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問題児雪だるまレイ  作者: 雪だるま


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6/16

「……のだぁ……?」



「……のだぁ……?」


雪の宮殿は、今日も白く静かであった。

だが、その一角――レイの部屋の前だけが、異様なほどに沈黙していた。


「………………」


ドアの隙間から、レイがこちらをじっと見ていた。

目はうるうる。鼻はぴくぴく。口元はわずかに下がっている。


(吾輩は……見たのだぁ……)


たった今、彼は目撃してしまったのである。

母(とレイが勝手に呼んでいる雪の女王)が、妹・スノレイナの額にそっとキスをしていたところを。


「……のだぁ……?」


声は震えていた。



レイの脳内(全力回想モード)


「えっへん♡吾輩がママの一番なのだぁ♡」

「ママ!この落書き見てほしいのだぁ♡冷気で描いたのだぁ♡」

「ママ!吾輩が地下牢で氷の家具販売してるの、褒めてくれたのだぁ♡」


(→家具全然売れてない)


「ママ!このかき氷、妹にはもったいないから吾輩が三杯食べるのだぁ♡」


(→妹は一口だけ食べて満足してた)


「ママ!この寝言、面白いのだぁ?ねぇ?ねぇ?」


(→めちゃくちゃうるさい)


「ママ!ママ!ママ!ママ!ママああああああ!!!」


(→数回無視されていた)



そして現実へ戻る


「………………のだぁ?」


レイはぺたんと床に座り込んだ。


白い廊下に、真っ白な雪だるまが縮こまる。

その姿は、どこか哀れで、そして少し滑稽でもあった。


「……ママは……妹のことだけ……

そんなに好きなのだぁ……?」


脳内で、雪の女王の声がエコーする。

「スノレイナ、よく頑張りましたね」

「スノレイナ、静かに本を読んで偉いわ」

「スノレイナ、優しい声でお礼が言えてすてき」


「のだっ!?のだっ!?のだっ!?!?

な、な、なにそれ、ズルいのだぁああああああ!!」


レイは慌てて立ち上がった。

廊下をばたばた走る。目指すは――



女王の私室前


扉の向こうから聞こえる、静かな会話。


「……ありがとう、ママ……」


「ふふ……スノレイナ。おやすみなさい」


――その瞬間、レイの中で何かが爆発した。


「のだぁあああああ!!!」


ドアが乱暴に開かれた。


「吾輩もママに“おやすみ”って言われたいのだぁあああ!!!

スノレイナだけずるいのだぁああああ!!!

吾輩は毎日頑張ってうるさくしてるのだぞぉおおお!!!」


雪の女王とスノレイナが振り返る。


スノレイナは驚き、涙目になっていた。


女王は一瞬だけ息をのんだが――やがて静かに、レイに向き直った。


「……レイ。あなたは、うるさすぎるのです」


「のだっ!?!?」


「騒ぎすぎてスノレイナの眠りを妨げています。

地下牢の囚人たちも風邪をひきました。

城の構造が崩れた箇所も、あなたのせいです」


「のだぁ……のだぁぁ……!?そんな……」


「でも」


「のだっ!?」


「……そんなあなたでも、私の子です」


雪の女王は、静かにレイの頭に手をのせた。


「……今度は、ちゃんと“静かにできた日”に、おやすみを言います」


「……の、ののの……静かに……って、どうやって……?」


「まず、今日の分のお喋りを明日まで我慢してみましょうか」


「の、のだぁ……そ、それは……し、死ぬほど苦しいのだぁ……」


「できれば、“おやすみ”を言いましょう」


「……のだぁ…………努力するのだぁ……」



その夜。


レイは自室で、手で口を押さえながらベッドに入った。

あまりにも苦しいので、寝言も封印する覚悟だった。


「……ママは……吾輩のママなのだぁ……

きっと……なのだぁ……」


白い顔は、いつも通りだった。

でも、ほんの少し、頬がしょんぼりして見えた。


かすかに、レイの目元から――

とけない、雪のしずくが、ぽとりと落ちた。



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