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問題児雪だるまレイ  作者: 雪だるま


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9/16

のだぁああああ!?追いかけないでなのだぁあああ!!



その日、宮殿の外は異常に静かだった。


空は青白く、風もなく、雪原がまるで時間を止めたような白い鏡のように広がっていた。

雪の女王が執務に集中している間、問題児レイは宮殿の外で“芸術的雪玉”を量産していた。


「のだっ♡完璧なのだぁ♡

この雪玉はミイラにも応用できるのだぁ♡

これをシロップ漬けにすればかき氷トラップになるのだぁ♡」


――そのとき。


遠く、森の縁から現れた。


白く、美しい雌の狼。


毛並みは月光のように輝き、

氷のような青い目をこちらに向けていた。


「…………の、のだっ……?」


レイは固まった。


(な、な、なにあれ……う、美しすぎるのだぁ……♡)


(ちょっぴり冷たそうで……でも優雅で……耳がピンとしてて……)


(なによりも……足が長いのだぁ♡♡♡)


「の、ののののだっ!?

吾輩、恋をしたのだぁあああああ♡♡♡」



第一接触:心は恋、体は逃走


レイは雪の塊を抱えたまま、震えながら微笑んだ。


「こ、こんにちはなのだぁ……♡

う、吾輩はこの宮殿に住まう高貴な……雪だるまのレイなのだぁ……♡」


狼は、音もなく歩を進めてきた。


一歩。


また一歩。


「……のだっ♡……えへ……♡」


三歩目――狼、走り出す。


「…………のっっっっののののののだぁああああああ!?!?!?!?

追いかけないでなのだぁあああああ!!

吾輩、足短いのだぁあああああああ!!!!」



全力逃走(※30cmごとに転ぶ)


「のだっ!のだっ!のだっ!まってなのだぁああ!!

そ、そういうアプローチは予想外なのだぁああああ!!

心の準備ができてないのだぁあああ!!」


狼、美しいまま無言で追いかけてくる。

牙も出していない。舌も出していない。

ただ、レイが興奮して暴れていたのを面白がっているだけらしい。


しかし、レイには分からない。


「ち、ちがうのだぁ!好きだけど!

今は!この距離感は近すぎるのだぁ!!

初デートはまず雪の女王に紹介してからなのだぁ!!」


(※すでに汗のような霜が浮いている)



スノレイナと雪の女王の視点


窓辺に立つ、スノレイナ。


「……ママ、お兄ちゃんが……また転んだ……」


「ええ、ええ。今日は七回目ね」


「……狼さん、すごく綺麗……」


「でも、あの様子だと……今日は“恋”というより“捕食される側”ですね」


「……でも、お兄ちゃん……がんばってる、の」


女王は目を細めた。


「……あれでも、必死に“愛の逃走”をしているのね。ご立派なことです」



レイ、限界


レイは雪原に腹ばいになって倒れていた。


「のだぁああ……く、苦しいのだぁ……

足が短いと……恋すら……叶わぬのだぁ……

スノレイナと比べても……胴体比率が異常なのだぁ……」


狼は目の前に座り込んで、首を傾げていた。


その目は、なぜか――ほんの少し、優しかった。


「……の、のだ……?」


狼、ぺろりとレイのほっぺを舐めた。


「…………!?」


レイ、真っ赤になる(※白いから見えないが)


「のだぁああああああ!?!?」



エピローグ


その後――

レイは“白狼の彼女ができたらしい”と地下牢の囚人たちに自慢したが、誰も信じてくれなかった。


「のだっ!?本当なのだぁ!?狼の美人なのだぁ!?

ぺろってされたのだぞぉ!?興奮しすぎて脳の氷がとけたのだぁ!!」


囚人A「……夢だな」


囚人B「うん」


スノレイナだけは、そっと微笑んだ。


「……たしかに、お兄ちゃん……舐められてた、の」



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