☆3
私の名前は柊夢叶と申します。とある財閥傘下の会社の令嬢で、幼い頃から立ち居振る舞いと帝王学をその身に叩き込まれた柊家自慢の一人娘ですわ。
うん...絶望的に似合わない。それに帝王学なんてやったことないし、そもそも一人娘なわけでもない。というかぶっちゃけ幼い頃からやんちゃすぎて家から教育を諦められたというかなんというか...
閑話休題。
まぁそんなわけで私は血だけは由緒正しきお嬢様。そんな私には、不思議な友達がいる。
「え...夢叶ワーク始めてすらないの...?明日なのに...?」
その名前は、今間抜けな顔で絶句中の大里陽奈香。こんな顔してるけど、小学校入学から今まで、毎回全教科オール100点で当然学年一位の大天才。
「いいじゃんお願いぃ!ちょっとでいいから見せてぇ!」
「流石に無理でしょ...何ページあると思ってんの...」
陽奈香は普通の明るい美少女に見えるけど、この学年一の情報屋たる私ですら、その本心は分からない。でも、その明るい性格が本心ではないことは、確かだと思う。陽奈香は時々、色々な表情を浮かべてるから。
時には、子を見守る親のような表情で。
時には、気づいたら消えてしまっていそうな希薄で虚ろな表情で。
時には、自分の命すらも簡単に賭けてしまいそうな、何もかもが狂って壊れている歯車のような表情で。
陽奈香はどこかを見つめている。どれだけ知ろうと思っても、気づいたら陽奈香はそれを躱してる。陽奈香のことをもっと知りたい。陽奈香の本音を、聞いてみたい。私が情報屋になったのも、陽奈香に付きまとっているのも、その行動原理は、知りたいから。未知を解き明かして、自分の手中にしたい。なんで彼氏を作らないのか、彼女の行動原理はなんなのか。私は、それを知りたかったから、動いてた。
でも今は、楽しいから、かもしれない。勿論、知りたいっていうのもある。でも、陽奈香の側にいるのは、どこか空気が温かくて、さらさらしてて、居心地がいいから、陽奈香と一緒にいたい。私にとっては、家よりも家らしい場所。
「いいじゃん40ページくらい!徹夜すれば終わるよ!」
「あはは、まぁ、やれるだけやってみて。明日、どうなったか教えてよ。」
「大丈夫ぅ!私速記できるから!」
「速記ってそういう意味じゃなくない...?」
知っちゃったからには、もう戻れない。




