表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正体バレたら人生終了!? 陰キャのゲームオタクが「バ美肉VTuber」になってダンジョン配信を始めたら世界中のアイドルになった件  作者: はむかつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/15

第8話 リスナーの選択

「ねぇねぇ、みんな、分かれ道に来たけど……壁に何か書いてあるよ?」


 坑道迷宮を探索していたルミナは、前方で左右に分かれている分岐点で足を止めた。左右どちらを見渡しても、奥は暗がりになっており先は見えない。


  □:お、なんだ?謎かけか?

  □:正しい道を選べ、的な?


 後ろにいるドローンが壁の文字をアップで映す。

 そこにはこう書かれてあった。


 ←“風化の回廊” 風の流れ、無機物が守る安全な道

    →"残響の橋 " 音を呼び、影を招く試練の架け橋


「左の道は“風化の回廊”、右の道は“残響の橋”、だって……どっちに行けばいいんだろ」


 ルミナは首をかしげて考え込んだ。

 でも実はこの分岐の先の展開をルミナは知っていた。

 この階層は何度も兄の撮った動画で予習をしている。

 左右どちらの道が正解か、そしてどんな罠が待ち構えているのか、手に取るようにわかっていた。

 しかしそんなことはおくびにも出さない。


「あ、ねぇねぇ、みんなはどっちだと思う? 多数決を取ってみたいな」


  □:ここで多数決!?

  □:やべえ、責任重大だぞこれ


 スタッフの手によりモニターの上部に選択肢のテキストが表示された。

 『ルミナが進むべき道は? A:左(風化の回廊) B:右(残響の橋 )』


 コメント欄が戸惑いで溢れる。

 それでもひとり、またひとりと自分の考えを述べるリスナーが増え始めた。


  □:“影を招く”とか罠っぽすぎね?

  □:試練って書いてる方はたいていヤバいよな

  □:“風の流れ”って、風が通るから敵が来ないってことでは?

  □:《あかりん》こっちでは満場一致で“風化”一択よ


「スタッフさ~ん、集計できます? うん、うん……わかりました」


 ルミナは改めてドローンカメラに向き直った。


「”風化の回廊”が75%、”残響の橋”が25%くらいだって。それじゃ左の道に行くねー!」


 ルミナは左の道へ元気よく進み始めた。

 リスナーはハラハラしながらその様子を見守っている。


 実は左の道はハズレだった。

 右の道は大きな縦穴にかかる吊り橋があり、音を奏でる風に気を付けて渡れば特に問題はない。

 しかし左の道は……。


「あ、なんか見えてきた……」


 少し広めの部屋らしき場所に着いたルミナは、辺りをきょろきょろと見渡す。

 部屋の中には等間隔で並ぶロマネスク様式の柱が左右に数本建っており、天井には半円のアーチが施されている。


  □:なんか遺跡っぽいとこに出たな

  □:急に怪しくね?ルミナちゃん注意して!


 ルミナが部屋の中央辺りまで進むと、部屋のいたるところからカタカタと音がし始めた。

 この部屋の番人、止めどない数のスケルトンの群れだ。


  □:ぎゃああ!骸骨だああ!

  □:この数はヤバいって!ルミナちゃん逃げてええ!

  □:あれ?でもルミナちゃん、なんか落ち着いてね?


 ルミナは少し姿勢を低くすると、腰に差していた剣を抜いた。

 やり過ごしてこの先へ進んでもいいのだが、今回は全て一掃するのが目的だ。

 リスナーにこっちの道がハズレだったと責任を感じてほしくないルミナの心遣いだった。


「大丈夫! まかせて!」


 左足のかかとに圧力をかけ、一気にそれを開放する。

 瞬時に一番近いスケルトンとの間合いを詰め、その骨の身体を一刀両断にした。


――バキバキッ


 手に硬いものを切断した感触が残る。

 その勢いのまま近くのスケルトンから順に粉砕していき、部屋の中は瞬く間に白い噴煙に包まれた。

 ドローンが白く濁った映像しか映せない中、その部屋を縦横無尽に影が飛び交い、骨の散らばる音だけがこだまする。


  □:な、なんかすげえ!

  □:何にも見えないけど大丈夫かな……

  □:《あかりん》ルミナちゃん!無理しないでぇ!

  □:あかりんの実況部屋、集中しすぎてなにも喋ってないの草


 不意に部屋に静寂が訪れた。

 もくもくと部屋中を覆った噴煙が少しずつ落ち着き、ゆっくりと部屋の光景を映し出す。

 辺りにはスケルトンの残骸が山のように散らばっており、部屋の中央には剣を腰に収めるルミナが立っていた。


「えへへ~! ブイッ!」


 ドローンに向かって屈託のない笑顔でVサインを出すルミナに、リスナーは大興奮でコメント欄を埋め尽くした。


  □:よかったあああ!!!

  □:ルミナちゃん無事だったあああああ!!

  □:《あかりん》ああ!神様!ありがとうございますぅぅぅ!

  □:みんな実況部屋来いよ、あかりん面白いぞwww


「あの量を一瞬で切り刻むなんて……隣でユリちゃんの口が開きっぱなしだったわよ。さすがは"ユーマイト"ね」


 イヤホンからかおる子の声が聞こえてくる。

 会社にいる二人も見守ってくれていたようだ。


「ふぅ、なんとかなっちゃいましたね、みんながこっちの道を選んでくれたから、だね! みんなありがとっ☆」


  □:ああああ、やっぱりルミナ推ししかできないっ!

  □:その笑顔は反則だぁぁ!

  □:おい、実況部屋であかりんがぶっ倒れたぞww


 その後、盛り上がるコメント欄を見ながら順調に坑道を進んでいった。

 途中でコウモリやミイラのようなモンスターに遭遇したが、問題なく突破。

 30分ほどが過ぎた頃、坑道迷宮の最後の部屋、ラスボス部屋に辿り着いた。


「ここが、最後の部屋、みたいです……」


 縦横30mほどある広い空間に、岩がゴロゴロ転がっている。

 目を凝らすと、部屋の奥には二つの扉があるように見えた。


「ラスボスはどこかな~?」


  □:余裕があって草

  □:このままゴールしちゃえルミナちゃん!


 ルミナが部屋に入ると、ゴンッゴンッゴンッと地面から湧き上がるような衝突音がした。

 部屋のいたるところに散らばっている大小さまざまな岩が部屋の中央に引き寄せられていく。


「あ~、これはもしかして……」


 中央に寄った岩が重なり合い、次第に人型に形成されていく。

 大きさは5mほどだろうか、どちらが前か後かわからないが、胴体に頭と腕、足の代わりの岩がくっつき、人間のように動き出した。


「これは、ゴーレムってやつだね」


  □:あれ?ルミナちゃん以外と余裕?

  □:あまりびっくりしてないね


「ふっふー、ゴーレムの倒し方は、実は知ってるんだ☆」


 ルミナはゴーレムの顔部分を見上げながら言った。


「ゴーレムはね、身体のどこかにヘブライ語の『emeth(真実)』って文字が刻まれているの。その文字のeを消して『meth(死)』にしちゃえば崩壊するんだよ」


  □:出た!ルミナちゃんの得意分野!!

  □:《あかりん》私にできることない!?

  □:あかりん復活したww 黙ってみとけw


「みんなありがと! ちょっと戦ってみるね」


 ルミナはゴーレムの懐に素早く入り込むと、攻撃をかわしながら『emeth』の文字を探す。


 ――ドゴッ


 ゴーレムにより振り下ろされた腕は地面を削り、石つぶてがルミナに飛び散る。

 上下左右を見ながら攻撃をかわしていると、後ろに回り込んだルミナが声を上げた。


「あった!!」


 『emeth』の文字はゴーレムの背中に刻まれていた。

 そのまま試しに剣を振るってみる。


――ガキィッ!


 やっぱり傷をつけることはできない。

 動作がノロく攻撃さえ気を付ければやられることはないが、このまま攻撃が出来なければ何も進展しない。


「やっぱダメかぁ……それじゃ秘密兵器を出そうかな!」


 ルミナは腰に備え付けていた短剣を取り出した。

 グリップを握り、刀身を鞘から抜いてみる。

 と、唐突に刀身がポロッと外れて床に落ちた。


 ──ガラン、ガラン……


「はぇ……?」


 手元にはラバー製のグリップだけが残っている。


  □:あれ?ルミナちゃんもう一本剣を持ってたの?

  □:もしかして二刀流!?

  □:すげー、なんかカッコいい!


 ルミナの手にはラバー製のグリップしか握られてないが、リスナーにはそれが剣に見えるようだ。


「聞こえる? そのグリップにマーカーが付いてるのがわかるでしょ? 剣に見えるよう武器偽装してあるから」


 かおる子から業務連絡が入る。

 そんなの全然聞いてない……そもそも武器偽装とはなんなのか。

 百歩譲っても悪い予感しかしなかった。


「その秘密兵器なら硬い相手でもイケるわね。手元のスイッチを押せばちゃんと剣になるから安心して。さぁ倒してらっしゃい」

「よーし、それじゃ、いっくぞぉー!」


 ゴーレムに突進しながらグリップのスイッチを押す。

 するとグリップの先から1mほどのレーザービームのようなものが現れた。

 これはもしや、SF映画で有名になったライトセーバーというやつじゃないだろうか。

 ルミナはロマンあふれるその刀身に気を取られすぎて、目の前に迫ったゴーレムの振り下ろしに気付いていなかった。


「あ、やばっ!」


 ――ズドォォン!


 振り下ろされたゴーレムの腕が、地面をえぐる音が響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ