Q:私が不老種か? その通りだがそれがどうした? A:ウィルと末永く居てあげてください
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「一年後までに百着。ですか」
「おねがいします」「おねがいします」
俺とウィルは仲良く村長の家で土下座をしていた。王様が村の長に土下座という異様な光景。この部屋で唯一床に頭を着けていない、どこか呆れ気味な長の顔を覗きつつ良い返答が帰ってくる事を願う
今思えばこの世界の王様ってのはどうにも立場が低い気がする。家庭内のお父さん的な立場を連想させるね
まあ、一応は立場的に断る事はあまり考えられないが。村長は二つ返事で承諾してくれた。更に言うならば服の注文以外にも、村に生やした木々の伐採も、その木の上に乗った石の排除もお願いしている。頭が上がらねえ
「魔王様の頼みはいつも急ですからね」
「本当に申し訳ありません。受け渡しも危険でしょうに」
言ったのは俺だ。俺とほぼ同時に頭を上げたウィルも頷く。一年で百着くらいどうって事は無いと思うが、着物ができるまでの行程なんて知ったこっちゃない。もしかしたら時間のかかる物なのかもしれないしね
それ以前にこの村の服を百着もドブに捨てなければならないという事はホントに申し訳ないと思う
申し訳ない気持ちでいっぱいになっていると、その事ですが。と村長は笑いながら話しだす
「ツトジスは良く服を買いにきますよ」
「は!?」
「ちょ、直接ですか?」
やっぱり魔獣は変なヤツが多い気がする!
「いやいや、流石に直接は買いに来ないよ。道中の配達人に買いに来させるんだ」
道中? 俺が疑問を口にする前に村長は続ける
「詳しい話を聞いた限りだと、まずはいきなり拉致されて。気がついたら暗い部屋の中にいるとか。その後にお金と注文の服のデザインが入った封筒を渡される
お金を持ち逃げされないようにガラス玉を渡し、制限時間を設けて開放する。すると配達人は死にものぐるいでこの村に来るんだ
お金の入った封筒の中にもうひとつのガラス玉があってね。それで解錠する。お金も貰えるし上客だよ」
ただの脅しじゃねえか! 村へ行く命を掛けたお買い物じゃないよ。強制的に命を掛けられたお使いだよ! 可哀想すぎる。配達人ってのがどれだけ命懸けなのか分かるお話だった
ホントにアホか。普通に買いに来い。魔獣なら問題なくはいれるだろうに
「いやあ、村長。そういうのちゃんと報告してくれないと困りますよ。俺の管轄内なんですから討伐しますよ?」
「こちらもプロですから。お金を払ってもらっているお客様を通報なんて出来ません」
要らぬプロ意識である。取り敢えずは村長の意思を尊重してウィルはこの話を聞かない事にした
〈面白い事言おうとしました?〉
黙れ。俺は親父ギャク言うほど年老いちゃいない。あと二十年は言わないからな
それにしても、この二人の掛け合いを聞けば聞くほど古い知り合いだという事が解るようだ。馬車に着く前にその事を聞いてみよう
「ウィルと村長は随分お互いの事を解ってる風だな。付き合い長いのか?」
「ああ。この村の村長は、昔の魔王の従者なんだ。その魔王とは仲も良かったからそのままね」
ほほう。あの村長の目つきは鋭いし、強いのかもとは思っていたが、側近級のお偉いさん。今で言うコレットさんやカタリナさんみたいなもんか
ふと、昔の魔王と言われたのでそこの所を突っ込んでみた
「もちろん魔王も入れ替わるさ。今の魔王は全員が不老種だけど、俺が魔王になりたての頃は大魔王も無かったし、不老種も三人しかいなかった」
「三人。アビーとお義兄さんは百年くらい前に魔王になった。って聞いたから、まだ会った事の無い魔王の内の誰か一人が新参者ってことか」
ウィルは一瞬唸ってから説明を始める
「俺は今、魔王の中でも最も古い魔王なんだ。どういう意味だか解る?」
そんなの決まっている
「他の不老種の魔王も死んだのか?」
「その通り。人生に飽きた不老種の大半は自殺するんだ。王の名まで与えられた者達は誰かに負けたくないし、最前の死に方かな
村長の主も遥か昔に自殺したよ」
なんだか湿っぽい話になってしまった。ふむ、話題を変えよう。なにが良いか。おお、これはどうだ?
「その話だと村長も不老種ってことですか? 随分歳をお召しになられておかしな事だな」
「ああ、彼は不老種じゃないよ」
はて? 確かマールさんから、魔族の寿命も、獣人の寿命も、人間の寿命も大して変わらないという話を聞いた事があるのだが? まあ、村長はエルフだから、も少し寿命が長くてもおかしくない
因みにエルフの寿命は平均して二百年とかそこらと聞く。他にもマールさん達は三百年近くまで生きる長寿種って部類は人口の半分を占めるとか。それ以外は不老種しか知らない
不老種は肉体の最高の状態で成長が止まると聞いた事があるから、この事全てを加味すると。……村長はどうして生きてるんだ?
少し考えても答えは出ないので、お手上げと言わんばかりにウィルを見る
「彼はでもありとあらゆる種族で最も珍しい。『不死種』なんだ。まあ、不死とは名ばかりで一度死んでしまえばそこまでなんだけどね
村長は永遠に年を取り続ける種族なんだよ」
不老種よりも可哀想な種族である事が解った。聞かなきゃ良かったよこの話。誰が聞こうと思ったんだよ
〈主です〉
全魔眼の大正解の回答にうな垂れながら馬車へと乗り込んだ。再度村長の家に寄って、予定よりも大分遅れた。既にこの時間帯ならば村の姿も見えなくなる所まで行っていただろう
急がなくては行けない。既に一週間のロスがあるのにこんな所で留まっているわけにはいかないのだ
前回から続いて書けば良かったと後悔をしているお
少々話を延ばすのに手間取ってしまいました。全魔眼と主人公を会話させていたらもっと長く出来たつもりですが、そればかりに頼るのヨクナイ
次回は三人称です。明日か明後日のどちらかにお会い致しましょう




