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考えすぎはよくないよ?

 智哉の中には様々な感情が渦巻いていたが、一番強かったのは恐らく【不安】である。


 友永は既に意識を取り戻しているらしい。

 ただ、起き上がることも話すことも今はまだ、少し難しいというだけで。


 この産みの父親のせいで、あんな目に遭った彼に、果たしてなんと言って謝ればいいのだろうか。


 その上、こんなにも自己中心的で自己弁護にばかり走る人間を彼はどう思うだろうか?


 その血を引いている自分に対して、友永はどんなふうに考えるのだろう。


 嫌われたくない。

 せっかく見つけた、心の拠り所なのに。


 失うのが怖い。


 だけど……。


「まぁいいでしょう。今、ここであなたを問い詰めたところで仕方ありません。渋沢さん。覚えている限り、昨夜のことをお話してください。あくまでも脚色のない、真実をね」

 和泉が言い、実の父は項垂れた。




 篠崎智哉の実の父親……渋沢憲明と言うのがその名前なのだが……は、彼らの母親と別れた後に再婚したものの、他にも愛人がいた。


 それが、今回の事件の被害者となった看護師である。


 連日のように発生している医療関係者への傷害事件。


 渋沢は別れた妻との間に設けた息子に、警察官の知り合いがいると知って、ボディーガードのようなことを頼めないだろうかと考えたらしい。


 被害者は不倫相手だったと、彼は正直に認めた。


 心配だから、と渋沢が友永に会う約束を取り付けた時、愛人も一緒についてきたらしい。


 そうして巻き込まれた。


 それほど長い時間に渡る遣り取りはなかったという。

 送ってくれると言って友永が駐車場に向かった途端、見ず知らずの賊に囲まれたのだという。


 襲われる原因に関してはまったく心当たりがない、という彼の様子にやや疑問を覚えはしたものの、今は問い詰めたところで無駄だろう。


 無理に自白を強要すれば、後で何を言われるかわかったものではない。


 とにかく今は彼を解放してやることにした。


 ふと、和泉は智哉の顔色を見た。


 すっかり血の気が引いて、微かに震えている。

 少しの期間とはいえ、何度か彼と遣り取りをしたことのある和泉にはすぐにピンときた。


 彼は怯えている。

 友永がこんな状態になってしまった原因について、自分も責めを追わなければならないと考えているに違いない。


 父親のせいで大好きな人が怪我をした。


 憎まれたらどうしよう。

 もし彼の身体のどこかに、一生に関わる支障ができてしまったら……?


 頭のいい子だが、それだけにあれこれ考え過ぎてしまうようだ。

 良く言えば慎重、悪く言えば消極的。そして。

 周と同じく、他人の言うことに左右されやすい。


 それだけ純粋なのだろう。

 加えて彼らにはまだ、それほど長い人生経験はない。


「智哉君」

 和泉が声をかけると、彼は泣きだしそうな顔でこちらを振り向いた。


「朝も言ったけど、君は何一つ責任を感じることなんてないからね?」


 心のどこかでそうであって欲しい、と願う気持ちと、納得がいかない、そんな葛藤が見て取れた。


「何を信じるか、どう考えるか。それは君自身が決めることだよ。智哉君」


 智哉は驚いた顔をした。

「他人の意見に振り回されないで。迷ったらそれこそ……友永さんに相談すればいいじゃない。ね?」

「……!!」


 大丈夫。意識はしっかりしてるから、と和泉は飛びついて来た少年の背中をそっと撫でた。


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