Q:登りきれそう? A:マジでムリ
2735文字
壁が魔法を弾かないギリギリに立つ。川の中だ。下腹部までずぶ濡れだが気にしない
最近の研究で解った事がある、作り出す物。それと同じ物質を触れている時、魔力の消費を軽減できるのだ。全魔眼と知恵を出し合い、出来た時は飛んで喜んだ。これを使って魔法を使う事を、『代理魔法』と呼ぶ事にしよう
水面をみると俺の顔が見える。水面に映る俺の左目は金色。そう、全魔眼が解禁されると同時に俺の右目は金色に輝きだしたのだ
そして額には真っ黒いゴーグルを付けている
〈いい魔力操作です。無駄が無く。ほぼ全てを川と、水鉄砲の構成で補えると思われます〉
全魔眼の声を聞いた。ゴーグルをして、膝をおり川に沈む。川の底に手をつき。叫んだ
今俺が試している登る方法で、最も成功する確率が高いと思われる物だ。川全体を水鉄砲として、俺の足下を噴出口にする。まあ、力技だね
「クソがああああああああああああああ!」
俺が谷底に落ちて、もう半年が過ぎた。確か七歳にさしかかる時期だったか
中州からは俺の姿は見えないだろうが、俺のいる位置の水が異様な流動を始まる。盛り上がり、俺を押し上げる様に流れ始めた
一瞬にして太い水の柱が立ち上る。柱の先には俺が、続々と魔法を使って柱を伸ばす。凸凹の岩壁を越え、ツルツルの壁がすぐに見えた。壁を登り続ける
川から離れれば離れる程、代理魔法による魔力の消費が激しくなる。そろそろ、普通に魔法を使うか?
〈切り替えを、あと五秒で魔法の方が効率良く飛べます〉
空気中の水素を代理魔法で増やせばいいって?
それはできない。代理魔法の弱点がそこだ。代理にするには俺が触れているという認識が必要で、目に見えない物は勿論。煙などの認知できても触れられないので代理魔法では作れないのだ
非常にめんどくさい
魔法に切り替えて暫く飛ぶ。ここから面白い物が見えてくる。谷底の太陽だ
光る岩壁。失明するのではないかと思われる程の発光に、最初はここで落ちた。今は黒いゴーグルのおかげで何とか眩しくない。これを過ぎるとまた面白い
今度は光の全くないエリアがある。全魔眼の見解では、ここから上の長い距離の光を取り込み。発光エリアに供給しているのではないか
ゆっくりとみてみたい気もするが、俺は前世の知識以上の事ではあまり力になれない。寧ろ異世界系の知識は少ない方だ
永遠に続くのではないかと思われる闇を進む。この闇の途中で、音を消し去るエリアがある。ここでは自分の操る水の音すら聞こえない。そこで方向感覚を失い。いつも落ちる
今日もそうだ。耳が聞こえなくなった瞬間。心が揺らいで魔法の精度が落ちる。半年かけて伸ばした魔力の量は、落ちてきた時の二倍になった。それでもやはり足りない
人は五感の感じない所に監禁されると、ほんの数日で精神が崩壊するとか言うけど多分ホントの事なんだろう。魔法を維持するのがツラくなり水の噴出をやめる
落ちる時は楽だ。耳が聞こえ、眩しい光を過ぎ、普通の視界に戻った頃。水を逆噴射して落下速度を減速させる
「今日も駄目かあ」
ここの生活は年配のエルフと過ごしている。だから、安心して全魔眼との会話が普通にできるのはこの空中だけしかない
〈やはり音の消えるエリアが厳しいですね。暗い上に音が無い。恐いですね〉
「全く持ってその通りだ」
〈一つ。ご提案が〉
「聞きましょう」
〈川を下ってみては?〉
ワアォ。その発想はなかった。帰ったら早速、アダフさんに聞いてみよう
「川を下る?」
十分に威力を殺し川に着水したあと、俺は急いでアダフさんの家、というかテントに向かった。中にはアダフさんが、俺と一緒に住んでいる老エルフと子供達と一緒にいた
話の最中だったが俺はアダフさんを連れ出して全魔眼の言っていた提案の話をする
「はい! やってみてもいいですか?」
「駄目です」
即答。なぜだい! 最も脱出確率が高いじゃないか。俺レベルの魔法では谷を登りきる事はできない。だったら川を下ってやるのだ。川は海に繋がる。家に帰るには少々遠回りだが、確実性が違う
そんな俺の考えを表情だけで読み取ったのか。アダフさんは続けて口を開く
「川下をいくと、洞窟がある。そこでは魔物が出るんだ」
「え?」
「しかも、強い。君の聞いた話では獅子と変わらない大きさのキメラだったか? それの倍はある毒蛇の魔物を始め、人間サイズのコウモリ型の魔物の群れ、毒蛇を越える巨体の岩の身体を持つドラゴン系の魔物。さらに洞窟は奥深くまであるから、抜ける事は不可能だ」
確かに、あのキメラが始めての戦いで、どれだけ強いかなんて俺には解らない。川下にある洞窟内の魔物はキメラ以上かも
〈しかし、なんでそんな事がーー〉
「なんでそんな事が解るんですか?」
〈おお、主。それ今、私が言おうと思ってたのに〉
お前は黙ってろ
アダフさんが大きな溜め息をつく
「前にも話しただろ? 俺もこの谷で過ごすのに嫌気がさして、出たくなった事があったんだよ」
ああ、壁を登ろうとした。とかの件かな
「だから知ってる。ここは脱出不可能の地なんだ。処刑の谷なんて言い得て妙だ。ここ落ちて死ななかった者は、老いて死ぬ刑をかせられるんだからね
だけどもういい。ここは平和だ。それでいいじゃないか」
「それでも俺はここを出て、やりたい事があります」
「友を殺したキメラを倒す事か?
君の夢は平和な地で、楽して生きていく事だといっていたが、ここが最も君の夢に地下いんじゃないのか? 君の持つ知識と、それを生み出す技術でここを済みやすくしたらいいじゃないか」
確かにこの土地は素晴らしい。争いという争いも川での行水をする順番くらいだ。食料問題も、元からいた老エルフの魔法で畑を耕し、川で魚を捕まえる
怪我らしい怪我もなく、俺は悠々自適な生活を送れているのかもしれない
「夢を叶えるのはここでもいいかもしれない。場所的にはここは本当に夢の地です。全ての種族が争うこと無く生活できるここは、平和そのものだ」
「だったらーー」
「だからこそ、あのキメラが生きているこの世界で、俺は本当に楽しく生きてはいけない」
「この、生意気な六歳児は」
おっと、確かに六歳児の言葉ではないかも
〈はっはっは。中身は中年なのに、中二みたいな台詞ですね〉
この右目ェ。抉ろっかな……
〈じょ! 冗談ですよ主! 冗談。カックィイ〜! 一生ついていきます〉
いや、本当。お前は俺の目か? 別の人間がくっついてるとしか感じなくなってきたわ
全魔眼のウザったい絡みをさばいていると、アダフさんはとてつもなく深い溜め息をついた。そして諦めたかのように続ける
「わかったわかった。キリル。一度俺と洞窟に行ってみよう。危険だと思ったらすぐに戻るからね」
「おお! 了解です」
次の日。俺はアダフさんと一緒に洞窟に向かう。川を下って一日の所にあるらしい
次の話は、六年後!
って思った時期が俺にもありました。かいてたら自然とこうなってしまった。アダフが勝手に喋るんだもの
2017年5月10日 誤字脱字修正 内容に大きな変更はありませんが、要所要所で谷底の生活感を出してみました。生活感出てますか?




