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Q:主様。このアイテムの名前はなんて言うのでしょう? A:え〜と、煙りボール


 4406文字


「わふぁ……これは失礼しました」


 オシリス少年が欠伸をして謝罪する今日この頃、本日は開戦三日目の昼

 退屈するのも解る。ボクだって欠伸したい。初日のちっさい戦闘以外、向こうは一切の攻撃をして来なくなった。背後へ回る部隊の影はあるものの、ごく少数。上陸地点の確認なのか降りる素振りすら無く偵察隊は帰って行く


 正直言ってストレスが溜まる。壁の隙間から見える船でなにが行われているというのか。アレか? ボク達の疲弊待ちか?

 こちとらルールの性で攻撃できないから向こうはゆったりと待ってるというのか? 腹立つー! ボクは一体何日筋トレを我慢すれば良いんだ


「ソフィー。ものそい暇なんだが」

「ウワァ〜オ〜。指揮官あるまじき台詞で私驚いちゃった〜」


 なんて言うヤツは仰向けでクッキーをむさぼっている


「よし少年。ソフィーを思い切り蹴っ飛ばしなさい。スキルを使うかは君に任せる。これは魔王命令だ」

「了解致しました。チェストオオオオ!」

「『条件結界』! 主様以下の攻撃を一度きり無効化」


 ボクが言うのもなんだが、その制限結構厳しくね?

 鈍い音のしたあと少年は右足を抑えて踞った。うん、知ってたよだからボクは蹴らなかったんだ

 若干胸がスカッとしたのと、大半の罪悪感が残るな。もう二度とやらん


 少年に謝ろうとした時、作戦本部でも最も広い。現在僕たちの居る部屋の戸が壊れんばかりの音を立てながら開かれた

 入ってきたのは配達人の一人だった。臨時で来てくれてる子か。確か、海を偵察している部隊に置いておいた子だったかな。それにしても、ついに動きがあったのか


「失礼します! はあはあ、ご報告が!」

「どうしたの〜?」

「十隻の船より後方、超大型の船を三隻確認致しました。進行速度から今より二日後に到着すると思われます」


 遂に着たか。大型なのかは解らないけど、三隻ならばヴァーニア様と兄貴の写真の船が思い当たる。しかし、たった五日の差? 早すぎるな。初日で手に入れられたであろうこの街の地形なんて微々たるもの。陣形を知りたかったんじゃない?


「その超大型ってのはどのくらい人が入りそうなの〜?」


 ボクの思考とは裏腹にソフィーはそんな質問を返す。配達人の子は暫く考えた後こう言った


「千人程でしょうか」

「え?」「ん〜?」


 超大型なのに千人?


「超大型と言いましても、人を乗せる為に作られている様には見えません。アレは、そう。兵器です巨大な大砲です。五十メートルは下らない。六十、いや、七十メートルはあります」

「七十メートル級の大砲? そんなの海に浮かせてるのか? 無理だろ」

「それを乗せる船は更に二、三倍大きいのです。大砲以外にも何かしらの機材が乗っていますし」


「ソフィー。飛ぶのか、それで?」

「……普通だったら高さがあり過ぎて飛ぶとは思えない。下手すりゃ自爆だと思う」


 キャラ作りも忘れてソフィーは考え込んでしまった。その後直ぐ、開けっ放しになった扉からもう一人の配達人が入ってきた。先ほどの配達人と同じことを言って僕たちの言葉を待つ

 いつもならソフィーが聞く所だがボクが聞くしかないな。完全に気付いちゃいないし


「どうした」

「はい。十隻の内三隻が隊列から離れ、迂回し始めています。二隻は西へ、もう一隻は東へ行くと思われます」


 裏取りか。まさかこんなに大々的に移動するとは思わなかった。初日に攻めてきた様な船で、夜にでも移動するものだと思ってた

 三席分だと約六千人。背面の守りに一万の人数をかけているから大丈夫か? でも、もしも後ろへ勇者、もしくは盗賊頭領が行ってたら。一万じゃ対処し切れないのでは?


 生憎と正面には一万四千、後続の三千と足しても二万には届かない。一万を更に後ろに行かせるか、それともマールかレティのどちらかを後ろに下げて、勇者が来たらボクを呼ばせる方が良いか? どちらかなら勇者と言えど倒すのには相当な時間を必要とする

 防御力ならレティか。時間稼ぎならばマールか。ここは安全策。間を取ろう。すかさずテーブルの上にある紙にペンを走らせる。最後に印を押す。誰に届けさせるか


「ノア。支給マールにこの手紙を届けてくれ」


 名前を呼びながら長方形の手紙をボクの左側へと運ぶ。その瞬間にノアちゃんが片膝をつき両手で手紙を受け取った


「仰せのままに」

「急ぎで頼むよ」

「御意」


 気配と姿が消える。姿を消すスキルと獣人の肉体は中々の脅威だな。そろそろボクだけの判断だけで人を動かすのを控えたいな。ソフィーは、まだ無理か


「魔王様。後続へ隊を向かわせるならば私も加わりましょうか?」

「いや、それはない。少年はマールの居た場所の穴埋めの、更に穴埋めの為に使わせてもらう。一応遊撃という事には成るけど」

「承知致しました」


 たしかに少年の力は魔王クラス。しかし、その実力を正しく把握できていない以上向かわせるべきではない。マールならば蓄積経験値開放を調節できるし長く戦える。でも硬さだったらやっぱりレティだったか? もし後ろに勇者がきたら、勇者がボクやマール並みの攻撃速度だったらレティは保たないしな


「因みに少年。全開全力で戦うとなったらどのくらい動いてられる?」

「……二十分は無理です」

「ありがとう」


 短いな。という事は、少年のスキルが使用回数の決まっているものだ。やっぱりそこまで長く扱える代物じゃないのか

 まあ、童話の元と成った太古の力だ。それ相応のリスクもあるだろうし、上手く共存してる方か


 大体今の質問を投げかけると、魔力で戦うヤツとか、スキルに制限の無いヤツは「魔力が切れるまで」とかいうんだよな。兄貴はそのタイプだ。多分キリルもそっち派


「だめだ。七十メートルの大砲がちゃんと飛ぶイメージができない。もう、勇者サンゴの武器何じゃないの?」

「再稼働したと思ったら思考停止かよ」

「少なくとも大砲としての機能は考えられないね。でも、飛んだときの事を考えて、六十メートルの結界を十倍に伸ばしておく〜? 徹夜してきます〜」


「待ってくれ。先遣隊も動いた。大々的に裏を取ろうとしている」

「主様の選択は間違えないよ〜。聞いてたけど〜悪くない〜。良い判断ができる様になってきたね〜」

「そうか?」


 安心できる言葉をもらえてよかった

 これは個人的な考えだが、恐らく今日も明日も何かが起こる事は無いだろう。準備だ。完全な準備

 今までの特攻してくる雑魚じゃない。反撃しかできないボクたちを狩る動きだ。後手はキツい。クソ! ヴァーニア様はわざとあんなルールを付けてるのか?


「でも〜、そうだね〜。人数が減った分の隊列を一緒に考えよ〜」

「それは助かる。ボク達の人数が四万から下がった場合も考えてあるのか?」

「まさか〜。だから考えるんだよ〜」


 納得。さて、いつまでも入ってきた二人の配達人を待機させるのも悪いので元いた部隊へ帰ってもらった。報告を受けた事も知らせてくれた隊に伝えておきたいしね


 暫く二人で作戦会議をした。オシリス少年は部屋には居るものの黙っている。空気を読んでいてくれているのだろう。定期的に配達人が来て西へ東へと向かって行った船の動向を知らせてくれた。予想通り上陸する気配がないとの事だ

 そうしている事早数時間。暗くなってきた頃に部屋にマールがやってきた。いつもより剣が三本ほど多い


「失礼しますっと」

「あれ、どうした?」

「五千人も移動させるのには時間がかかるから、空いた時間に顔を見せにきたんだ」


 そう言ったマールはボクの隣に腰かけた。なにを勘違いしたのか少年に紅茶を頼む。紹介は一応したのだが、多分マールの事だから覚えていなかったのだろう

 そして頼まれた少年も少年で、笑顔で紅茶を入れに行った。それでも良いのなら別に良いんだけどさ


「そっか。悪いけど、もし勇者と盗賊が全力で足止め頼むよ。ボクが行くまでのね」

「オレが代わりに倒しとくさ」

「結構キツいぞ。一人はボク並み、一人は第二魔王並みに厄介だと思った方が良い」


「第二魔王並みの方がヤバい気がするぞ」

「確かに〜、スキルを盗めるというのであれば〜、盗賊の方が強いそうなのにね〜。人間最強と言えば勇者サンゴ〜。やっぱり制限があるのかな〜?」


 マールはなんの話じゃと言わんばかりに顔を顰める。彼女はあまり相手のスキル気にしないからなあ

 「お待たせしました」とオシリス少年が戻ってきてボクとソフィー、マールの前に三つの受け皿とティーカップを置いていく。レティほどではないがそれなりに慣れた動きだった

 最後に少年は自分の分を注ぎ立ったまま飲んだ


「どうやら上手く淹れられたようです」


 満足げな表情を見てボクも一口。もの凄く渋かった。何も言わず直ぐさま受け皿に戻す。ボクに続きソフィーも同じ様にカップを降ろす

 まあ、その事は触れなくても良い。誰にでもできない事はある


 そう言えば忘れる所だった。マールには言わなきゃ行けない事があるんだ。解る様に説明しなきゃな……なんでコイツなんでもない様な顔でこの渋い紅茶飲めんの?

 ボクの視線に気付いてマールがカップを受け皿に戻した。なんだと今にも言わんばかりの表情で言葉を待っている


「んん! マール。前情報の敵と、過程の話で導きだした敵だが。正直、ボクは勇者を優先したいと思う」

「妥当な考えだな。それで?」

「一応考えたんだが。ソフィー」


 名前を呼ばれてソフィーが黄色と紫色の玉を二つ取り出し机の上に置いた。マールはそれを直に手に取って顔の近くまで持っていく。彼女の手のひらサイズに会わせて作ってみたが、なるほど少し小さかったかな


「主様よ。これはなんだい?」

「空に向かって投げると弾と同じ色の煙りを出す」

「ほお、それで?」


「うんうん。黄色い方は勇者が居た時投げるんだ。紫色は盗賊。煙りで誰が来たか解る様になってるんだ」

「ほうほう。そしたら?」

「……そしたら勇者だった場合ボクが行くから。盗賊だったら頑張れ」


 万事解決と言った顔をしたので理解できたようだ。一応レティを始めとした各部隊の人数分作りたかったのだが、塗料が足りなくあえなく三人分で断念。目立つ塗料は少しコストがかかり過ぎて行かんな

 まあ、レティは確定として、もう一組は


「そしたら少年も持っておくと良い」

「私ですか?」


 少年の前に一組の玉を置いておく。立ったまま紅茶を啜っていた少年はジッと玉を見つめていた。そこまで警戒するほどのものだろうか?

 いかにも断りそうな雰囲気だな。どれ、ここは少年でなくては成らない理由でも考えてみるか。ん〜そうだなあ


「この玉がよく見える様にする為にはかなり高くまで投げないと行けないんだ

 一応各部隊長クラスならば問題ないのだが、遊撃の君の方が勇者発見の確率は高いだろうからね」

「なるほど、そう言う事でしたら」


 そう言った少年は笑顔で玉を胸ポケットにしまった。同じ様にマールも胸ポケットに入れる


「さて、じゃあオレはそろそろ行く事にしますかね」

「じゃあ〜。私も働きますか〜」

「悪いな二人とも苦労をかける」


 全く問題ないと言った顔で部屋を出て行った





 久々に書くと中々疲れるとなあ

 とまあ、書きたい所だったからどう書くか悩むのが楽しいというのもあるんですがねえHAHAHA


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