Q:開戦? A:情報の獲得を目的とした作戦で我輩の右に出るものなし!
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単眼鏡で覗く先には港町が見えた。見えると言っても三十メートル級の巨壁、それも三枚に守られた街の様子などほとんど見れるはずもないのだが
そんな事は小さな事だというように、甲板の上で一人の男がニタニタと嫌な笑みを浮べて隙間から微かに見える魔族達の姿を見ていた
不気味に笑う彼は、過去の戦争での知識を頭に詰め込んでいたので知っていた
三十メートルの壁はほとんど意味がない。正直ここからでも特大の攻撃魔法で壊れてしまう
では、なにを知っていたのか
それは壁の外側に張られた結界。高さにして壁の倍はあろう六十メートルの強固な結界だ
スペシャルスキル。『条件結界』
結界になにを守らせるかを条件付け、その条件が軽ければ軽いほど強固に。魔力を込めれば込めるほど強固に
結界系スキルの最上位に位置する
同時に幾つの結界を張れるのか。最も軽い条件で魔力をほとんど込めなければどれだけの強度があるのか。解っていない事は山ほどあるが
それでも今張られている結界の事は解る
人は通り抜けられるが、大規模な魔法と強力な遠距離スキルのみを打ち消す。どうにもスキルの条件に不釣り合いなのだが、それだけの魔力を込めているという事。男はそう判断した
「ベガオウ様。準備が整いました」
ベガオウと呼ばれた男の後ろに甲冑を着込んだ一人の兵士が報告をする
偉そうに後ろを振り返り、片膝を着いて頭を垂れる兵士。その後ろに並ぶ千人に男は言い渡す
「うし、んじゃあ。作戦開始だ。必ず一班一人は帰ってくるよう働けよ
我ら先遣隊の仕事は、後の本隊にできる限りの情報を残す事だからな!」
士気を高める言葉など必要ない。彼らは決死隊。ほぼ全員が奴隷、内の十人が正規兵。帰ってくるよう言い渡したのはその正規兵だけ
人の命を何とも思わない様な作戦だが、必要悪なのだ
戦争とは人の命の上に成り立つ。最も愚かな行為。それを理解し、考えて動く事のできるベガオウは比較的まだマシなのかもしれない
因みにコースタインには、どの国も死刑制度が無い。そう言った死刑を通告される者は皆全て戦場へと送り出され、こう言った礎となるのだ
「さて、他の王国様方の指揮官はマシなヤツが居るかな」
またもニタニタとした笑みを浮べて、彼は左右の戦艦を見た後。肉眼でカルタリンゴーンを見ながら甲板に寝転がった
日差しの強い海の上で彼はビキニの海パンだけを身につけている
〜 〜 〜
ラサンの街を一望できる小高い位置にボクとソフィーはいた。戦場を確認する為にソフィーがこの場所を指定したのだ。まあ、防御壁がある限りこの街のどこにも遠距離攻撃は通用しない
「おお〜?」
魔王でもあるボクや戦争の司令塔であるソフィーが居る街の奥側からでも人間の戦艦が見えてから約三時間
向こうさんが大陸に入ってくるか、魔法で攻撃して来ない限りこっちは手を出せない。本当にこういう所だけはヴァーニア様の考えが解らん
言うてヴァーニア様の考えが解った試しがボクには無いけどな
さて、三時間経ってやっと動きがあったようで。ソフィーが首を九十度側屈させて戦艦の様子を見ている。知らなかった。長い付き合いだが、彼女の首はここまで曲がるのか
冗談はさておき。ボクも戦艦の様子を見てみる
ふむ、一隻の戦艦から十隻の舟が出されているな。二百人くらい乗れそうな船に、一体何人乗っているのだろうか?
水流操作系のスキル持ちでも居るのか船はもの凄い勢いで迫ってくる。あの速度を維持して突っ込んできたら、こっちの陣営にも被害が出てしまうかもな
次があれば、少し下げさせておこうか? まあ、ソフィーに要相談だな
「遂に動き始めたか。ソフィーは随分と不思議そうだけど、アレがどうかした?」
「ん〜。やっぱり先遣隊だったな〜って思ったの〜」
「ああ、その事か。ヴァーニア様と第六魔王から届いた絵に乗ってる船が無いもんな。しかし……」
ボクの主や、兄貴から届いた手紙に同封されていた絵に描かれていた船は影も形もない。一枚絵でその船を様々な角度から見た絵が入っていたのだが大きさはわからない
我が国には大規模な船が無いからサッパリだが。今大陸に向かってくる船を操縦するのにだって、アレだけ大きければ百人単位は必要だろう
それを二百で乗れそうな船を十隻も投じてきた。まあ、マックスまで乗っていないとしても半分から四分の一くらいかな?
それが十隻で、千人前後? 三万中の千人。ボクは上陸して不利な形で戦った事が無いから解らない。それでも、千人という数で攻めさせたりは絶対にさせない
という事はあの中には死んでもいい奴しか居ないのか。貴重な戦力だというのに
それとも、時間稼ぎか
いやいや、千人そこらで時間稼ぎだってできるとは思えない
流石にウチの五万の勢力を海岸線に並べている訳ではないが、突破もされないように一万は控えてる。あそこにはマールだっている
「先遣隊なのは理解できるけど、なにがしたいんだろうね」
「簡単ですよ〜。やっこさんはこっちの陣営を多少なりとも持ち帰りたいんです
多分ですけど、あの中の何人かは長距離を高速で移動できるスキルがあるのかもしれません。もしくは主様と似たスキル」
ボクと似たスキルと言うとアレか。う〜む、アレはそう簡単なスキルじゃないんだけどなあ
ああ、考えている間に船が壁の隙間を縫って領地に入ってきた
「開戦だ! 入ってきた十隻の船だけを潰せ!」
十隻の船は二つのルートを選んで街に突っ込んできた
一つは壁を越えて直ぐさま湾曲する陸地から乗り上げて
一つは湾内に入り込んで内側から乗り上げる
降りてくる人間は少ない。でも、それなりに強かった。時々居るのだが、人間には魔族を殺すのにためらうものが居る
今の部隊にそれらしき人間は誰もいなかった。士気が高い事で
というか見ただけでそこまで判断ができるなんて、ボクからしたら最早予知の域だよ。ソフィー恐
ジッと戦場を見下ろすソフィー。そんな彼女を見ていると、何かに気がついたのか口を開く
「あ〜。マールちゃんが、敵陣に突っ込んだ〜」
「速いな」
現在十カ所で小規模の戦闘が行われている。その中にマールが居そうなのは三つだけど、どこだろう?
「まあ、あの程度ならマールも本気は出さないだろうし。流石に見えないか」
「だとしてもあんまり戦わないで欲しいな〜」
「なんでだ?」
「マールちゃんはね〜。この街の戦力でも四番目の強さなんだよ〜? その上〜、一番自由に行動できるのがマールちゃんなの〜
範囲攻撃では二番目に強いし〜、機動力持久力共に二番目〜、一対多でも三番目〜、あまり目立たせない方が良いよ〜
出る杭は打たれるんだから〜」
「ん〜、そう言うのは先に言えよ。あんまり暴れるなとか言ってないから」
ボクの言葉にソフィーは笑って首を左右に振った
なんだ? ボクが知らないだけでもう言ったのか?
「多分言っても無駄だから言わないよ〜。どの道一日置きに部隊は入れ替えるから〜、一撃で何百人とか切り倒さない限りフォローするつもり〜」
なるほど、もう考えがあっての事か
確かに、マールのヤツは話を聞いても理解は追いつかないからな。話を全部聞いても解らない。なんて事はザラにある
キリルの件がいい例だな。まあ、彼の説明は酷いものがあるけどさ
戦闘開始から二十分くらい経ったかな。敵の数も減って、残りは少ないと思う。おや?
「この感覚は、まさか」
ソフィーはまだ気がついていないが、たった今。一度だけボクの秘蔵スキルと同じ感じがした
低人数に水上の移動速度にばかり気を取らされていた
『転移』持ちが居るなんて! しかも、感じた空間の歪みからして。人一人飛べるレベルだ
「ソフィー! 偵察隊の中に転移持ちが居た。地形情報を持ってかれたよ! 逃げられた」
「ッ! 人間でも自身を転移できるほどに育ったって事〜?」
目を大きく開いた彼女は顎に手を当てる。彼女の考えるポーズだ
でも、見逃すのは仕方の無い事。落ち度は無い。転移系のスキルはレア中のレア。魔力を必要とする数少ないスキルで、制御も難しくて人一人飛ばすのにはどえらい魔力を要する
ボクですら日に十回も飛べない。戦闘でも使わない事にこした事は無い。奇襲や必殺技で使うくらいだ
その時、更に連続して九回の転移の反応を感じた
「なあ!?」
ボクを越える転移能力者が先遣隊にいるってのか!?
テスト期間中だというのに新タイトル出して何してんだと思った方
ホントにその通りですよね。しかもペンネーム機能まで使って……
でも仕方が無かったんですよ! 色々戦争に必要な知識とかを集めていたら、あれ? 拳銃ってめちゃくちゃかっこ良くね?
なんて思っちゃったんですよ! 新たな創作意欲が湧いちゃってどうしても書きたかったんです!
ペンネーム機能を使ったらバレないかな。なんて思っては見たものの意味はありませんでしたがね。てなわけで新しい作品が出来ました
正直初期設定だけでほとんど何も考えていない作品なので、投稿頻度とか無いです。書きたくなったら書く
基本はこっち優先なんで気にしないでください
え? 二週間の休み所じゃないって? 現実は非常だったんです(マジで勉強しなきゃいけないからこちらに手が回らん状態どす)




