のだぁ……あ、ハニー?またお肉ですのだぁ?
雪の宮殿に春など来ない。
だが、今日の空気には、どこか**“ほの暖かい気配”**があった。
いや、それは気のせいではない。
城の上空に舞う雪の精霊たちがざわついている。
囚人たちも牢の隅から耳をそばだてている。
そう――
白い狼の背に、あの問題児雪だるまが乗っていたからである。
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白銀の恋人、現る
「のだぁ♡ふふふふふ♡
み、見ているのだぁああ!?
吾輩、今日は徒歩ではないのだぁ♡
足が短くても、馬力でカバーなのだぁ♡」
城の回廊を一周、また一周。
雪の女王の宮殿の塔のまわりを、白く美しい雌の狼が悠々と走る。
その背にちょこんと座る雪だるま――問題児レイ。
風を切り、尻尾を揺らし、得意満面で手を振る。
「のだぁあああ♡
下界の者どもぉおお♡
見よぉおおお!吾輩のハニーなのだぁ♡」
囚人A「……誰が“ハニー”だよ」
囚人B「狼、顔めちゃくちゃ無表情だぞ」
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騎乗雪だるまの恋人気分
レイは片手で狼の首元にしがみつき、もう片方の手で小さなカバンをごそごそと探る。
「……のだっ、ハニー、またお肉なのだぁ?
まったく甘えん坊なのだぁ……えっへん♡」
(※狼はただの運動習慣)
「待っててなのだぁ♡今すぐ出すのだぁ♡」
カバンから出てきたのは、冷凍の鶏むね肉。
(※雪の女王の台所から盗ってきた)
「はいっ♡ラブラブごはんなのだぁ♡食べてよいのだぁ♡」
狼、ゆっくり首を傾げたのち――ぱくり。
レイ、溶けそうな笑み。
「ふふふ……これぞ愛なのだぁ……♡
吾輩の手料理(盗品)に舌鼓を打つ姿、たまらんのだぁ♡」
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宮殿内の反応
雪の女王は、執務机で小さくため息をついていた。
「……今日も、見せつけてるわね……」
スノレイナは、窓の外を見ながら小さく首をかしげた。
「……あの狼さん、たぶん……走るのが楽しいだけ、だと思う、の」
「ええ。たぶんそうね。
けれど……あの子が幸せそうだから、もう何も言う気が起きないわ」
「……でも、お兄ちゃん……最後には振り落とされると思う、の」
「私も、そう思うわ」
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転倒の予感
「ふふんっ♡
どうなのだぁ!これが吾輩の青春なのだぁ!
狼との騎乗恋愛プレイ(※表現がおかしい)なのだぁ♡
雪の王子と雪の猛獣姫のラブストーリーなのだぁ!!」
その瞬間。
狼、急停止。
「の、のだっ!?」
白い球体――
ぶっ飛ぶ。
「のだぁあああああああああ!?!?!?
ハニー!吾輩の足では空中姿勢維持ができないのだぁああああ!!!」
ズザザザァアア――ッ!
レイ、雪の中に突っ込んで消えた。
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埋まる王子
「………………の、のだ……?」
雪の中から、鼻だけが出ている。
スノレイナ(窓越しに観察中)「……うん、落ちた、の」
雪の女王「でも生きてるわね。良かった」
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それでも
狼は近づき、レイの雪を掘り返した。
「……のだぁああ……痛いのだぁ……
でも、これは……愛の試練なのだぁ……」
狼、静かにレイの頭をくわえ――
また背中に戻した。
「のだっ……♡ハニーぃ……♡♡♡」
そして再び、城のまわりを走り出す。
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エピローグ
その日、囚人たちは静かに語った。
「……アイツだけ人生(雪だるま生)楽しんでるな」
「いや、犬に遊ばれてるだけかも」
「でも、幸せそうだよな」
スノレイナは日記に書いた。
「お兄ちゃん、今日も飛んだ。でも、たのしそうだった、の。」
雪の女王は、ひとつだけ命令を出した。
「城の外周、狼用に専用ランニングルートを設けなさい」
レイは、今日も叫んでいた。
「のだぁあああ♡
ハニィィィィィィィ!!!!!
愛してるのだぁあああああああ♡♡♡♡」




