謁見
ザクスやドートロス地方にいた兵の一部はドミアートレの街を出発し、王都ストライベンへ移動した。
最後に司令や参謀の話を聞いたところによると、ひとまず、ドミアートレの街に配属されていた兵はすべて入れ替えられるらしい。ドミアートレの街は戦線維持の防衛拠点の最前線になり、進軍拠点ではなくなるかららしい。ただ、一度に移動すると兵が居なくなるため、数度に分けて移動、入れ替えを行い、ドミアートレの街を占拠するときにドートロス地方の野営地にいたすべての兵が、別の拠点に移動する。
その第一弾として、ザクスとその一部の部隊の王都ストライベンへ移動があった。
ストライベンに着いてまず、ザクスが驚いたのは、特権持ちの部屋が改装されていたことである。広くなっていた。前の倍くらいの広さに。手配して配置してあったものは同じ大きさのスペースが準備され、配置しなおされてはいた。しかし、大きなベッドやテーブルのあった広いスペースの部屋が、元の広さの部屋を足したぐらいに広げられていた。同じ扉から入ったはずなのに、リフォームされていた…この場所を離れて30日もたたないうちに部屋が変わっていた。
「ウィッケナーさん!なんで僕の部屋があんなに変化しているんですか!?」
大慌てで宿舎長室に駆け込みベンヘル・ウィッケナーに詰問した。
「きれいに改修されていたでしょう。褒めていただいてもいいですよ。ザクスさんが、出陣してすぐに改修指示がきまして、大急ぎで改修してもらいました。しかもザクスさんの帰還がこんなにも早いとは思っていませんでしたよ」
「どこから改修指示が来ていたのですか?ここの指令ですか?」
「秘密ですよ。そのほうが楽しそうだと依頼者が言っておられたので」
「…会って話しているのですね。まぁ、自分で探してみます。見つからないとは思いますが…
で、あの部屋で僕は何かしないといけないのでしょうか?」
「特に今までどおりでいいですよ。個室の拡張が必要なら言っていただければ拡張しますし、誰かを囲い込んでその人の個室や寝室を作っても構いませんので必要に応じてお伝えください。改装の手配をしますので、部屋の縮小は認められませんが、拡張ならいくらでもできることは知っておいてください」
「部屋の拡張は不要です。いりませんから」
ザクスは会話をした後、部屋を抜け、自分の個室の部屋へ入り、王都期間初日は終わった。
次の日、ザクスは王城に呼び出された。
「なんで僕のような一村人が王様に呼び出されるんだよ。なんの嫌がらせ…
あの人たちなんだろうな…」
と小声でつぶやいたザクスは衛兵たちに導かれ、謁見の間の扉の前に案内された。
するとほとんど待たずに扉が開かれ、人が出てきた。
「こちらは半年も前に約束を取り付けてきたのに、特に話もできずに追い出されるなんて。
いくら王が忙しいとしてもこの仕打ちはあんまりだ」
「お早く、お引き取りを…、次の方は謁見の間に入りください」
出てきた人はぶつぶつと呟き、ザクスを睨みつけて、退室していった。
「あの、さっきの人は…大丈夫なんですか?」
「どうぞ、お入りください」
「あの、王様の前で行う礼儀作法を知らないのですが…大丈夫でしょうか?」
自信が無くなったザクスは、扉番の人に問いかけた。
「ひどく失礼なことをしなければ大丈夫です。不要です。お入りください」
「はい」
ザクスは自信のかけらもなく、謁見の前に入っていく。
「よくぞ参った。名を名乗るがよい」
「はっ。王国特権兵のザクスと申します」
「そなたが、特権兵のザクスか。噂は世の耳にも入っておる。大儀であった。なぜここに呼ばれたかは聞いておるか?」
「いえ、特に理由は聞いておりません」
「ザクスよ、このたび、呼び出したのは、そなたの働きに褒賞を与えるためだ。そなたはドートロス地方の戦いにおいて停滞から、敗北に傾きかけていた戦況を覆し、勝利を得るのに多大な貢献をしたとゲンベルツェン侯爵から報告が上がっておる。また、エンバルト皇国との戦においてドートロス地方での勝利は開戦当初からの重要な位置を占める戦略目標だった。これにより戦義勲章と褒賞を与えることになった。褒賞についてはいくつかある。褒賞についてここで教えてやるので、この場で選ぶが良い」
と王に言われ、褒賞の選択を迫られることになった。同じ部屋のザクスの視界には幼い頃に見知った顔が多少の笑みを抱えていくつか並んでいた。出兵前に良いようにあしらったことを少し根に持っているかのようだった。




