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8・わが子の帰還を喜ぶ二人

 鬼を退治した桃太郎一行は村まで帰ってきました。


「鬼は退治してきました。皆さん、奪われたものを取りに行きましょう」


 桃太郎が村でそう言って回りましたが村人は半信半疑です。仕方がありません。鬼が島は潮の流れが速く、簡単に近づけないのでこれまで退治に行った人たちは散々な目に合ってきたのです。村の人たちは桃太郎が嘘を言っているのではないかと疑っていました。


「これが鬼が島から持ち帰ってものだ」


 日吉がそう言って掲げた着物を見た村人の一人が言いました。


「それはワシの着物じゃ!」


 その一言で村の人たちは桃太郎一行の事を信じる様になり、皆で鬼が島へと向かうことになりました。


 桃太郎一行を乗せた船を先頭に、潮の抜け道を通って島へと到着しました。そして、我先にと村人たちが上陸していきます。

 するとどうでしょう。はじめのうちは盗まれたお金や着物、道具などを見つけて喜ぶ人々の声が聞こえていましたが、いつしかそれが怒鳴りあう声へと変わったではありませんか。


「おい、それは俺の取り分だ」


「なんだと、小僧、これはワシがもらい受ける」


 そこかしこでそんな怒鳴りあう声が聞こえてくるではありませんか。


「こいつはいけねぇ、ちょっくら行って来ますわ」


 日吉がそう言って村人たちの中へと消えていきました。


 次第に怒鳴りあう声が鎮まっていくではないですか。

 桃太郎たちが様子をうかがっていると日吉が顔を出しました。


「話はついた。桃太郎たちもこっちへ来なせい」


 日吉が呼ぶので三人はそちらへと向かいました。

 そこには自分たちの物以外にも沢山の着物や財宝を抱えた村人たちと日吉が待っていました。


「さて、お三方、これが村人からの贈り物だって事でありがたく貰っていこう」


 日吉の背には山と積まれた金銀や着物、囚われていた女たちが居るではないですか。


「じゃあ、俺はこれだな」


 海道一の弓取りが一つを選んで手に持ちました。


「では、拙者はこれを」


 犬甘も一つを選んで手にしました。


「じゃあ、あっしは・・・」


 日吉も選んで手にしました。


「私はそうですね。こちらを」


 桃太郎も選んで手にしました。


「さて、皆さん帰りましょう」


 桃太郎は皆に声をかけて島を後にするのでした。




「おお、桃太郎が帰ってきたぞ」


 お婆さんは帰ってきた桃太郎を見つけて駆け寄りました。お爺さんもお婆さんの声を聴いて家から出てきます。

 二人は桃太郎に駆け寄ります。


「おお、よう帰ってきた。怪我はないか?疲れてはおらんか?」


 二人は口々に桃太郎を労います。


「ところで・・・・」


 二人は桃太郎の横にいる人物をまじまじと見つめました。


「お父さん、お母さん、この娘は鬼の娘です」


 お爺さんとお婆さんは驚きました。言葉も出せずにあんぐりと大きな口を開けてみている事しかできません。


「私が退治した鬼の頭の娘です。他の鬼たちは私たちが島へ戻った時には逃げた後でしたが、この娘が囚われた女たちを守って島に残っていました」


 お爺さんとお婆さんは桃太郎の言っている事がよく分かりません。


「桃太郎や、では、その鬼にとってお前は仇ではないか」


 お爺さんは桃太郎に尋ねます。


「そうです。私は彼女の仇です」


「それではわしらや桃太郎が鬼に殺されてしまうではないか」


 お婆さんも桃太郎に尋ねました。


「大丈夫です。この娘は鬼たちが何をやっていたのか知って心を改めました。他に行く当てがないので我が家で一緒に暮らそうと思います」


 桃太郎は二人にそう言ったのです。



 一体鬼が島で何があったのでしょうか。


 あの時、海道一の弓取りが手にしたのは桃太郎の旗物差しでした。

 弓取りは言いました。


「俺はこれがあればいい。鬼が島の鬼を成敗した。そのことを証明するにはこれがあれば十分だ」


 そう言って船を降りた弓取りは帰って行ったのです。


 犬甘が手にしたのは鬼の頭の頸でした。


「これがあれば鬼を退治したと分かろう。これを持って帰れば皆も安心するだろう」


 そう言って船を降りた犬甘は帰って行ったのでした。


 日吉は女たちの手を引い行きました。


「身寄りのない女子をほっておけない。連れて帰ってやらんと」


 そう言って船を降りた日吉は女たちを連れて帰っていきました。


 桃太郎は女たちの中でただ一人残った少女の手を取りました。


「私を睨んでいる君は一体何者ですか?」


 その場では詳しい事は聞かず、船を降りてから話を聞きました。


「あなたは鬼の頭の娘でしょうか?」


 桃太郎の問いに少女はただ睨み返すだけでした。


「そうですか。あなたは父親が何をしたか分かっている、そして、逃げる腹いせに捕らえた女たちに手を上げようとする他の鬼たちから守っていたのではないですか?」


 少女は桃太郎を睨むことを止めません。


「あなたには角がある訳でもない、少々肌の色が周りの人とは違うだろうけれど、普通に暮らしていくことは出来るでしょう。もし、仲間を追いかけたいなら追いかけなさい。人里で暮らすならそれもよいでしょう。それでは」


 睨み続ける少女を置いて桃太郎は帰ろうとしました。


「まて、なぜ罪人の娘を殺しもせずに逃がそうとする。俺はお前を殺しに行くかもしれんぞ」


 桃太郎は少女に微笑みながら言いました。


「それならば私があなたの手を取ってから今までいくらでも機会があったでしょう?私はまだ生きています。あなたは人を殺せる悪人ではありません」


 それを聞いた少女はさらに桃太郎を睨みます。


「ならば、俺はお前についていく。いつか必ず殺してやるからな」


 そう言って少女は帰る桃太郎について行くのでした。



 

 鬼から取られたものを取り返した村はどうしているでしょうか。


 桃太郎一行が村を去ったあと、あるものはまた鬼が島へ、あるものは周りの村々に鬼が退治されたことを知らせに行きました。

 そして、周りの村からも鬼が島に渡る者がたくさん居りました。

 するとどうでしょう。鬼が島で財宝をめぐって争いが起きたではありませんか。そして、村々は財宝が誰の物かで対立するようになってしまいました。


 いつ終わるかわからない争いに村人たちは思うのでした。


「なんであいつらは財宝をもっていかなかったんだ!!」


 旗物差しを持って帰った弓取りは鬼退治一行であったと認められて海道一の大大名にのし上がったそうです。


 鬼の頸を持ち帰った犬甘も鬼退治を行ったことが認められて武将として出世を果たしました。


 女たちを連れ帰った日吉は持ち前の機転と女たちの力を借りて大店になったそうです。


 鬼の娘を連れ帰った桃太郎はその後、娘と幸せに暮らしたのでした。



めでたしめでたし。


あれ?鬼に荒らされた村が全く幸せになっていない(笑


欲に目がくらんだら幸せに離れないって事なんだろうかね。


でも、日吉はどうなんだろう?

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