ミイラと蜂蜜とドヤ顔雪だるま
朝。
雪の宮殿に、今日も氷の陽光が降り注いでいた。
それは、静かで凛とした時間――のはずだった。
だが、ある部屋では。
「のだっ♡ママと妹(足短い)の椅子にミイラなど置いてないのだっ♡
蜂蜜もぶちまけてなどいないのだっ♡
アーハッハッハッハ!!!」
めちゃくちゃ置いてあった。
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数分前:惨劇の発見
雪の女王が、朝の読書に座ろうとした瞬間。
椅子の上に、乾いた古代風の包帯のかたまりが鎮座していた。
「………………」
女王は、無言で包帯をどかす。
巻かれていた中身は――**氷で作られた“ミイラもどき”**だった。
彫刻技術はなぜか無駄に高い。彫られていた文字は「のだぁ♡」。
その直後、スノレイナの椅子に座った小さな尻が、べちゃりと鳴った。
「……ひゃっ……」
蜂蜜である。
椅子の座面に、濃厚な蜂蜜がたっぷり塗られていた。
スノレイナはびっくりして、
じわっと涙目になった。
「……ぴ、ぴとぴとする……」
「スノレイナ、立ってなさい。拭きます」
雪の女王は冷静に対応しつつ、
部屋の隅――満面の笑みで見守る白い球体に目を向けた。
「……レイ」
「のだっ♡なんの用なのだぁ♡?
吾輩はただここで“静かに芸術を眺めていただけ”なのだぁ♡」
「その芸術、ミイラのことですか?」
「のだっ!?あ、いや、その、ええと……そういう解釈もできるのだぁ!でも偶然なのだぁ!」
「蜂蜜は?」
「偶然垂れただけなのだぁ♡♡♡瓶が自発的に踊ったのだぁ♡♡♡」
スノレイナ(まだ涙目)
「……お、お兄ちゃん……やめてほしい、の」
「のだぁっ!?妹よっ!?今、何を言ったのだっ!?!?」
「……椅子、べたべたで……びっくりして……
気持ち悪かった、の……」
レイ、雷に打たれたような顔になる。
(※白いからわかりにくいが、完全にショック)
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数分後:取調べタイム
女王執務室にて、雪の女王・スノレイナ・レイが整列。
椅子は新しいものに交換済み、蜂蜜は魔法で除去済み。
「レイ」
「のだっ!?はいなのだぁ!!」
「あなたがやったことを、すべて話しなさい」
「……のだぁ。ええと……椅子にちょっとしたサプライズを……
喜ぶと思ったのだぁ……ミイラは芸術で、蜂蜜は自然との調和の表現で……」
「スノレイナは泣いてました」
「うわあああああああん!!
ママぁ!吾輩は悪くないと思ってたのだぁああ!!
でも妹に泣かれると罪悪感がっ!のだぁぁ!!うえええええん!!!」
スノレイナ(また涙目)
「ま、また泣いてる……の……?」
「ちがうのだぁ!!今回はお兄ちゃんが泣いてるのだぁ!!!」
「……ほんとに?」
「ほんとなのだぁああ!!うええええええん!!妹に嫌われたら終わりなのだぁ!!」
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罰
レイは、その後3時間のお片付け当番を命じられた。
•宮殿の氷床を全部自分で磨く
•蜂蜜が垂れた部分を二度拭き
•ミイラ氷像を全て溶かす(数体あった)
レイは泣きながら言った。
「芸術はっ……っ……理解されぬっ……のだぁ……!!!
吾輩は……世界に……早すぎたのだぁ……!!」
スノレイナは、後ろで見守っていた。
そして、小さな手を差し出した。
「……がんばって」
レイ、瞬時に復活。
「のだぁああああああああ♡♡♡
妹ぉおおおおお♡♡♡やっぱり世界で一番優しいのは妹なのだぁ♡♡♡」
「……でも、椅子に何か置くのはやめて、ね?」
「……のだぁ……反省するのだぁ……」
(※たぶん明日には忘れる)
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エピローグ
雪の女王は、静かに日記に記した。
「レイの今日のいたずら:蜂蜜+ミイラ+ドヤ顔」
「対処済。妹の耐性向上中」
その下に、書き足されるようにこうあった。
「……とはいえ、あの子たちは、今日も仲がいい」




