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Q:さあキリル。村長に土下座しに行きますよ? A:あ、俺も行くんですか


 5575文字


「おい。ツトジスよ。第一魔王はサイクロプスと戦闘中、あの子供を退ければ久遠人を回収できるのではないか?」


 白いドラゴンの言葉だ。声は小さくして話しているが俺の聴力では丸聞こえ。身体を縦にして空中に停滞するドラゴンは太い腕を組んでいる

 ウィルとの身長差を下品に笑うサイクロプスを見つつ、意識はほとんど空中に向いていた


 ドラゴンの魔獣の提案に、ツトジスは肩を透かし首を振る。その一つひとつの挙動はオーバーなもので、ドラゴンは腑に落ちない様をして、どうしてか。と聞き返す


「キリル君はドラゴンさんと相性が悪いからですよ。確かにドラゴンさんは身体も強くて近接的な攻撃も得意です

 でも、貴方の本当の強みは高所からの攻撃密度。獣人の龍族とまでは行かない物の、かなりの高威力のブレスを安地から撃つ事こそがドラゴンさんが最も光る戦闘法です


 しかし、キリル君の魔法は多種多様。かなりの広範囲魔法を持っていると聞きます。その範囲と出の速度は、防げる物のライラさんでも避けきれません」


 なんだか過大評価されてる気がする。現状、ドラゴンの飛んでいる所までの攻撃法なんてほとんど思いつかない。水鉄砲で飛んで、カッターで攻撃するくらいだ

 魔法の多様性ならば確実のあのツトジスに負けるし、肉体的にもあのドラゴンに勝てる訳が無い


 まあ、警戒してくれるならばそれで良いのだけれどさ


〈全く情けない考えですね〉

「ほっとけ」


 それにしても、ツトジスはかなり相手を分析するんだな。子供っぽい見た目だし、猪突猛進でお転婆な魔獣だと思ってた。知略で攻めるタイプか

 ああ言ったヤツに全魔眼の事が知れたら一大事だな。対策をとられたら堪ったもんじゃない


「キリルなんか言ったか?」

「アンに、戦わないなんてダサいの。って言われた」


 ウィルに俺の声が届いていたらしく、目の前に敵がいるってのにこっちを向いて声をかけて来た。今回もまたアンの所為にしたら「パパの所為で私が性格悪いと思われていく」なんてお言葉が、かなり低いトーンで馬車の中から聞こえてきた

 今後はもっといい感じの言い訳を考えなければ、今後アンに嫌われてしまう


 少しばかり遠くに見えるウィルの後ろで、下品に笑っていたサイクロプスの魔獣が鉄製のこん棒を大きく振りかぶっていた

 全長が十メートルある巨体から力一杯振り下ろされる鉄のかたまりが、どれだけの威力を誇るかなんて考えなくても解る


 地面とこん棒がぶつかり爆弾が爆発したかの様な土埃と、地面が抉れて出来た破片が飛び散る。破片と言っても大小ある訳で、大きな物でこの村の村長が住む家ほどの大きさがあった

 その大きさの破片は村の方に飛んではこない物の、アンの乗る馬車を押しつぶせそうな破片は村の方へ幾つか飛んでいくのが見えた


〈主。全て捕捉済みです。スキルは知覚強化を、魔眼は千里眼を使用致します。ご準備を〉


 全魔眼のアシストを受け、俺は地面にしゃがむ。サイクロプスの見える光景とは別の景色が見えてくる。村にある家の屋根ぐらいの高さの視界から、飛んでくる破片が見える景色

 足下に根を張り、破片の落ちてくるポイント周辺に盾として木を群生させる


 何とか村への被害は無くて済みそうだな


「コラ〜〜! サイクロプスさん! アタシこの村の服がお気に入りなんだから被害が出そうな攻撃は駄目って言ったでしょうが!」


 ツトジスの叫びはサイクロプスには届かなかった模様。こん棒を持ち上げてウィルを探す


「潰れて死んでしまったか?」


 とか笑いながら言っている辺りあの魔獣は強くない。多分俺でも倒せる。神話巨人だからもっと強いイメージがあったのだが、どうやらそうでもないみたいだ

 担いでいるこん棒に座っているウィルの存在を気がつけない時点で負けている様な物だからな


 それにしてもなんでウィルは攻撃しない? ライラのヤツを圧倒できる剣術があるならあんな魔獣なんて簡単に倒せるだろうに

 北の方を見てなんだか上の空


 ああ、理由が解ったぞ

 う〜む。ツトジスはお冠。サイクロプスに説教チックな事を言ってて、ドラゴンもツトジスの怒りを鎮めるのになんか言っている


「……全魔眼。カタリナさんが今どうしているのか千里眼で見れるか?」

〈可能です〉


 全魔眼は俺と同じく、周囲の確認をしてから千里眼でカタリナさんのいる場所を映し出してくれた。見えた瞬間、彼女は何かを探すように辺りを見回し始める

 千里眼は遠くの物が見えるが、見られているという視線を感じてしまうデメリットがある。感覚の鋭いヤツにしか解らないんだけど、どうやらカタリナさんは感覚が鋭いようだ

 集中してカタリナさんのいる所の声を聞き取る


「どうやら来たか」


 あ、違うっぽい。仮に気がついててもこれなら誤摩化せそうだ

 カタリナさんは両手に二本のショートソードを作り出した。その巨体で武器がショートソードだと!? いや、カタリナさんの身体が大き過ぎて剣が小さく見えているだけという可能性も。……ないな。アレはショートソードだ


 視界が少し広がってカタリナさんの前に何者かが現れた

 ウェーブのかかった茶髪がうなじの辺りまで伸びている男だ。多少のあごひげを蓄え、見事な腹筋や上腕が羨ましい


 しかし、彼の下半身は少しだけ。いや、もの凄くおかしい。彼の下半身は首から下の馬の身体をしていたのだ


 現れた魔獣は、ケンタウロス


 馬の背中には矢筒が二つもついており、中にはぎっしりと束が詰まっている。矢筒の下には剣が二本見えた。人の身体を良く見ると弦が張っているのが見える

 視界が動き、ケンタウロスの背中が見えるようになるとハッキリと見えた。弓を背負っていた


「よく解りましたね。私が来たからアプローチしてくると。感知系には勘付かれにくいスキルを持っているのですが?」

「私の主は感知スキルは持っていないから関係ないな」


 え、そうなの?

 俺と同じ事を思ったらしく、ケンタウロスも首を傾げカタリナさんにその旨を質問した。質問を受け、彼女は鼻で笑う


「決まってるだろ。感知スキルが無いのにお前の様な魔獣を発見できたのは、感だ!」

「……はあ」


 俺もケンタウロスと似た様な感想だよ。何言ってるんだ。ってそりゃ思うわな

 置いてけぼりの俺とケンタウロスを待たずしてカタリナさんは駆ける。咄嗟の行動にも関わらず、ケンタウロスの魔獣は剣を二つ抜いてカタリナさんと鍔迫り合いになった


 第三者目線だから捉えられる物を、俺がカタリナさんの突撃を見切れるとは思えない。あの魔獣は強いな


「もう無駄話は良いだろう」

「私暗殺、潜入専門なので帰って良いですか? 貴女強そうですし、正面からやり合ったら負けそうです」


 直接的な攻撃よりも遠距離からの攻撃を得意とするか。俺が行かなくて正解だったな

 それにしても、ケンタウロスさんは随分と面倒くさがりなんだね。なんでか親近感湧いてきちゃったよ。敵なんだけどさ。くそ、アンを狙う輩で、誰かを襲わないなら友達になれる気が強くなってきた


 足の多さで勝るケンタウロスはカタリナさんに蹴りを入れようと前足を両方あげた。見るからに不利。彼の蹴りは空振りに終わった。後ろに飛んで避けたカタリナさんは、どうやってケンタウロスを攻略しようか兜の中から睨み殺さんとする


 だがカタリナさんはどうにも、勝てなさそうだ。いつの間に取り替えたのかケンタウロスは剣から弓に持ち替えている

 しかも、一度に三弓も射るらしい。鏃には尖った物はついておらず、丸い布の様な物が見えた


 放つと同時に矢から巨大な煙りの道が出来た。やっぱり煙幕だったか。性格的にそうじゃないかなと思ってたよ。それでこの煙りが晴れたら


「くそ! いないじゃないか!」


 この通り、トンズラです。随分と逃げ足が速いようだ。一応全魔眼に頼んで周辺の捜索をしてもらおう。俺の危機感知にはあの魔獣は引っかからないみたいだしな


 カタリナさんの方は大丈夫。そう思い千里眼を閉じようとした時だ。千里眼の視界の外からカタリナさんの方へ弓が飛んで来るのが見えた

 まあ、ウィルの妻でありま中の討伐を任せられる彼女が避けれないはずが無い


 兜に当たり、半分が破損するというヒヤヒヤした場面を見せられたが。傷も無く。舌打ちが聞こえた

 第二、第三の矢を警戒するも来る気配はない。カタリナさんは兜を破壊した弓を見てある事に気がつく。紙が括り付けられていたのだ。要は矢文


 手に取って手紙を開く


『恐いんで帰ります』


 どうやら手紙をビリビリに破いたカタリナさんはこちらに戻ってくるようだ


「あ〜あ、ケンタウロスさん帰っちゃったよ」

「まあ、元より位置がバレてたようだしな。分も悪かろう」


 いつの間にか怒りの消えたツトジスが北の方向を見て嘆く声が聞こえる。見えるの?

 流石にサイクロプスの武器から降りたウィルがカタリナさんが帰ってくる気配を感じ取り胸を撫で下ろす。そんなに心配だったのなら行かせなければ良いのに


 まあ、あっちの魔獣と戦ってたら俺負けてたと思うね。カタリナさんの攻撃を正面から受け止められるヤツに勝てる訳が無い


〈魔獣がピンからキリまでいるというのがよく解りましたね〉

「まったくだな」


 元気になったウィルはサイクロプスの攻撃を避けながら俺に声をかけて来た


「よしキリル! そろそろ技を見せるからな」


 ああ、そういえば忘れていた。見えているか解らないが頷いてみせた。小さく、良し。と聞こえたので見えてたんだろう


 ウィルが剣を握り直し、避けるだけだった攻撃を去なした。バランスを崩したサイクロプスは、正面から来るウィルを見て急遽防御姿勢を取る

 もしかして今のが言ってた技かな? だとしたらちょっと難しいと思うのですが、練習が必要だろ


 ふむ。だが、どうにも今のウィルの動きは遅く見えたな。多分防御して欲しかったんだろう。魔獣はウィルの直線上にこん棒を突き立てた。目の前に現れたのは攻撃を拒む鉄の壁

 どう考えても斬り掛かったら剣の方が折れるとしか思えないが、ウィルは力一杯剣を振り上げた。下から上へと角度的には、地面から大体六十度くらいだろうか


 こん棒は大きく切り裂かれ、持ち手のギリギリまでが切れていた。しかし、今見るべき所はそこではない。十メートルのサイクロプスがウィルの一撃で大きく仰け反り、あまつさえ尻餅をついたのだ


 体格差がありすぎだろう。異世界にそれはどうかとか言われそうだが、流石に今の光景は驚きだ。武器は使い物にならなくなったし、今の相手は好きだらけ

 好機にも関わらずウィルは俺の方を向いて声をかけてきた


 余裕がありすぎではなかろうか?


「アビゲイルちゃんなら正面からサイクロプスの攻撃を吹き飛ばしてただろうけど、俺にはそんな事はできない!

 でも、相手が防御している時ならば。こちらの攻撃だけが反映され弾く事が容易になる。キリルのように体格差があれば、今みたいに切り上げも有効だ」

「解ったから戦闘に集中してくれ〜!」


 切実な俺の願いはウィルに届いたらしい。衝撃な一言で終わりを迎える


「もう終わってるんだ!」


 その言葉に首を傾げたあと、尻餅をついたサイクロプスはピクリとも動かない事に気がつく。更に言えば、魔獣の腹部と胸部に大きな穴が開いている事にも気がついた

 おかしいな。今俺って知覚強化百倍の状態なんだけど、ウィルの剣線すら見えなかったって事?


 引き攣った顔になっているであろう俺を無視してウィルはツトジスの方を見た


「ツトジス。貴女この程度のサイクロプスで俺を倒せると思っているのですか?」


 ウィルの言い方は丁寧だが、どことなく刺がある気がする。やっぱりそう思うよね。俺でも勝てそうな魔獣だったもの


「全然思ってないよ。ここがフィールド内じゃないのであればもっと色々できるんだけどね」


 言い切ったツトジスは両手一杯のビー玉を俺らが見えるように掲げる。もしかして、アレ全部が魔獣? いや、今の言い方からすれば魔物か。どんなヤツが出てくるか解らないけどフィールド内であれば、魔物は無力だ


「アタシもね、ここに来なさいって言われて急いで準備した訳なの。他の魔獣に第一魔王を倒したいヤツはいないか〜って声かけしたんだけど。結局話に乗っかってきたのは、さっきのサイクロプスさんだけ

 どの道勝敗は見えてたからね。アタシ達は帰るよ


 条件さえ飲んでくれればね」


 条件というツトジスの言葉に緊張が走る。条件なんて言い方をしなくても解る。アンの事だ


「聞くだけ聞きますよ。答えは決まっていますがね」


 答えたのはウィル。ツトジスは不敵な笑みを浮べて条件を口にした


「この村の服を百着。できればツトジスの毛深い腕が見えなくなるのが良いな。希少種で個体数の少ないアタシ達の分だけなら簡単でしょ?」

「……」「……」〈……〉


 あ〜、魔獣ってホントは馬鹿なのかもしれない


「勿論今とは言わないよ。一年は待っても良い。この村のフィールド外に百着一括で置いてくれれば満足。できれば可愛いのが良い。ひと月に一度北のフィールド街付近を確認しにくるから

 もし、討伐隊とか。待ち伏せしてたらここらにある村全部潰す」


 怖。条件はアホ臭いのに


「服の出来が雑なのは嫌。とかは言わないから安心して、この村の魔族はプロだから平気だと信じてる!

 あと、今から落とす紙がアタシの手の長さとか、身長とか色々書かれてるからね。他の子達もアタシと姿形が一緒だから、できれば見分けがつく服が良いな!」


 なんだかどうでもよくなっちゃったな〜

 ひらひらと落ちてきた紙をウィルが摑み取る


「わかりました。第一魔王である俺がその服の事はしっかりとこの村に注文しておきます。だから、もう帰ってください」

「イッやった〜〜! じゃあ、第一魔王さんよろしくね! さあ、ドラゴンさん帰りましょう」


 ドラゴンは何か文句を言うと思っていたが、喜ぶツトジスの姿を見てニヤニヤしながら北の空へと消えていった


「なんだこれ」〈なんですかこれ〉


 結局今の戦闘で残ったのはサイクロプスの魔獣が残した傷跡だけとなった





 魔獣は強くなれば個性が強く出るのですかね? まあ、当分出る機会がないと思われるツトジスの名前の由来でも書きますか


 ツ・キツネのツ

 ト・ヒトのト

 ジ・チンパンジーのジ

 ス・リスのス


 ははは、なんだこの酷い名前

 ついでにライラの由来はゼルダに出てくるライネルさんから頂きました。ライネルさんの足が馬みたいじゃないだけで私の中には構成されています

 これで怒られたら、ライラはめっちゃイメージに困る


 最後に、魔獣との本格的な戦いは中間の話が終わってから最後のお話をする。前に書く予定です

 まあ、今年中には絶対に書けないですね。まあ、細かい設定を考えられるいい機会と思いましょう

 今年でどの辺まで行けるか自分でも解りません


 さて、良い息抜きも出来ましたので、今回はこの辺で失礼致します


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