第4話 宇宙、そして
まばゆい黄金の光芒を放ち、一族の誇りを懸けて「黄金のスコップ」を天高く掲げるショベル・ザ・スコップ。
その圧倒的な主人公感を前にしてもなお、人造人間の弟たちの態度は不敵だった。
掲げるショベル・ザ・スコップの様子を見た盛助は
「あんなスコップでカッコつけちゃってるw」と冷笑する。
先ほどショベルの渾身の拳を無力化したことで、すっかり勝ち誇り、相手をナメてかかっている盛助。
「おいクソ盛助!!調子に乗るな!!!」
背後から、オ・ネットが強めの口調で言う。その怒号に、盛助はビクリと肩を揺らした。
「お前のオーラは無敵のはずなんだがな、すぐにイキがるクセ、早く直した方がいいぜ」
オ・ネットの指摘は、盛助の能力の致命的な核心を突いていた。
盛助のよわオスのオーラは負けを認めているときのみ有効なのであった。
いま、目の前のショベルを「あんなスコップ」と見下し、負けないと思っている盛助の肉体からは、敵を弱体化させる『よわオスのオーラ』が弱まってしまっていた。
無敵のデバフが消え、無防備になった兄Dr.Jと盛助の前に、オ・ネットがガツガツと荒々しい足取りで進み出る。
「俺が代わりに受け止める。お前ら、下がってろ」
オ・ネットはそう言うと自身のオーラを発動する。
「宇宙空間〈スペース・スペース〉」
瞬間、オ・ネットを中心とした周囲の空間がぐにゃりと歪み始める。
大気が奇妙な色に染まり、廃工場の瓦礫や鉄クズが重力を失ってフワフワと宙に浮き上がっていく。
遠距離攻撃の軌道を狂わせ、触れるものの質量を奪う、オ・ネットの絶対的な宇宙の領域。
だが、その空間が完全に完成するよりも早く、ショベル・ザ・スコップは黄金のスコップを突き立て突進してきた。
覚醒した黄金の輝きを刃の先へと集中させ、凄まじい脚力で地面を爆砕しながら突っ込んでくるショベル。
宇宙の無重力空間に突入したはずのショベルだが、その全身からみなぎる「悪を許さない」という執念の輝きが、空間の歪みを強引に押し破ろうと火花を散らす――!
オ・ネットの放った絶対領域「宇宙空間〈スペース・スペース〉」の歪み。
その無重力の檻の中へと、黄金のスコップを突き立てたショベル・ザ・スコップが真正面から突入する。
グググ、と空間が軋む。オ・ネットは宇宙空間の因果を捻じ曲げる力によって、突進してくるショベル・ザ・スコップの凄まじい破壊力を制限しようとした。
その空間支配は完全に機能し、黄金のスコップの勢いは完全に減速。
ショベルの凶悪な突撃をその場に止めることに成功した。
しかし――。ショベル・ザ・スコップは一瞬怯んだのみであった。
本来なら、生まれて初めて無重力を体験した者は三半規管を完全に破壊され、身動きすら取れずに一方的に屠られるはずの空間。
だが、宙に浮いたショベルの肉体は、まるであらかじめその超常現象を深く知悉しているかのように、即座に大気のない空間に適応してみせたのだ。
「宇宙<スペース>……」
遠い目をして、昔の光景を思い出すかのようにショベルは呟いた。
あまりにも小さく、そして消え入りそうなその言葉は、この戦場の誰の耳にも届かなかった。
無重力の中で恐るべき柔軟さを見せ、即座に次の一歩を踏み出そうとする敵の姿に、オ・ネットの戦慄が走る。
「こいつッ!宇宙〈スペース〉を経験したことがあるのかッ!?」
オ・ネットの驚愕をよそに、ショベルは天地の概念が狂った宇宙空間で、何の問題もなく鮮やかに態勢を立て直す。
宇宙空間の支配者はオ・ネットただ一人、そのはずだった。
自身の絶対的な優位性が根底から覆され、オ・ネットは激しいたじろぎを隠せなかった。
「やりますねぇ」
この宇宙空間を生み出したオ・ネットの力を強者の余裕とともに称賛する。
それが、オ・ネットが聞いた最後の言葉だった。
次の瞬間、オ・ネットの胸は黄金のスコップに貫かれていた。
空間の歪みすらも置き去りにする、光速の正義の一突き。
神聖な黄金の輝きを放つスコップの刃が、オ・ネットの心臓部を無慈悲に、そして深く抉り抜いていた――。




