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正体バレたら人生終了!? 陰キャのゲームオタクが「バ美肉VTuber」になってダンジョン配信を始めたら世界中のアイドルになった件  作者: はむかつ


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4/15

第4話 そして伝説は始まった──

  □:なぁちょっといいか? こんな動画を見つけたんだが。http://~~

  □:ちょww なにこれww 流出動画???

  □:うわ、担当者やっちまったなwww


 テスト動画を撮影した次の日。

 某ちゃんねる掲示板のVtuberスレは一つの話題で持ちきりだった。

 魔法少女のような可憐なVtuberが、ダンジョンの第1階層をものすごいスピードで攻略する動画の話題だ。

 

   □:ちょっと待ってw この子の攻略スピード、とんでもなくないか?

   □:うは、ホントだw よく見たら編集点が全くない。これ30分弱で第1階層クリアしてるぞwww

   □:嘘だろ? これまでの最速記録って確か、Sクラスパーティの『グラン・リベリオン』による3時間42分じゃなかったか?

   □:おい、考察班! 検証するんだ! 早く!


 これまでの常識を覆すほどの攻略内容に、掲示板では他のスレッドを巻き込む盛り上がりを見せていた。

 次第に世間に広まるにつれ、ダンジョン攻略以外の部分でも話題を集め始める。

 

   □:なんかこの子、いいなぁ……ずっと見ていられる。

   □:だよな、だよな! 声も可愛いし頭も良さそうだし、これは推せる!

   □:時折出るおっさんみがたまらんwww

   □:わかるw 急なダルみがなんか癒されるよなw

 

 このネット界隈の騒動に俺が気付いたのは、それから更に1日が経過した後だった。

 

 ──ガチャッ


「ちょ、ちょっと社長!」

「こら、部屋に入るときはちゃんとノックして。私があられもない姿だったらどうすんのよ」

「それはそれで……じゃなくて、これを見てくださいよ!」

 

 社長室に入った俺はノートPCをかおる子の前に置いた。

 もちろん画面は某ちゃんねるのVtuberスレッドだ。

 面倒くさそうに画面を見ていたかおる子は、次第に目を見開いていった。

 

「あ、あはは、動画、公開設定にしちゃってたのね、失敗、失敗」

「いや失敗、失敗じゃないですよ! ものすごい話題になっちゃってますよ!」

「まぁちょっと落ち着きなさいよ」

 

 そう言ってかおる子は俺をソファに座らせた。

 

「こうなったなら、これを利用しない手はないわね。今すぐデビューの準備をするわよ」

「え、今すぐ、ですか?」

「本当はちゃんと準備してから来月辺りに出したかったんだけどね。これだけ注目を集めてるなら、これはこれでOKよ」

 

 かおる子は笑顔で俺に向き直った。

 

「悠真くんもちゃんと家でルミナに成りきる練習をしてたんでしょ?」

「そ、それはそうですけど……」

 

 確かに独り暮らしのアパートでキャラになり切って練習をしている。

 変声デバイスを付けずに練習しているため、先日なんて「気持ち悪い声が聞こえる」と隣人からクレームが入ったほどだ。

 

「あら、テスト動画の再生数が10万を超えてるじゃない。もう収益化申請もしちゃいましょう」

 

 かおる子はルンルンで準備を進めていく。

 俺は不安になりながらも、かおる子の指示通りに動くしかなかった。

 ほ、本当にこの会社、大丈夫なのか?

 

 そして俺の心配も裏腹に、ついにその日がやってきた。


 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 

「プレミア公開の時間まで、あと10分ね」

 

 社長室の豪華な椅子に座ったかおる子が静かに言った。

 あと10分で事前録画したあいさつ動画がこの世に公開される。

 俺は緊張した面持ちでかおる子の後ろからモニターを凝視した。

 

「でも凄いじゃない、公開前からコメント欄の伸びが尋常じゃないわ。もう目で追えない速さだもの」

「そ、そんなものですか……」

「あは、随分と緊張してるじゃない。大丈夫、もっと自信持ちなさいって!」

 

 かおる子が俺の尻を勢い良く叩いた。

 確かにモニターに映るコメント欄はすでに数百件以上のコメントで溢れかえっている。

 その注目度合いが、俺の緊張をさらに搔き立てた。

 

「あ、ねえねえ、これ見て! これ!」

 

 かおる子がはしゃいでモニターのあるサムネイルを指さす。

 そこにはこんな文字が刻まれていた。

 

 『あかりんと見る新人Vtuber観測★生配信部屋』

 

「この子、大手『ほろきゅーぶ』の人気Vtuberよ。聞いたことない? 緋乃原あかりちゃん」

「……チャンネル登録してます」

「ぷ、さすがね……でもあかりんに目を付けられるなんて……これは期待できるわね」

 

 そう言ってかおる子はサムネイルをクリックした。

 すでに生配信が始まっており、緋乃原あかりの声がスピーカーから流れてきた。

 

『それはちょっと言いすぎじゃない? でも新人Vtuberは最初に叩かれるのもお約束だしねー』

 

  □:あかりん、ちょっと顔怖いww

  □:こうやって新人いびりがはびこってるんだなぁ、いい意味で。

 

『いい意味でって何よw それに新人いびりなんて私、してないんだからねっ! 頑張ってほしいとは思ってるのよ私も!』

 

  □:どんな子なんだろ、楽しみー

  □:僕はあかりん一筋だからね!!

 

『ふふ、ありがと♪ さぁ後1分ね、みんな、盛り上がっていきましょう!』

 

 かおる子はチャンネルを元に戻した。

 そして振り返って俺の顔を見る。

 

「何その変な顔、大丈夫よ! 自信持ちなさいって!」

「は、はぁ」



  *。゜:*+.:.。.☆.──プレミア公開開始──.☆.。.:.+*:。゜*


 

 時計が21時を回った瞬間、画面が暗転した。

 そして後方からの逆光を受け、黒いシルエットが可憐に剣を振り回す。

 

「え、これって……」

「我が社の編集チームが作ったオープニングムービーよ。気合い入れたんだから」

 

 俺は呆気に取られていた。

 そういえば事前にスタジオで飛び跳ねたり剣技の型を取らされたりしたが、このためだったのか。

 画面の中では少しずつ光量が増え、白とピンクのドレスがおぼろげに見えてくる。

 そして最後に彼女は画面外へ大きく跳躍した。

 

「さぁ、始まるわよ」

 

 可愛らしいCGで作られた部屋に、上から少女が降ってきて尻もちをついた。

 

 ──ドテッ


「いたたっ……わ、わぁ!」

 

 慌てて立ち上がる少女の姿。

 丸い目にふわふわしたミルキーブロンドの髪、ちょっと緊張したように揺れる赤いリボン。


「こ、こんにちはっ! みんなの心にきらめく月光! 新人ダンジョンVtuberの──ルミナですっ!」

 

  □:きたああああ!

  □:やっぱ可愛いいいいい!

  □:出たな、伝説のスタッフミスV

 

 コメント欄の勢いが更に増した。

 

「えっと……この動画が、初投稿……になる予定だったんですけど──」

 

 一瞬、ルミナの動きが止まり、小さく「ぷるぷる」と震え始める。

 

 「なんで……! テスト配信の録画、上がってるのぉぉぉ!?!? スタッフさーん!!」

 

  □:あの神動画ねw

  □:スタッフ有能すぎる(もっとやれ)

  □:ベビーフェイスなのにブチギレ方リアルで草

 

「えっと! これがホントの、正式な初動画ですっ! でも、あれを見て、私を応援してくれる人が増えたみたいで……本当に嬉しいですっ」

 

 ルミナはペコっとお辞儀してから、少し首をかしげるように笑みを浮かべた。

 

「今コメント盛り上がってくれてるかな~? ちょっと心配……」


  □:大丈夫だよ~

  □:速くて見えないくらい爆速で流れてるぞw


「あ、せっかくだから、ちょっと自己紹介がてら、昔の話してもいいですか? 変な話なんですけど……」

 

 照れたように手を頬に添える。

 

「小学生の頃、とあるマンガの影響で……夏の夜とかに外に出て、虫の声を録音してたんです」

 

  □:え、純粋すぎる!

  □:あー、あの宇宙に行くマンガか

  □:うっそ、理科系女子なの???

 

「それでね、その音データを仲のいい友達に配ってたら……ある日録ったデータの中に、農家のおじちゃんとおばちゃんの、その……あの声が……入ってて……」

 

 ルミナは顔を両手で隠して首をふるふると横に振った。

 

  □:うっは! まさかの叡智な話で草

  □:これは反則すぐるwww

  □:そのデータを今すぐアップするんだ!!

 

「でもね……あの頃から、“自分が見たり聞いたりしたものを誰かに届ける”っていうのが好きだったのかもしれません」

 

 彼女の目が、過去の恥ずかしさを乗り越えたように、少しだけ強く輝いているように見えた。


「今度はダンジョンの中から、私の目で見た“世界”をみんなに届けたいなって思ってますっ!」


  □:急にエモいww

  □:その流れでダンジョン配信は熱い!

  □:推せる!(2回目)


 少し緊張をほぐすように深呼吸して、ルミナはニコッと微笑んだ。


「というわけで、ダンジョン配信……始めていきます! 初めての生配信は――今週土曜日の夜9時! そのときは、また観に来てくださいねっ!」


  □:土曜の約束キャンセルしなきゃ!

  □:これは楽しみすぎるww


「短い時間だったけど、今日はここまで。それじゃみんな、まったね〜!」


 両手を前に出して振るルミナは、突然ハッとした表情になった。

 

「あっ! 忘れてた! 私の名前は、天乃瀬ルミナ、あ・ま・の・せ、ルミナだよっ! それじゃバイバ~イ✩」



 *。゜:*+.:.。.☆.──動画終了──.☆.。.:.+*:。゜*



 映像は笑顔のルミナから次回配信の告知画面に切り替わったが、コメントの勢いは衰えることはなかった。


「ふうぅぅぅぅ……」


 俺は深く息を吐きだした。

 動画が再生されていたほんの数分のあいだ、無意識に息を止めていたようだ。

 

「ねえ、見てこれ……チャンネル登録者の数、凄いことになってるわよ」


 かおる子の視線の先を見ると、とんでもない数字が目に入った。

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