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正体バレたら人生終了!? 陰キャのゲームオタクが「バ美肉VTuber」になってダンジョン配信を始めたら世界中のアイドルになった件  作者: はむかつ


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第24話 ルミナの中の人

 _/_/_/ SIDE:白鷺しらさぎユリ ―新人Vtuber〈STELLA所属〉― _/_/_/



 放課後、夕陽の差し込む学校の廊下で、ユリと芽衣はモップをかけていた。

 そこに、同じクラスの女子たちが笑い声をあげながら近づいてくる。

 カースト上位グループにいる二人……ユリも芽衣もほとんど話をしたことがないクラスメートたちだ。


「あ、何ちゃん……だっけ? そうそう、ユリちゃんだ、理科準備室の棚、先生から整理しろって言われてたんだけどさ~、私たち今日は塾で忙しいんだよね」

「悪いけど、代わりにやっといてくれない?」


 芽衣はぎょっとした。


「え、それ……先生から頼まれたんじゃないの?」

「そうだよ? でも私たちも忙しいし~。ユリちゃん、真面目だから上手にできそうだし?」

「終わったら先生に“私たちがやりました”って報告しとくからさ、安心して頼まれてよ」


 そう言って二人はケラケラと悪びれることもなく笑った。

 ユリは一瞬迷ったが、すぐに口元をほころばせて頷いた。


「……うん、わかった。私、やっとくね」

「助かる~、ほんとユリちゃん優しい!」

「それじゃ、よろしくね。手は抜かないでよ?」


 そう言い残して二人はその場を去っていった。

 その背中を睨みつけ、芽衣は手に持ったモップの先端を床に勢いよくぶつけた。


「なにあれ! ふざけてない!?」

「芽衣、いいの、私はなんとも思ってないから」

「そんなわけないじゃん! 先生に言ってくる!」


 怒りで震える声を押さえきれず、芽衣はドアへ歩み出す。

 だがその手を、ユリが慌てて掴んだ。


「待って……お願い、芽衣。やめて」

「なんで!? これっていじめじゃん! 絶対おかしいよ!」


 ユリは小さく首を振り、微笑んだ。


「大丈夫。これくらいならできるし……それに、こういうのも勉強になると思うんだ」

「……勉強?」

「うん。Vtuberって、いろんな人から理不尽なことを言われたりするでしょ? それをどう受け止めるか、どうやって笑顔を見せられるか。そういう練習だって思うようにしてるんだ」


 その健気すぎる笑顔に、芽衣の胸の奥で燃え上がっていた怒りが、涙へと変わっていく。


「……ユリは、本当にバカだよ」


 芽衣は目を潤ませながら小さく言った。

 ユリは首をかしげて笑った。


「それに、いつかもっと有名になったら、今日のことを面白おかしくリスナーに話すんだ。そのネタ集めだと思えば、辛いことなんてなんにもないんだよ。それに……」


 ユリは芽衣の両手を掴んだ。


「芽衣が応援してくれてるから、いつも一緒にいてくれるから、私は大丈夫だよ」


 そう言ってユリはえへへと歯を見せた笑った。

 その笑顔を見た芽衣もぷっと噴き出す。


「しょうがないな、私も手伝うよ。一緒にやって早く終わらせよ」


 ユリと芽衣は一緒に理科準備室へ向かった。

 二人きりで並んで歩く廊下。

 芽衣の心の奥には、まだ怒りの炎は燻っていた。

 だが同時に──理不尽を受けてもなお笑顔を見せ続けるユリの健気さが、彼女をさらに強く惹きつけていた。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 _/_/_/ SIDE:氷室ナナセ ―人気Vtuber〈ほろきゅーぶ所属〉― _/_/_/



 ゴゥゴゥと低音を鳴り響かせて空を飛ぶ輸送機の中、青く目立つ衣装を着たナナセの姿があった。

 隣には黄色い衣装の風見ミミと、赤い衣装の緋乃原あかりの姿もある。


「行くよ」


 ナナセの号令で3人は輸送機から飛び降り、遥か下の島へ滑空していった。

 人気バトルロワイヤルゲーム『ALEX LEGEND』の開幕シーン。

 3人チームが33組、総勢99人が残り1チームになるまで殺しあう戦争ゲームだ。


 ――ザシュッ ズババッ


 高台のスポットに降りたナナセは、迷わず降下直後の他プレイヤーを手持ちのナイフで2人仕留める。


「ちょ、降りてすぐキル!? ナナセ強っ!」

「ウォーミングアップってやつ」

「あーあ、ナナセのそばに降り立ったのが運の尽きやったな」


  □:まだ銃も手に入れてないのにwww

  □:相変わらずの戦闘スキルだ

  □:これで銃器を手に入れたら更に豹変するからな。

  □:なんて恐ろしい子!


 あかりとミミも各ポイントに降り立った後、すぐに建物へ入り物資を探す。

 辺りに銃声が轟く中、3人のチームは順調に敵チームを蹴散らしていった。

 半分ほどのチームが脱落した後だろうか、余裕のプレイをしていたあかりが口を開いた。


「そういえばさぁ、ルミナちゃんのこの前のダンジョン配信、めちゃくちゃ興奮したなぁ」

「あー、ウチも見た! あの音の無い村のやつっしょ?」

「ナナセも見た。音を出して敵を翻弄するとこ……すごかった」

「だよね、だよね! あの判断力、ほんとすごい。私なら絶対あそこでパニクってる!」

「あかりんはホラー系のゲームも弱いもんなぁw」


 3人は会話をしながら残りチームを探索する。


「ナナセもゲームとくいだから、ルミナにダンジョン配信のコラボ申し込んである」

「え!?」


 驚いたあかりは、操作がおろそかになったのか、目の前に現れた敵チームの一人にあっさりとやられてしまった。


「ちょっとナナセ、それ初耳なんですけど……」

「うん、今はじめて言ったし」


  □:いきなりの重大告知で草

  □:実現したら神回確定だな!

  □:最強タッグ待ってます!


 ナナセは少し口角を上げて、手に入れた銃で次々に敵を狙撃していく。 


「でもさぁ……ルミナちゃんって、すごい理路整然としてるよね。考え方が、なんかちょっと男っぽいっていうか」


 ミミの声が割って入った。


「うんうん。戦闘もできるし、トークも男性が好きそうなネタが多いし……すごい万能タイプ」

「まぁそれか、バックに相当優秀なスタッフがついてるのかも」

「あー、マネージャーも優秀っぽいしね」


 あかりとミミで会話が弾む。

 ミミの目の前に敵チームが現れたタイミングで、ナナセが再び爆弾発言を投下した。


「実は、ルミナの中の人……心当たりがある」

「はぁぁぁ!?」


 驚いたミミは思わず立ち上がり、敵チームのひとりにあえなく狙撃されてしまった。

 残ったチームメンバーはナナセひとりだけだ。


「……え!? ちょ、なにそれ!」

「ほんとに!?」


 あかりとミミが同時に食いついた。

 コメント欄はさらに荒れに荒れる。


  □:えええええ!?

  □:誰なの!?

  □:やっぱりプロの声優か?

  □:教えてくれ、早く!


 ナナセはわざとらしく肩をすくめた。


「もちろん言わないよ。絶対に。配信者としてのルールを破る気はないから。ただちょっとでもお近づきになりたくて、いろいろ調べたの」

「えー、教えてよぉ」


 首をふるふると横に振るナナセ。


「じゃあさ、ナナセ。配信終わったらご飯行こっか。続きはオフで聞かせてよ!」

「だーめ。墓場まで持っていくひみつ」


 あかりとミミが冗談混じりに食い下がるが、ナナセは笑顔のままかわす。


「でも、ごはんは行く」

「あ、ミミも行く!」


  □:やっぱりこの3人はてぇてぇな!

  □:もう女子会のノリじゃんw

  □:仲良すぎ!


 そんな和気あいあいとした会話の裏で、ナナセは冷静に最後の敵を狙撃していた。


「……はい、ヘッドショット」


 画面中央に大きく『WINNER』と表示される。


「ちょ、え!? いつの間に!?」


 あかりが素っ頓狂な声をあげ、ミミも驚愕する。


「残りの敵……全部倒したの!? ナナセ、怪物か!」


 コメント欄は一気に賞賛の嵐。

 ナナセは少しだけ照れくさそうに笑った。


「んー、ま、今回は簡単だったほう……かな」


 同接1万人ほどの今回の生配信だったが、後日、ナナセの発言は切り抜き動画でバズることになる。

 これがルミナの存在が世間一般に広く知れ渡るきっかけになるのだった。

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