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正体バレたら人生終了!? 陰キャのゲームオタクが「バ美肉VTuber」になってダンジョン配信を始めたら世界中のアイドルになった件  作者: はむかつ


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第13話 新しい3Dアバター

「それじゃ、モニターに映すわよ?」


 とある平日の夕方。

 STELLA(ステラ) |Innovationsイノベーションズ社の撮影スタジオで、かおる子が嬉々としてモニターの電源を入れた。

 ユリは既に身体の各所にマーカーを付け、ドキドキしながら待ち構えている。

 そう、ユリの新しい3Dアバターが完成したのだ。


「……っ……っ!」

「ゆっくり深呼吸して、息をするのを忘れるなよ」

「わ……わかった」


 俺の言葉に極限まで緊張していたユリが大きく息を吐くのと同時に、モニターにアバターが表示された。

 画面に映ったのは、真っ白な巫女装束に朱の袴、清楚な面差しの中にほんのり幼さを残し、頭にはふわりと揺れる黒猫耳。

 袖の隙間から覗く手には、しなやかな御札を握っている。


「これが……私……?」


 ユリが手を伸ばしたり首を傾げたりすると、モニターの中の少女も可愛らしくそれに反応する。


「すごい……すごい、すごい、すごい……!」


 ユリはその場でくるりと回り、両手を口元に当てて飛び跳ねた。


「やばい! 可愛いっ……可愛い……っ!」


 興奮のあまり半泣きになりながらくるくると回る姿は、アバターも相まって非常に愛らしく見えた。

 かおる子は腕を組んだまま、微笑を崩さずその様子を眺めている。


「ふふ、気に入ってもらえたようで良かったわ。巫女ベースはユリちゃんの希望だったからね。猫耳は……デザイナーの趣味だけど」

「最高の趣味ですよぉぉぉ~~~!」


 ユリが身をくねらせながらうっとりと自分のアバターを見つめる。


「この揺れ感とか、髪の光の透け具合とか、やばい、語彙力が死ぬ……これは一生分の可愛さを凝縮してる……!」

「凄いでしょ? こんなに動いても衣服がどこにもめり込まないのよ。これはもう特許を取ってもいい技術なんだから。表情もかなり細かく再現するから、変な顔したら全部リスナーに伝わるからね」


 興奮してるユリにはおそらく半分も伝わってないだろう……かおる子はやれやれといった表情で俺を見た。

 俺も愛想笑いを返すしかない。


「はいはーい! あともう一つ伝達事項があるのよ。落ち着いて聞いてね」

「あ、あ、すいません……」


 ユリは何を思ったのか、現実にはない膝下の衣服を払い、その場に美しく正座し、両手を太ももの上に重ねた。

 モニターには美しく座る巫女の姿……正直、その立ち居振る舞いや仕草を見て、俺は彼女が多くのファンを獲得するだろうと確信した。


「このアバターのデビュー日が決まったわ。ユリちゃんが毎週金曜日にやってる雑談配信、そこでお披露目するわよ」

「え、金曜って……4日後ですよ? 急すぎじゃないですか?」

「今回はユリちゃんのチャンネルもあるし、そこまで準備がいらないのよね。ちなみに変身ムービーは明日には出来上がるわ」


 すでにそこまで準備をしていたとは……お披露目の時期はかおる子が最善と判断したタイミングだろうし、文句を言う気はない。

 ユリを見ると正座をしながら目を輝かせ、今にも踊りだしそうな雰囲気だった。


「大丈夫、ユリちゃんならきっとたくさんの人が見に来てくれるわ。ちょっとしたプレゼントも用意しているし、当日楽しんでね」

「プレゼントですか?」

「ええ、とは言っても、もともとの登録者数が65人だからね……目標は当日だけで500人ってところかな」

「そんな簡単に……500人と言ったら、今の8倍の数ですよ……?」


 不安がるユリに対し、かおる子は笑顔を向けた。


「出来る出来る! 我が社の精鋭が作ったアバターを信じなさい。でもそこから先の活躍はユリちゃん次第だけどね。一緒に頑張りましょう!」

「は、はい!」


 ユリの大きな返事に、かおる子は満足した様子で首を縦に振った。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 そして木曜日の夜――。

 ユリの変身生配信が目前に迫ったその日、アパートでカップラーメンにお湯を注いでいると、唐突に玄関をノックする音が聞こえた。

 時計を見ると21時を超えている。

 俺は訝しがりながらもドアを開けると、そこにはユリの姿があった。


「……どうした?」

「えっとね……ちょっとだけ、話、できない……?」


 そのまま数秒の沈黙が流れる。

 こんな安アパートにかつてうら若き女性が尋ねてきたことがあっただろうか、いやない。

 よく見ると彼女は学校の制服のままだ……いつも通り会社で稽古をつけて、その帰りにここへ寄ったのだろう。


「とりあえず、中、入るか?」

「ん……」


 ドアを大きく開けるとユリは俺の腕をくぐって玄関へ入ってきた。

 彼女を怖がらせないよう、ドアのカギは掛けずにリビングへ通し、お茶を入れてやる。


「あれ、おうちの方は……?」

「ん? 俺一人だよ? 両親は仕事で海外へ行ってるから、去年から一人暮らしなんだよ」


 そう言ってテーブルの向かい側に座布団を敷いてやる。


「で、どうしたんだ……こんな時間に」

「あの、その……なんか急に、緊張してきちゃって……リハもしたし、セリフも覚えたし、なのに……これで本当にいいのかなって思ったら、怖くなっちゃって」


 ユリは自信なさげにそう言った。


「だってだって、今までは私ひとりでやってきたから! ダメでも自分のせいだって割り切れたの。でもこんなにしてもらって、それでもダメだったら……周りの人に迷惑になっちゃうから……」

「お前な……」

「……え?」


 俺はわざと少し強めの口調でユリに言った。

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