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Q:さっさと全軍でせめて凝ればこんなにも考える必要が無いのになぜだい? A:一兵卒の考えは〜、もうそろそろ捨ててください〜


 4621文字


 結局の所、八人以上の人間を転移させた。ボクの従者は随分と主思いで汗が止まらないよ

 さて、そんな事はさておき。汗を拭きながら捕まえた人間の観察をする。どうやら誰一人として自害なんて馬鹿な真似はしないでいてくれたようだ。ボクとしてはありがたいが、そう言う役目を与えられた者としてはどうだろう? こういう時は普通、魔族側からの拷問を想定して命を捨てられる様な人材を選ぶべきではなかろうか

 解らない事が、ボクの考えが不安だったら、直に彼女に聞くべきだ。早速今思った事を聞いてみる


「ん〜。私も同じ事考えてたよ〜。どんなプロでも万が一を考えておくべきだよね〜。逃げられないのならば情報だけは渡さないよう自害用の毒とか、舌を噛み切る事を考えてなきゃね〜」

「やっぱりソフィーも同じ考えか」

「私思う所があるから〜、すこし魔法陣に手を加えるね〜。急ぎでやるから〜、説明はあとでするよ〜」


 有無を言わさずというのはまさにこの事だな。一番最初に捕まえた馬鹿女の所に行ってしまった。それならばしかたがない。ボクも観察を続けるか

 次は転移させた全員が確実に触れた左手の甲に注目してみよう。ボクはこれでも魔族一の五感の優れた一族出身。エルフ程でないにしろ聴覚や視覚は存外優れている。特に触覚は、最早次元が違う。次の段階と言って良い程別物となっているのだ

 それを可能にしているのはこの角。角のみが異常な程の触覚を有しており。眼前の敵が少しでも動くようならば、微細な魔力の変化や風の流れを察知する事ができる


 近ければ近い程、違和感を感じやすくなるのだが……特におかしな所は感じる事ができない。解るのはつい先ほど衝突した人間の部隊とウチの兵が戦いを始めた喧騒だけ

 これはあれか。コイツらが付けていた手甲とかに付与された物なのかな

 しかし、転移スキルを付加できるなんて事は聞いた事がない。つーかできない。使ってるボクが言うんだから間違いないね


 であれば考えられるのは一つ。ボクと同じ座標だ。はいだけど大問題。人よりも多くの魔力を持つ魔族の、魔王クラスのボクが十回以内の使用回数なのにも関わらず人がそんなに転移させられるでしょうか?

 昼間の分を鑑みれば、奴さんは計十八回使うつもりだったという事


「考えられないわぁ」

「なにがです?」


 不意の言葉に返事が返ってきた。ソフィーは結界の条件を多少変更すると言って現在鼻歌交じりに結界を弄くっている

 たった今目を覚ましたかの様に白髪の少年が目を擦りながら、作戦本部と書いて別荘と読む建物から出てきた


 身長はキリルの頭一つ分大きなサイズで、細いイメージのあるキリルとは対照的にゴツい。服はマールに似ている。キリルが言うには学ラン? と言うらしいが緑ではなく目の前の少年は白だ。もの凄く汚れが気になりそうだよね

 彼の名前は、……確かオシリス・ラビリス

 十七歳にして次期魔王候補。若き天才だ


 キリルが回復魔法の天才であるならば、オシリスはスキルを扱う天才

 スキルは神の恩恵と言われているが、彼のは少し違う。半分を悪魔から半分を天使から与えられた物だと言われている

 実際見たこと無いから全部人伝だけど

 この少年も一応はヴァーニア様から送ってもらった援軍だ。本来の援軍である兄貴、第六魔王にしては珍しい遅刻か? 元より要らない援軍だから別に気にしちゃいないんだけどね


「起こしてしまったか。いやなに、ボクよりも優れた転移能力者は一人しか思いつかないという話だよ」

「はい?」

「ふむ、もしかしたら人間側に『時』の拒絶者以外でボクよりも凄い転移能力者がいるかもしれないという事さ。正直まだ未確定だけど」


「魔王様は二位三位を争う程の転移能力者で有らせられるはずです。相手方にそれ以上の方が居た場合、厳しい戦いになるでしょうね」

「さも他人事の様に良く言うね。……あ、少しばかり働いてみる? 昼間は待機で暇だったでしょ?」


 少年がチラリと眼下の戦場を見る。その後小さく微笑むとボクに向き直った


「では何をすれば良いのでしょう? 魔王様の言い方的にあの戦場に加われと?」

「いや、今から渡す地図に書かれてる所に行って。左手用の手甲を拾ってきて欲しいんだ」


 「手甲?」小さく首を傾げた少年を待機させ、予備の地図に八つのマークを付けて渡す。地図を見て首の角度が増した


「この場所にこの捕虜の着けてた手甲が落ちてるはずだ。もしかしたらもう手遅れかもしれないけど念のために確認してきて」

「なるほど、了解です。私も念には念を入れるタイプなので良く理解できます。しかし、魔王様が転移させた方が早いのでは?」

「魔力切れ。魔力を使うスキルは大量の魔力を食うと相場が決まってるの」


「ほう、そう言うものなんですか。知りませんでした。では納得もしたので早速行ってくるとしましょう

 『清浄の右足』」


 オシリスの宣言により腰から下の右足全てが、光を放つ細やかな彫刻のある足甲に包まれた。ちょっと眩しく熱も感じる

 こっちは天使から与えられた方かな。なんか神々しいし


「魔王様。どうか私のスキルを満足いくまでご覧ください」

「あ、わかった?」

「はい。興味津津って感じでしたので」


 噂話には良くも悪くも尾ひれがつく物だからね。百聞は一見に如かず。見てみたいというのはイケナイ事でしょうか?


清浄地せいじょうち天空花園てんくうかえん


 そう呟いた少年は、まさに空をかける。星明かり以外の光が夜空を飾った。少しばかり腹立たしいのはなぜだろう?

 おや? 空をかける度に若干魔力を感じるな。スキルって体にして隠しているのか。確かにあれならば殆どのヤツは解らないだろうな。魔力なんてのは馬鹿みたいに使わない限り見えないし。体内の魔力を察知する方法は沢山あるのに、体外に出た魔力はどうして指で数える程しかないのでしょう


 因みにその一つが種族で、獣人とボクの一族は特に何もしなくても解る。そう言ったスキルとかもあるね。条件結界でそう言う事もできるとか聞いた事ある。あとは、魔眼とか

 言ってしまえば何かを隠そうとしている場合しか使えないから、小手先でない。愚直に突き進んでくる敵とかにはあんまり意味をなさないのだけれどね


 パッシブのボクはともかく。魔眼だったらハズレ感が否めない事間違い無しだ。まあ、片目タイプの魔眼は全部外れなんだけどさ

 ふと、視界に近づいてくるソフィーを捉えた


「終わったのかい?」

「ん〜、一応は〜。オシリス君に手甲の回収を頼んだんだね〜。丁度頼もうと思ってたんだ〜」

「そりゃよかった。それで? 結界になにしてたんだ?」


「気休め程度の対策であって欲しいんだけどね〜。スキルを盗られない様にしたんだよ〜」

「なに? スキルを盗られない様にした? なに言ってるのか解らないんだけど」

「勇者サンゴばかりに目を向けていたけど〜、もしかしたらそれと同等にヤバい相手がいるかもしれないって事〜」


「勇者と同等。賢者か? いや、賢者にそんな力があるとは聞いたこと無い。盗むと言ったら、盗賊か!」

「そう〜、盗賊頭領ベガオウ〜。詳細は一切解ってないけど〜。スキルを盗む事ができるらしいよ〜。スキルを盗むという特異性からして〜、幾つもの条件が必要だとは思うけど〜。一応ね〜

 ……盗めて自在に使えるとしたらあり得ない性能、そんなのが無条件で使える訳がない。盗む条件があるとすれば『接触』は確実。噂で聞いたスキルを付与できるというのはこの捕虜を見ると否定し切れないのが現状。もしも付与分が遠距離でも回収可能だったらヤバすぎる。今の考察だって全部が全部考察でしかないのが痛い所だ。そもそも盗む条件なら接触以外ならなにがある? スキル名? スキルのレア度? 接触時間? まさに今ベガオウがいないという過程は駄目だ。居ると言う、更には指揮を取る者である可能性を考えろ! 考えうる最悪を想定しなければ、そこから導きだせる———」


 ああ、キャラ作りの口調がはがれて考察モードになってしまった。この時なにを話掛けても無駄だし放っておこう

 そういえば、少年のスキル見たさにお願いしたんだから見ておかなきゃ。高台にあるこの作戦本部から街を見下ろす。右下半身が光に包まれている少年は、それはそれは目立っていた。遠過ぎて豆粒みたいに小さいのでほとんど見えないが、光が微かにぶれる度人が吹き飛んでいる所を見ると足技なのだろうか


 む? なんか空気が変わった? なんかベタつくと言うか、嫌な感じだ。……なるほど、アレが『不浄の左足』ってヤツか

 ハッキリとは見えないけど炎を纏っているのかな


 かつて破壊の神によって生み出された悪魔の一柱に、不浄之悪魔王というのが居た。悪魔の中でも一番最後まで生き残ったその者は死ずる時も足掻き。己の力を二つに別け、高貴なる魂の持ち主を呪ったとされる

 呪われた者は不浄之悪魔王の力に溺れ、心を穢され、肉は腐り落ちたとか

 高貴な魂の持ち主という事もあり。見かねた神が、清浄守護天使を産み出し呪われた者を守ったとされる


 有名な童話の話だと思ってたんだけど、あの少年を見ると嘘じゃない。昔本当にあった事の証拠みたいなものだ

 童話の事を思いだしながら見ていたら、いつの間にやら頼んだ手甲の回収は済んだようだ。光が近づいてくるので直に解った


 近づくに連れて少年の足を纏っている黒い炎もしっかりを確認できる様になった。どうやら本物の炎ではなく、こちらも右側と同じ様に足甲らしい。禍々しい炎をイメージした様な装飾がなされている


「お待たせしました。……『結界』の拒絶者様はどうしたんですか?」


 降り立った少年は、両足のスキルを解除する。直に息継ぎをしているのかも解らない程の早さでブツブツ呟くソフィーを見つめた


「そっとしておいてくれ。生理現象だ」

「アレがですか!? 息を吸うという生物の基本動作すら無視しているのですが」

「そうだよ。それよりも、手甲。あったんだ」


 ボクの言葉に少年は背負った八つの手甲を差し出してくる。一つひとつチェックしてみたものの、まったくと言っていい程何も感じられなかった。薄っぺらい安物の手甲

 ボクの『始点座標スタート』も魔力を使わないし、発見は困難なのかな? ん〜、微妙な結果に終わった


「ありがとう少年助かったよ」

「いえいえ、お易い御用です」

「他にも色々お願いするかもしれないから今の所は休んでくれ。ああ、その前に夜襲の敵は強かったかい?」


「いえ、たいした事はありません。数も少ないですし、おそらくそので捕まっている方々に指せようとした事自体が目的なのでしょう。夜襲は囮でしかないかと」

「ありがとう。急な仕事ご苦労様」

「いえ、お休みなさい」


 返事をして少年が作戦本部に消えて行くのを眺める

 小さな溜め息が出た


「溜め息は幸せが逃げるらしいよ〜」

「あ、キャラ作ってきた」

「その話はやめような。良い子だから」


 目が、目がガチです。口調も百八十年以上前に戻りました


「結局向こうさんがやりたい事ってなんなんだ?」

「それはね〜。私が考えた幾つもの陣形を街の形から導きだそうとしてるんだよ〜。先遣隊の役目はそう言うもの〜。正しい戦略の仕方だね〜。あとは時の運と〜、兵士の強さでしょ〜

 あ〜、兵士と言えば〜。この捕虜達の見張りをお願いしないと〜」


 忘れていたと笑いながらソフィーは本部へと戻って行った

 ボクも戻るかな。少年の話を信じるならばこの戦場は平気だ


「あ〜あ〜。指示を出すよりも、指示を出されて動いた方が楽だなあ」


 独り言への返事は無く喧騒の中へと消えて行った





 お久しぶりです皆さん。半年程ですが覚えている方はおいででしょうか?

 私自体がストーリー忘れかけなので覚えている方が居ない前提でお話しします


 半年休むって言ったんだから

 『半年更新されていません。今後更新されない可能性があります』って付けなくても良いじゃない!


 別に物語覚えてなくてもわかる後書きでした


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