を押し付けてくるらしい。生き残るために一人でいるのに、それを許されなくなるのは死ねと言っているようなものだ。理解されていない。
5.は家族を巻き込んでまで、何をさせるというのだろうか。農地の話もなかった。いくらなんでもこの話はひどい。
6.は何だろう司令官や参謀になる人たちが多く所属する部署!?それって、僕にそのルートから司令官へとか考えられているのだろうか。
7.は無理、体質的に無理、何のために決別して、大した話もせずに追い返してきたというのか。
どうしようもない。何を選ぶべきなのだろうか。無難に生きるために何を選択するべきか。何か見落としがないか。王やそのほかの人たちを待たせているが知ったことではない。人生がかかっている。戦場で生き残り、平穏を勝ち取るための選択。1~4はダメだ。7もダメ。5か6。5で家族を巻き込んでいいものか?6で…、そうか、出世しなければいいのか。6で成果が出なければ司令官や参謀にはならない。これしかない。
「では、6の軍務情報局への転属でお願いします」
とザクスは6のみを選んだ。
「ほかのものは選ばないのか?他のも良いと思うぞ」
「いえ、6のみでお願いします」
「…そうか、では決定としよう。この度より、特権兵のザクスは軍務情報局への転属となる。軍部も、政部も決定に従い、心して行動するように。明日は現在の部隊とともに行動し、明後日より、軍務情報局にいき、担当のものから指示を受けよ。では、皆の者も下がってよいぞ」
と話が切られて解散となった。ザクスは謁見の間より退室し、いろいろと面倒になったと思いながら、その日を過ごし、翌日、部隊との挨拶をするつもりで集合し、訓練に参加すると、終わりに兵長より
「我部隊を含むドートロス地方の戦地より帰還した新兵の部隊は皆一度解散され、再編される。特定のものを除き、明日全員軍施設前広場に集合となる。ご苦労だった」
と、説明と共に別れの挨拶があった。そして、部隊解散のによって、自分だけが抜けるわけではないことを知り、目立たなくて済んだと思い、安堵した。
挨拶の後、ザクスは軍宿舎に戻ると、見たことがある顔の者が3名、男一人に女二人がザクスの部屋の前に立っているのを見かけた。隊長をしていた調合部隊に所属していた者達であり、訪問してもよいと言った話から、実際にやってきたようである。




