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正体バレたら人生終了!? 陰キャのゲームオタクが「バ美肉VTuber」になってダンジョン配信を始めたら世界中のアイドルになった件  作者: はむかつ


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第11話 波乱の予感……っ!

「で、ルミナとのコラボについてだけど、一応検討させてもらえる?」


 かおる子が席に座り直したあかりに対してそう言った。


「即決はちょっと難しいわね、一応、ルミナにも確認したいし、もしやるとしてもコラボ内容も吟味しないとね」

「もも、もちろんでございます! ぜひぜひ! ご検討をお願いします! もしダンジョンで盾になれと言われれば、喜んでこの身体を差し出しますのでっ」


 かおる子が俺に向かって止めろと目線で合図を出す。

 俺はふるふると首を横に振った。


「あ、あなたの熱意は伝わったから、今日はこの辺にしておきましょう。悠真くん、タクシーを呼んであげて」

「わかりました」


 俺はスマホのアプリでタクシーの配車を手配する。


「あなたも今日はそのまま帰宅していいわ、遅くまでご苦労様」

「残業代はちゃんと貰いますからね、社長」


 俺はかおる子に軽口を叩くと、興奮するあかりを誘導し、会社の入口へ向かった。

 外を見ると、深夜に差し掛かったせいか人の気配はなく、車通りもまばらだ。

 程なくやってきたタクシーに俺たち二人は乗り込んだ。


「『グリーンティエラ渋谷』までお願いします」


 あかりはタクシーの運転手に行き先を告げた。


「え、それマンション名ですよね? 俺聞いちゃいましたけど、いいんですか?」

「信用してますし、これから長い付き合いになるかもしれないから、別に気にしないですよ」


 そう言ってあかりは俺に笑顔を見せた。

 さっきまでの緊張がほぐれたのか、少しリラックスしているようだ。


「でも内密にしてくださいね。そのマンション、うちの事務所のVtuberが多く住んでるので」


 しれっと大事な情報を追加する。


「でも……まともそうな会社で安心しました。あなたも誠実そうな人だし」

「なんですそれ。うちを怪しい会社とでも思ってたんですか?」


 怪しい技術で法に触れることをやってます、とは到底言えなかった。


「Vtuberを扱う会社って怪しいところも多いんですよ。特に個人勢を食い物にするようなところとか。いくつか債務不履行で倒産した会社もありますよ」

「そうなんだ……まぁうちもまだルミナしかいないですからね」

「それも凄いですよ! 一人目でいきなり大ヒットって……あんな原石、どこで見つけてきたんですか!」


 あかりは身を乗り出して俺のほうを向いた。


「配信を見て、もう居ても立ってもいられないって感じで、気付いたら玄関を飛び出てました! 私ってほら、思ったらすぐ動くタイプだから……」

「知ってます」

「あー、それって……皮肉ですか?」

「いえ、あかりさんの配信は……いつも観ていましたので……」


 あかりは一瞬目を見開いた後、視線を落として肩を震わせた。


「な、なんです……?」

「いや、こんなとこでリスナーに会えてとっても嬉しいなって……」


 そう言ってあかりは俺を品定めするように視線を移した。


「さっきから思ってたんですけど……あなたから、ルミナさんっぽい雰囲気を感じるんですよね……」


 俺の肩がピクッと反応してしまう。


「業務上、演技指導もしてますからね」


 俺は動揺を抑えつつ、あえて淡々と語った。


「そうなんですね。でも、ルミナさんって、声も言葉選びもすごく繊細で丁寧で……あれって演じて出来ることじゃないですよね。素の自分を出してるというか」

「演技ですよ。なるべく素を出さないよう口を酸っぱくして言ってますからね。でも彼女、ああ見えて、頑固で真面目で、実はけっこうビビリですよ」

「……やっぱ詳しいですね」


 自分の口が滑ったことに気づいた俺は、一瞬だけ言葉を失った。


「でもいいな、マネージャーさんにそこまで愛されてるって……ちょっと、うらやましいかも」


 あかりのその言葉には、一瞬だけ素の寂しさがにじんでいた。

 行動力ばかり目に付く人だが、実は素直な良い子なのかもしれない。

 そんな会話をしていると、タクシーは『グリーンティエラ渋谷』に辿り着いた。


「ま、ルミナに会いたいなら、焦らず気長にお待ちください」

「……はい、わかってます! いい返事をお待ちしてますね!」


 今度、タクシー代のお礼をさせてくださいと言い残し、あかりはタクシーを降りてこちらに向かって手を振った。

 俺を乗せたタクシーは、そのまま俺の住んでいるアパートのある杉並区を目指す。


「あ……」


 しばらく走った後、俺は隣の座席の足元に赤い手帳が落ちていることに気付いた。

 拾ってぱらぱらと中を覗いてみると、Ytubeの配信スケジュールがびっしりと書かれている。

 間違いなくあかりが落としていったものだろう。

 何気なく後ろを振り返るが、出発してから数百メートルは離れており、当然あかりの姿はない。


「ま、明日会社から連絡すればいいか……」


 俺は赤い手帳をそっと胸ポケットにしまった。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 _/_/_/ SIDE:風見かざみミミ ―人気Vtuber〈ほろきゅーぶ 3期生〉― _/_/_/


「それじゃ、今日の配信はここまでっ! みんな風邪ひくなよ~! それじゃまた明日、おっつみみみ~!」


 平日恒例のソロ配信を終え、ミミはそばに置いてあったマグカップの紅茶を飲み干した。


「よしよし、今日も同接1万は突破できた~、この調子であかりんを追い抜いてやるぜーって、もう0時超えてんじゃん! 今日は盛り上がったからにゃぁ」


 風見ミミはこの業界では珍しい、考察系Vtuberである。

 主に話題となったニュースを深掘りしたり、リスナーからもらった情報を元に詳細を調べ、報告することで人気を博している。

 とにかく好奇心旺盛で弁が立つことから、同じ会社のVtuber仲間と仲が良く、コラボ配信の頻度も高い。


「明日はっと……20時からあかりんとのコラボだねぇ。さっき仕入れたあのネタ、披露しちゃおうかなぁ……くひひ」


 ミミはベランダに出てタバコに火を付けた。

 肺に吸い込んだ煙を愛おしそうにゆっくりと口から出す。

 今や配信後の一服が彼女の楽しみのひとつとなっていた。


「ん? こんな時間に誰か帰ってきた?」


 マンションの降車スペースに1台のタクシーが入ってくるのを見て、ミミはそばに置いてあった双眼鏡を手にした。

 他人の秘密をのぞき見するのが趣味なミミにとって欠かせないアイテムだ。

 少し胸の高鳴りを感じながら双眼鏡をのぞき込むミミ。


「あれは……あかりんじゃん。なんだ、どこか出かけてたんだ」


 ミミはがっかりして双眼鏡から目を離すが、あかりんがタクシーに向かって手を振る仕草を見て、再び双眼鏡をのぞき込んだ。

 誰か連れがいる。

 再び動き出したタクシーの後部座席を見ると、ジャケットを着た男性の姿を彼女の目が捉えた。


「くふ、くふふふ、これは……嵐の予感がしますにゃぁ……」


 ミミはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。

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