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Q:キリル。魔物の弱点って知ってる? A:首とか刎ねたらいいじゃないですか


 2903文字


 洞窟が見える位置で腰を下ろす。魔法は使えないが、壁の岩肌を歩いて移動していた為だ

 水の中に腰を下ろした訳ではない。岩の上だ。水中に座るのは、必要最低限にしたい。飛ぶ時とか飛ぶ時以外は勘弁


 俺は自分とかわらない大きさのリュックサックを背負っている。荷物の中は基本的に食料だ。三日分が入っていた。一日分消費して、後二日分残っている

 アダフさんも俺と同じ大きさのリュックを背負って内容物も似た様なものだ。彼の一つ違う所がある。腰に古そうな鉄剣をつり下げている所だ。あんな平和な所で武器があったとは驚きだが、話を聞くと納得できるものだった

 過去の遺産。落とされた人達が武器を持ってた? 違う違う。この辺りでも戦闘があったとき、死体と一緒に落ちてきたのだ


 中が暗くて見えないが、確かに洞窟はある。入ってもいないのに、中から俺の危機感知に引っかかる生物が何匹もいた。マジかよ。全魔眼の千里眼と、全魔眼『が』もつ暗視スキルを用い洞窟の中をのぞく

 笑える話でしょう? 俺は全魔眼というスキルしか持たないのに、なんでスキルがスキルを持っているのか

 因みに今の俺の熟練度では魔眼系のスキルを使いこなせない。千里眼なんていってるが、六百メートルが精々だ。エルフの視力は三百メートル先がハッキリクッキリ見えるので、倍程遠くが見える事になる


 アダフさんの話に出てきた魔物も見える。確かに俺の中の脅威度は高い

 しかし、それ以上に高い脅威を奥から感じた。アダフさんは洞窟の入り口で引き返したのか。深いな。洞窟自体が深すぎる。今の俺では到底通り抜けられない


「キリル。そろそろ入るぞ」

「はい」


 全魔眼どう思う? 通り抜けられる深さか?


〈主の持つハイエルフの危機感知能力は長生きする為の物です。それが察知している危険に飛び込むのですから、今の段階では自殺もいい所ですね〉


 段階ね。じゃあ、どれくらい努力したら、洞窟通り抜けられる?


〈十年は掛かるかと〉


 う、う〜ん。一生出れない牢獄の様な谷底から出るのに十年。速いといえば速いのか? 出口が人の通れるほどの大きさか。ってのも問題がけど

 そんな事を考えてるうちに洞窟の目の前についてしまった。近くでみると不気味。トンネルの様に半円状のアーチを描いた入り口は、ただただデカいの一言に尽きる

 川は洞窟の入り口で小さくなり、川の太さ:左の足場:右の足場=1:1:1の割合になっている


「魔物達は外には出て来ない。外にも攻撃を仕掛けて来ない。危なくなったあこの入り口を目指すんだ。いいね?」

「了解です」


 何かを守ってる? そんな印象を受ける


〈主。ご報告が〉


 聞きましょう


〈洞窟内を鑑定した結果。壁と同じ効果を確認できました。川の真ん中にいても、おそらくは魔法を使えないでしょう〉


 この目ん玉は勝手に俺の魔力を使って絶望させてくれました。まあ、予想は出来てたんだけどさ

 となってくるとぉ、魔法ではなく純粋な戦闘能力だけでこの洞窟を攻略しなきゃいけないのか。この事を含めて、どんくらいかかると思う?


〈主は最強の獣人。龍族の血も含まれていますので、二年くらいは伸びるかと〉


 きっつい。魔法を来別けたい俺が、先に格闘の才能を極める事になりそうだぞ


〈あ、魔法は無理でもスキルなら使えそうですね。知覚強化スキルを使えます〉


 なんだいそりゃ?


〈知覚の強化を図り、見ている物の動きを遅くするスキルです。現在は六十倍が限界です〉


 ほう! それはなんとも凄そうなスキルだ。じゃあ、魔物の姿が確認できたら発動する様にしといてくれ


〈了解いたしました〉

「キリル。もう何時魔物が出てきてもおかしくない。警戒を怠るなよ」

「了解です」


 勿論そのつもりだ。全魔眼はああ言ったが、俺の危機感知が反応しなかったキメラだっている。俺自身初の魔物との戦闘なのだから

 キメラとの遭遇は戦闘とは言えない。一方的な蹂躙だった。どちらがされる側かは言うまでもない


 洞窟も暫く進むと分かれ道が出来ていく。分かれ道ができればできる程、川の数も増えていく


〈問題ありません。私(わたくし)が全部覚えます〉


 覚えられるものなの?


〈完全記憶能力とまではいきませんが、見たものは大体忘れません〉


 旧ニューヨークに住む普通の少年の事を思い出すな。彼の両目は凄まじいものだ


〈ああ、主の記憶にあるあの目ですか。確かにアレは私よりも高性能でしょうね〉


 なんでこの全魔眼が俺の前世の知識を持ってるのか知らないが、昔の話ができるというのはいいものだ

 全魔眼とのくだらない会話をしていると、俺の危機感知に反応がある。俺たちの背後からだ


「背後ですアダフさん!」

「ッ! 了解だ」


 後ろを振り返る。襲ってきたのは人間大のコウモリ魔物。聞いてた話では群れで行動するらしいが、今は一匹しかいない。視界に捕らえた瞬間、コウモリの魔物の動きが遅く見える

 おお!? これが知覚強化スキルか。確かにこれは凄い。相手が遅くて仕方がないぞ


 ……って! 俺の動きも遅いじゃないか!


〈主〜。身体弱すぎますよ。もっと速く動けないんですか?〉


 無茶いうな! なんだこのスキルは。欠陥品も欠陥品じゃないか。俺自身も遅くなっちゃ等倍速と何も変わらんわ!

 今思ったんだけど、見えてるものを処理してる俺の脳への負担とか大丈夫なのか? 凄く不安なんだけど


〈ふっ、主。私(わたくし)を馬鹿にしているのですか? 視覚が関わるスキルのデメリットなんて、無効できるに決まってるじゃないですか!〉


 凄いけど腹立つううううう!

 なんでか、俺がこの遅くなった世界で動けないのがいけない様な気がしてきた


 鈍いコウモリの動きに合わせて、鈍い俺が翼を抑え、軽く飛んで膝蹴りをくらわせる。頭に当たった時、コウモリの頸椎がゆっくり折れていく感覚を味わう事になった

 確かにこのスキルは凄いけど、この世界の中で動ける様になるまでこの感覚を味わわなきゃいけないと思うと億劫です


 コウモリが地面に落ちて何度も痙攣している。辺りを警戒しながらコウモリを見ていたが、結構死なないな。首折れてるのに、感動する程高い生命力だことで


「凄い。まさか戦闘もできるとは」


 まあ、父の授業は何もユリアーナにリンチされるだけじゃない。ちゃんと教えてくれる時もある。時も、あるですよ?


「でも一つ」


 アダフさんが鉄剣を抜いて、コウモリの胸に突き刺す。一瞬大きくもがくと、今度は完全に動かなくなった

 あれ? あんなに長く生き残ったのに


「確かに頭を破壊すれば死ぬが、即死はしない。一時間は生きている。例え目が見えなくなっても暴れるからね。確実に胸にある魔核を狙いなさい。種類によっては胸にない事もあるから、そこは気をつけて」

「おお、了解です」

「じゃあ、もう少し進もうか」

「いえ、今日はもう帰りましょう」


 ああ、もういい。課題が見えてきただけで十分だ。この課題をクリアしてからまた着て、また課題があったらもう一度帰り、クリア。これを繰り返す

 既に年単位なのは解っているんだ。焦る必要はない


「え? もういいの」

「はい。また着ます」


 不思議そうな顔をして来た道を戻る

 アダフさん。この人は優しい人な上に、強い。俺がコウモリに気付いて声をかけた瞬間、コウモリよりも危機感知に大きく反応した。教わる事は多そうだ





 数話前に書いた最速眼を全魔眼のスキルにしよう。そうすればまた一つ全魔眼が強くなる


 作業用BGM・玉置浩二様(たまきこうじさま)。田園(でんえん)

 最高すぐる! すぎるんじゃない。すぐるんだ


 2017年5月11日 誤字脱字修正。ほとんど見つけられなかった

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