第17話 ユリ大活躍、からの……!?
*。゜:*+.:.。.☆.──配信開始──.☆.。.:.+*:。゜*
時計の針が16時を回ると、配信画面が切り替わり、ニュース番組のような長机のあるセットの風景が映し出された。
そして左右から3人のVtuberが画面に手を振りながら登場する。
「さぁお前ら、待ち望んだマシュマロ座談会Xの時間がやってきたぞぉぉ!!」
司会進行役の風見ミミが元気に挨拶をすると、コメント欄の速度が急激に増した。
同接数は18万人を超えている。
□:うおおおおお!!
□:キタキタキタキターーーー!
□:ミミちゃん今日も頼んだぞww
「というわけで、始まりました『マシュマロ座談会X』なんですけど、あかりん、ナナセ、調子はどうですか?」
「もちろん! 気合入ってますよぉ!」
「わたしも、気合じゅうぶん」
「いいですねぇ、さて、今回は私たち3人の他に、珍しいことにほろメン以外のVtuberが二人もゲスト出演するんすよ!」
□:知ってるww
□:出し惜しみしないで早く出せww
□:ルミナたんマダー?
「あはは、いいねいいね、みんな知ってるみたいだから、早速登場してもらいましょう! まずは、個人勢から華麗な転身! 新人ダンジョンVtuberの『白鷺ユリ』ちゃんだぁぁぁぁ!」
ミミの隣のスペースに、五芒星のエフェクトとともに大きなお札が現れる。
そのお札が斜めに切り裂かれ、後ろからユリの姿が現れた。
「みなさんこんにちわ~っ! ねこ神様の信奉者、ダンジョンVtuberの白鷺ユリですっ!」
笑顔を振りまくユリの頭で猫耳がぴょこぴょこ動いている。
□:何この娘、可愛いぃぃぃ!
□:ってか、登場エフェクト凝りすぎだろww
□:やべえ新人が出てきたな
「そしてもうひとり、今や知らぬ者はいないでしょう! とんでもないダンジョンRTAで世間の度肝を抜いたこの人! 『天乃瀬ルミナ』ちゃんだぁぁぁ!!!!!」
ユリの隣のスペースに花吹雪が舞い、ふわりとルミナが降り立つ。
□:キタキタキタキターーー!!!
□:ルミナちゃん待ってたぁぁぁ!
□:あああ、やっぱり可愛い!
コメント欄の賑わいが急加速する。
「あはは、凄い人気ですねぇ、ルミナちゃん。今日は参加してくれてありがとね!」
「いえいえ、こちらこそ、こんな大きなイベントに呼んで頂いて、少し緊張しています……」
ミミの隣であかりがハァハァしながらルミナを凝視しているのがわかる。
□:ちょww あかりん煩悩出しすぎww
□:気持ちはわかるが暴走するなよw
□:ナナセ、あかりん捕まえとけw
「さぁさぁ、何やら波乱の予感がしますが、早速本題に入っていきましょー! みなさん、席のほうへどうぞ!」
全員が背景にあった椅子に座る。
ユリは小さく深呼吸を繰り返し、手を膝の上でぎゅっと握りしめている。
あかりは絶えずルミナのほうをじっと見つめ、笑顔が抑えきれていない。
ナナセはそんなあかりの服の裾を掴んだまま、視線だけでミミに「進めろ」と促す。
そして当のルミナは、軽く首をかしげながらも、にこやかにカメラへ手を振った。
「準備はいいですか~? じゃあ、最初の質問はこちら!」
──ジャジャンッ!
「『ルミナちゃんへ。急に人気者になった心境は?』 これはルミナちゃん単独の質問だねぇ~、どうかな? ルミナちゃん!」
ミミの問いかけに、 ルミナは少しだけ困ったように笑った。
「えー、そんな人気者になった実感なんてないですよぉ……でも、見てくれる人が笑顔になってくれてたら、もっと頑張りたいって思います!」
「またまたご謙遜を……でもダンジョンって危なくないの? 怪我したりとかしない?」
「ちょっと危険なこともあるけど……でも、誰も見たことのない景色って見たくなりません? わたし、まだ誰も行ったことがないダンジョンの最深部を見てみたいんですよね」
□:なんというプロ根性w
□:これは応援するしかないだろ!
□:次の配信も期待してるよおおお!
「だから、なるべく多くの人と一緒に、新しい世界を見に行けるように、これからも頑張ります!」
「いやー、これはまたルミナちゃんのファンが増えそうですねぇ、くふふ。それじゃ二つ目の質問に行こうかー!」
ミミが手元にあるモニターを操作する。
「『ルミナちゃんへ。ここにいるほろメン3人の中で、ダンジョンに連れて行くとしたら誰がいいですか?』 おーっと、これは燃える質問きましたねっ! で、ルミナちゃん、どう?」
「え、えーと……」
ルミナは困った顔で全員の顔を見た。
あかりが凄い勢いで右手を天高く上げている。
「はい! はい! わたし! わたしが一緒に行きたいっ!」
□:あかりんwwww
□:お前への質問じゃねえだろww
□:自重しろwww
「あはは、あかりさんだったら、ダンジョンを楽しく攻略できそう☆」
ルミナがそう言うと、あかりの隣に座っていたナナセが控えめに右手を挙げた。
「ナナセも、いきたい」
「おーっと! あかりに加えてナナセも立候補だっ! さぁさぁ、ルミナちゃんはどっちと行くのかぁ?」
□:うおお! FPSの女王が来たぞ!!
□:ナナセならダンジョンでも即戦力になりえるなw
ナナセが寡黙な性格ながらVtuberとして成功しているのは、ひとえにゲームの腕前によるものだった。
アクション性の高いオンラインゲームで、多くの大会で優勝している実力派ゲーマーだ。
「えーと、それじゃあみんなで行きましょう! ダンジョンの楽しさをみんなに体感してほしいですっ!」
「これはなんという優等生発言っ! でもそこがルミナちゃんらしい!」
「でもでもっ、最初に連れていくのは、後輩のユリちゃんって決めてますから……!」
ルミナがそう言ってユリのほうに笑顔を向けると、ユリはハッとして恥ずかしそうに俯いた。
□:これは理想の先輩像だw
□:ルミ×ユリくる???
□:箱推しするしかねえ!
「る、ルミナ先輩の足を引っ張らないように……頑張りますっ!」
「うわー、なんか甘酸っぱくていいですねぇ!」
「あ、でも、まだダンジョンに入るお金が貯まってないから、次に行くのはもうちょっと後かな?」
「え!? ダンジョンに入るのってお金かかるの?」
あかりが驚いてルミナのほうを見た。
「保証金? っていうのを払う必要があって、階層が深くなるごとに高くなるって聞いてます」
「具体的にはいくらくらいなの?」
前のめりになって尋ねるあかり。
「えーと、第3階層はひとり250万円だから、4人で行くなら1,000万円とかですね」
「たっかっ!!」
「出します! 全部!」
あまりの高額にミミがのけぞるが、その横であかりが手を挙げた。
コメント欄が『草』で覆いつくされる。
「あはは、さすがにそういうわけにはいかないですよ~、でも近いうちにチャレンジするので、是非応援してください!」
「いいですねぇ、我々もルミナちゃんとユリちゃんのダンジョン攻略を見守っていたいと思います! それじゃ次の質問行くよー!」
長くなると思ったのか、ミミが無理やり話題を打ち切った。
「『ルミナちゃんは休みの日には何をして過ごしていますか?』って、お前らルミナちゃんへの質問ばかりじゃねえかぁ!!」
□:知ってたwwww
□:予想できたことだろww
□:驚異の新人なんだから仕方あんめえww
その後もミミの司会で盛り上がったまま番組が進行していく。
この辺の取り回しはさすが大手事務所のタレントといったところだろう。
トークに自信のないルミナは、ほろメンの3人に感心しきりだった。
いつの間にかユリの緊張も和らぎ、他のメンバーに負けないトーク力を見せつけている。
「さてさて、次の質問が前半戦最後になりますかねぇ」
ミミの言葉にルミナはモニターの上に置いてある時計を見た。
気が付けば番組が始まってもう1時間ほど経過している。
「『全員ウインク顔で決めポーズをして』だって。これは質問じゃなくてリクエストだね、それじゃ全員一緒にやろっか」
「ウインクかぁ、ライブでいつもやってるからこれは……ね!」
「ナナセもよゆう」
あかりとナナセが笑顔を見せる。
しかし隣のユリは少し緊張気味の表情だ。
「それじゃいくよ? 3,2,1,はいキュー!」
ルミナ、あかり、ミミ、ナナセは一斉に片目を閉じ、可愛らしいポーズを決める。
しかし──ユリだけが両目をパチパチさせるばかり。
「……あれ? 両方まぶたが閉じちゃう……」
「ユリちゃん、完全に瞬きになってるよ」
ミミがいたずらっぽく笑う。
□:かわいいwww
□:必死に頑張ってるのが逆に草生えるww
「くふふ、ちなみに出来ない人は罰ゲームね」
「えー、ちょっと待って……なんか出来そうで出来ない……」
両目を薄く開けた微妙に変顔になったユリを見て、ルミナは思わず噴き出した。
「ユリちゃん、大人しく罰ゲームしよ?」
「ふえぇぇ……ダメかぁ」
がっくりと肩を落とすユリ。
「まぁまぁ、そんな硬く考えんと、罰ゲームって言っても、特技でも披露したらいいんだよ……何か見せたいこととかない?」
「あ! 私、歌真似が得意です!」
ユリがパッと顔を上げて応えた。
「『ほろきゅーぶ』の星降シオンさんの歌なんですけど……」
「いいじゃんいいじゃん! ちょっと歌ってみてよ」
ユリはその場で立ち上がると、すっと表情を変え、澄みきった声を響かせた。
『♪星の灯り そっと包むよ きみの涙も 夢も全部♪』
声質は本人とは違う──けれど、確かに本人の特徴をよく掴んでいる。
それどころか音程は正確で、感情の乗せ方も繊細。
その場にいた4人とも、一瞬仕事を忘れてユリの歌声に魅せられていた。
□:うおおお! 何この歌声!
□:うますぎんだろ!!
□:誰か本人との比較動画作ってくれ!
「はい、こんな感じなんですケド……」
「ちょっと待って、ちょっと待ってね。ユリちゃん。あなた、どこかスクールに通ってるの?」
「え、いえ、今は地元の高校にしか通ってませんけど……」
「あ──」
ルミナが声を上げたがもう遅かった。




