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☆2

前話の別視点です。

僕の名前は桜木 優。とある私立のトップ小学校に通う、これからを期待されているエリート、らしい。正直、そんな実感はないから僕には分からない。

けれど、多分そうなんだろうな、っていう人を僕は知ってる。僕の一つ下の、陽奈香さんだ。入試では史上初の満点を取って、それからもずっと学年一位をキープしているし、誰とでも仲良く話している。ついているあだ名は”初恋ブレイカー”。でも、そんなあだ名をつけられても仕方ないと思う。だって、そこらへんのモデルが目も当てられないと感じてしまうほどの美少女だから。しかも、有志のファンクラブが調査したら、告白まがいのものも含めたら計16回の告白を、全く同じ言葉で断っているらしい。

想い人がいるとか、家庭の事情で禁止されているとか、同性愛者だからとか、色々な情報が錯綜しているけど、一つとして確かな情報はない。

そして、かくいう僕も彼女を好きになってしまった人の1人だ。今日、僕は運命を変えなくちゃいけない。

僕は朝早く来て、陽奈香さんの下駄箱に手紙を入れておいた。来てくれるかは分からないけど、他の人の話を聞く限りだと、どうやら必ず来てくれるらしい。



授業が耳に入らない。まだ一時間目なのに、頭の中が昼休みのことでいっぱいだ。ちゃんと屋上に来てくれるだろうか。OKしてくれるだろうか。振られたりしないだろうか。嫌われないだろうか。そもそも、手紙はちゃんと見てくれただろうか。そう考えると不安になってきた。授業終わりに、一旦見に行ったほうが良いかもしれない。なくなってたら、少なくとも見てはくれてるはず。そうしていると、いてもたってもいられなくなってきた。早く授業が終わったほしい気持ちと緊張で、頭がごちゃまぜになってくる。もう、どうしたらいいのか分からない。でも、頑張らなくちゃ。



彼女との関わりは、縦割りの交流会と、委員会しかない。でも、毎回目が合う度、彼女は僕に笑いかけてくれたんだ。くれたはずなんだ。だから、成功させなきゃいけない。

そうこうしているうちに、下駄箱に到着する。たまたまなのか、主事さんもおらず、人気がない。誰もいないかもう一回よく確認してから、彼女の下駄箱を開けた。

手紙がなくなってる。つまり、読んでもらったということだ。

安心したような、でも後に引けなくなってしまったような、そんな変な感覚をしながら、教室に戻ろうと背を向けると、

「おやおやぁ?君、5年生の桜木くんですよねぇ?もしかして、陽奈香に気があるとかぁ?」

後ろから声がした。確か、陽奈香さんの友達の...柊さんだったはずだ。今のが、ストーカーだと思われたら、どうしよう?僕は、一生口すらきいてもらえないかもしれない。

「あ、えっと...それは......」

「いやいやぁ、良いんですよぉ?あのバカ、いくら言っても彼氏作ろうとしないから。どんどんアタックして貰わないと困るんだよね!」

「...え?」

「まぁ、というわけで、頑張れ!応援してるよ!」

そう言って、柊さんは階段の方に走り去って、見えなくなってしまった。

「......なんだったんだろう、今の。」

でも、応援してもらってる、ていうことだと思う。陽奈香さんの友達にも応援してもらうってことは、期待して良いのかな。



「来週の木曜日、テストがあります。ここも範囲になるので、気を付けて下さい。では終わります。号令。」

「起立......気を付け、礼。ありがとうございました。」

「「「ありがとうございました。」」」

4時間目の授業が終わった。これから、僕は告白する。OKを貰えるかは分からない。陽奈香さんに嫌われるかもしれない。他の人に笑われるかもしれない。でも、手紙を出した以上後には引けない。賭けなくちゃいけない。万に一つの可能性に。

礼が終わった瞬間、弾かれたように体が動き出す。陽奈香さんの4年生の教室より、僕たち5年生の教室は一階上にある。だから、先に待っている、ということはないと思う。

緊張しながら、屋上への扉を開ける。どうやら、先に着いたようだ。

風の音が髪を揺らし、火照る体の体温を容赦なく奪っていく。


30秒ほどだろうか。1分だろうか。どれだけ経ったかは分からない。不意に、ドアノブが回った。

「っ......」

来た。これから僕は、人生を変えなくちゃいけない。絶対に、成功させてやる。

ドアがゆっくりと開き、陽奈香さんが、僕の想い人が、顔を見せる。話しかけないと。

「あ、あの......陽奈香...さん。」

あぁ、何をやってるんだろう。緊張して、うまく声が出ない。

「......どうしたの?」

優しい声音で、聞いてくれる。言わなくちゃ。成功させなくちゃ。思いきって、やれ。

「僕...陽奈香さんのこと、ずっと好きでしたっ、付き合ってください!」

どうだろう。心臓がバクバクと音をたてる。ただただ、彼女の口が開かれるのを待つしかない。

「...ごめんなさい。」

「..................え?」

これって、断る時に言う言葉、だけど...

「あなたとは、付き合えない。」

視界が滲んで、手がどうしようもなく震える。自分では、だめなんだ。薄々分かっていたはずなのに、どうして。何がだめだったの?彼女は、僕の手の届く存在なんかじゃ、なかったってこと?

「あなたが、あなたにとってより相応しい人と幸せになれると、私は信じていますよ。」

彼女が、そう言って屋上から出ていく。違う。そうじゃない。僕には、あなた以外あり得ない。陽奈香さん以外との女性となんて、幸せになりたくない。やめてくれ。僕は、僕は.......

「辛い、なぁ......」

涙がとめどなく溢れて、制服に滲み、滑り落ちる。僕は、友達が心配してやってくるまで、ずっと泣き崩れていた。

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