妹誕生!そして即マウント!!
それは、とある吹雪の夜のことだった。
「のだぁああああああ!!!
吾輩は下の者が欲しいのだぁ!!
誰かに威張りたいのだぁ!!妹が欲しいのだぁああ!!」
氷の宮殿の天井が震えるほどの大声で、レイは地面に転がっていた。
仰向け。手足をばたつかせながら、床を蹴り散らす。
「吾輩は長男なのだぁ!たぶんなのだぁ!!
とにかく!可愛い妹にマウントしたいお年頃なのだぁああ!!」
その願いは、数日間――
いや、数週間にわたり続いた。
食事のたびに泣き、
風呂のたびに喚き、
かき氷のシロップの色が気に入らなければ「妹がいないせいなのだぁ!」と訴え、
ついには地下牢の囚人たちに署名を求めて回った。
「のだっ!?署名なのだぁ!『妹を作ってあげてください』って書くのだぁ!書けぇぇ!!」
囚人たちは凍えた手でサインさせられた。
⸻
そして、ある日。
雪の女王はついに――折れた。
「……わかりました。レイ。妹を作ります」
「のだっ!?ほ、ほんとにっ!?
やったのだぁああああああ!!!
これで吾輩の王国が完成するのだぁああ!!!」
「……ただし、“あなたと同じようなもの”です」
「のだっ♡完璧なのだぁ♡♡♡」
⸻
数時間後。
雪の女王の手から、新たな命が生まれた。
それは、小さな雪の塊――
レイよりもやや小柄で、丸っこいフォルムの雪だるま。
目にはまばゆい氷の粒、鼻は可愛らしい小さな人参。
ふわふわの銀色のリボンが首に巻かれ、優しげな雰囲気を湛えていた。
「……はじめまして、お兄ちゃん」
それが、妹・スノレイナだった。
「…………のだっ」
レイは彼女を凝視した。
一秒。
二秒。
三秒。
そして、突如――
「…の、ののののだぁ!?
お馬鹿なのだぁ!ぷぷぷ……恥ずかしいやつなのだぁ!!
アーハッハッハッハッハッハ!!!」
腹を抱えて笑い始めた。
「のだっ♡おっそいのだぁ!
歩き方がよちよちしてるのだぁ!バランス悪いのだぁ!
リボンが似合ってないのだぁああ!
おまけに声が可愛すぎて恥ずかしいのだぁあああ!!!」
スノレイナはぽかんと見上げていた。
レイは周囲をぐるぐる回りながら、自作のラッパ(氷の筒)を吹き鳴らした。
「妹誕生祭なのだぁああ!!
でも完全に吾輩の方が上なのだぁ!!
可愛さも賢さも雪の質も鼻の大きさも全部勝ってるのだぁああ!!」
「えっへん!えっへん!
これが兄というものなのだぁああ!!」
女王は額を押さえていた。
「……レイ、彼女は生まれたばかりです。静かにしてあげなさい」
「のだっ!?だってだってだってなのだぁ!!
やっと吾輩に格下ができたのだぁああああ!!!
今こそ兄としての威厳を発揮するチャンスなのだぁああ!!」
妹は、静かに雪の女王の影に隠れた。
レイはラッパを掲げた。
「よいか妹よ!!
吾輩は兄として、お前の教育係なのだぁ!
今日からマウント三昧の人生が始まるのだぁあああ!!!」
その瞬間、天井の氷が一部剥がれ落ちた。
あまりのうるささに、建物が耐えられなかったらしい。
⸻
その夜。
レイはふかふかの雪ベッドに寝転がりながら、頬を緩めていた。
「うふふふふ……♡
妹ができたのだぁ……♡
しかも、明らかに吾輩より下なのだぁ♡」
女王はそっと呟いた。
「……あなたより下の存在なんて、作るつもりなかったんですが……」
レイは気づかなかった。
いや、気づいても気にしなかった。
彼はただ――
「ぷぷぷっ、歩き方よちよちなのだぁ♡
ククク……声が優しいとか逆に弱そうなのだぁ♡」
――妹へのマウントに夢中であった。




