ライバルなんていらない死ね
いつも通り学校に行った。
今日は学校のOBが来るらしく、出迎える為に学校内は騒がしくなっていた。
僕には特に関わりのない出来事だから傍観していた。
全校朝礼でOBの人が全校生徒にスピーチをする。
校長先生の話はいつも聞き流しているから、たまには耳でも傾けてやるか。
OBの人が口を開けた。
初めまして、椎名楽兎です。「待つ」ということについて皆さんは考えたことありますか?私は、ある出来事がきっかけで「待つ」ということについて、衝撃を受けました。そのお話を少ししようと思います。私は絵を描いていて、目に映る全てを敵だと思い戦ってきましたが、ある日先輩に、そんなことをしたって敵だとしている人には気づかれないよ、喧嘩なんか売らずに、気づかれるまで待つという辛抱強さが大事なんだって言われたんだ。私はその待つという強さを知り今に至る。今日の話はこんなところにして、この朝礼が終わった頃には帰りの廊下に私達「楽兎会」の作品が飾られているでしょう。ぜひ皆さんご覧になっていってください。
やっと終わった。長いわりに大した話はしねえな。まあいい、廊下の作品は見てみるか。
「うーん、ゴッホに勝る作品なんてねえなああ」
お、君はゴッホの絵を見たことがあるのかい?楽兎が話しかけてきた、私はあまりギャラリーに行かなくてね、なんせ待っているからね、今日は楽兎会の打ち上げがあるんだが、来ないか?お断りします。正直、僕はこの絵の何がいいかわからない、待つという精神にも僕は耐えられない、たぶん、僕は楽兎さんとはうまくお話ができないという自信さえありますよ。いやいや、そんなこと言わずに、今夜、渋谷のカラオケ館でやるからもしよかったら来てくれよ。ああ、時間があれば行くかもしれません。
何だろう、楽兎という男は何だか言葉にし難い、醜いと言っても足りない、愚かと言うとまだ足りない、何だか奥底に怪物を飼っているような恐怖がある。だが、なぜその怪物を絵の中に表現しないのだろう、わからない。
違和感は他にもあった、恐らくその、楽兎会のメンバーが楽兎以外は女性だったことだ。
そして楽兎以外の絵はかなりいい。ゴッホには及ばないが、それでも、似たような魂を感じる。その正体は何なのかが気になる。
学校が終わり、いつも通り渋谷へ行く。愛子に会い、一緒にご飯を食べながら、今日あったことを色々と話した。じゃあ、行ってみる?カラオケ館、私の観察眼で、彼を見てどう感じたかを私が暴いてあげるわ、彼の本性を。お、おう、じゃあ、行くか、あんまりいい会じゃない気がするけれども、言い訳ができたし、彼と会いたくて会いに行く訳ではないし、まあいいか。
カラオケ館に着くと、楽兎が待ち構えていた、お、来ると思っていたよ、じゃあ、私たちの部屋に案内するね、あれ?そこの可愛らしい女性はどなた?初めまして、愛子です、私はまあ、ノリで来ました、よろしくお願いします。おおお、いいね、愛子ちゃん、楽しんでいってね。
部屋に入るとやはり、女性だらけ、そこで色々と話を聞いた。楽兎は美容学校に通っていて、アルバイトはバーテンダーだとか、女には目がなく、それを悟られないようにするのがうまいことだとか、色々と化けの皮が見えてきた。
クラブミュージックが流れる部屋だった
こ、この曲聞いたことがある、トレインスポッティングと言う映画で流れる曲じゃないか?愛子これ、一緒に観たよな?うん、あの作品、私大好き!
恥ずかしいけれども、踊らない訳にいかないし、みんなに混じって踊った。
会が終わる頃、楽兎は僕に話しかけてきた、君を私はライバルにする、勝手でごめんね、君の絵が私と同じように飾られる日を待っている。ああ、どうぞ、ご勝手に。
色々と化けの皮が剥がれた彼からの言葉に全く重みを感じなかった。A4の紙よりも軽い、軽すぎる。
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