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Q:魔獣のくせに俺より魔法の幅が広いとか許せないですけど? A:アタシは天才だから当たり前


 3951文字


 翌早朝。俺とウィルは村長の家を訪れていた。村を出る挨拶をする為だ

 日が昇り間もない時間で起きているか不安だったが、この村の村長も早起きだったらしく。心良く部屋に招き入れてくれた


 ウィルと共に泊めてもらったお礼を言って頭を下げる。キツめの眼を緩めて村長は笑う。わざわざ来て貰っただけで嬉しいとも付け加える

 挨拶を済ませ、短い談笑を終えた後。村長は布団の隣にあった木箱を差し出してきた


「これは何ですか?」


 ウィルが聞き、箱は開けずに俺の目の前に置く。なんで俺の目の前に置くか。持ってけと? いや、持たせていただきますがね

 しっかりとした木箱は装飾も無いシンプルな物。この世界に来てからお菓子というものを見た事が無いので、菓子寄りという事は無いだろう。寧ろ菓子を持ってくるのは俺らの方だし


「服です。最近服のデザインを考えるのにハマっていましてね」

「凄い趣味ですね」


 まあ、予想してしまうならばこの木箱の中身はデザインした服が入っているという事か


「白を基調としていますので魔王様の趣味とは外れているかもしれません」

「確かに白は着ません。キリルいる?」


 先に開けてみても良いか聞く。村長は笑顔で頷いてくれた。白が基調ね。それは自動洗浄のスキルと相性がいい。いつまでも綺麗な白をキープできるからね


 箱を開けて中から一つの布を取り出す。緑色の風が二本腰から足下まで伸び、花には詳しくないが灰色の花弁の舞う着流し。少々偏った個性を感じる。丈も俺には少し大きく今のままでは切る事はできないだろう

 もう二、三年しないと着れそうにもない服を貰った。まあ、今後の成長具合にもよるな


「ありがとうございます。まだ着れそうにありませんが」

「そうだな」「そうだね」


 少しばかりニヤケ面のウィルに、解っていた様な顔をする村長。この年寄りどもは全く。若人を弄んで楽しいのか?

 俺は着流しを受け取り、別れの挨拶はこれにて終わりだ。家を出て虎の引く馬車へと乗り込む為に村の出入り口に集まる。虎車か


「パパ。その箱なに?」

「服を貰ったんだ。でもまだ俺の身長には合わないからしまっておく」


 ズルいだの見たいだの騒ぐアンの要望をできるだけ叶える。あげるつもりは無いのでホントに見せるだけ、俺の着流しを見て鎧を着込んだカタリナさんが一言


「良かったですね。この村の着物は大陸の中でも二番目に高価な品です。生地からその丈夫さまで性能的に冒険者の中では一番の人気ですからね」


 そ、そんなに凄い服なのか。因みに大陸全体で一番人気の服屋は寝間着専門店だそうだ。冒険者からしても寝ている時に襲撃を受けて戦える服が人気で、それ以外の非戦闘員からの支持も高い為

 この村の服は寝間着以外も取り扱っている為に二番となる


 着流し入りの木箱を馬車に積めていると先に馬車の中に入り込もうとしていたウィルの動きが止まる


「遂に来たか」


 その言葉の直ぐあとに、俺の危機感知に反応があった。同時に全魔眼とカタリナさんも異変に気がつく。おいおい、確かに迷惑かけるかもしれないとは言ったが。セーフフィールドの真ん中にある村まで来るなよ

 俺が言ったのはフィールド内にある畑とかに被害があるかもって話だ。直接叩きにくるなよな!


 感知に引っかかるのは村の出入り口、正面から。まだ肉眼では確認できない。……俺の危機感知範囲広がった?


あるじ。どうやら主の感知にはかからない魔獣もいるようです

 村出入り口の正面である南側から一体。北からも一体来ます〉


 魔獣が二体も? なんと面倒な事か。仕方が無いので二手に分かれて戦うとしよう。ウィルと俺で手分けをすれば直に終わるだろう。俺の方がワーウルフの魔獣レベルならの話だけど

 そんな俺の考えを先読みしてか


「キリルはここに残っていなさい。カタリナ。北からも来ているからお願いできるか?」

「ここ最近は貴方のお世話が基本の職務でしたからね。久々に暴れるとしましょう」


 まさかの戦力外通告。貴方は奥さん戦わせるおつもりか。普通なら俺を選んで戦場へ行かせる所だと思う。お義兄さんなら確実にそうしてた

 だがまあ、現状の異変に何となく気がつき始めたアンから目を離さなくて済むのはありがたい


 恐らく兜の中では不敵な笑みを浮べるカタリナさんは、鼻歌を歌いながら馬車から離れていった。敵襲に完全に気がついたアンは不安げな表情でこちらを見てくる

 そんな顔をされても俺らにできる事は無い。やる気満々のウィルとカタリナさんに任せれば良いのだ


 まあ、血なまぐさい戦いを見せる訳にもいかないので、一先ず馬車の中で待機していてもらおう

 馬車の隣に立ち。村の出入り口にて準備運動をする魔王をみる。村に来ていきなり魔王と会うとか恐すぎるでしょ。どんなクソゲーだよ


「そうだキリル。ここは長年生きてきた俺から一つ技を伝授しよう」

「技?」


 曰く。とっても簡単で、一度見れば誰でもやれる方法だと言う


「パパは見てるだけで良いの?」


 馬車の中から声が聞こえる。見えていないだけで声は丸聞こえですかそうですか


「まあ、魔獣と戦って勝てる確率は高いとは言えないからね。誰かの負んぶに抱っこってのもあんまり良い気はしないな」


 多分だけど、これから俺はアンを守っていく訳だから。ウィルはその為に少なからずの力を与えてくれようとしてるのだと思う

 流石に気を効かせすぎではないだろうか? 確かに俺は剣を使うが、最近俺の剣術って普通じゃないと思い始めた


 剣は剣士に取っての命に等しい。その剣を投げるんだよ? 余りにも邪道である。教わった本人であるアダフさんでも流石に剣を投げる事は教えられてない

 そんな俺だというのに剣術を教わって使いきれるか心配になる


 危機感知の警鐘は鳴り続けているというのに、一向に魔獣は見えて来ない。ふと、ウィルが空を見上げているのに気がついた

 つられて俺も上を見上げる。黒い小さな影が見えた。全魔眼の千里眼をリンクさせてその正体を確認する


 白いドラゴンだった。純白の鱗に包まれ鬣すらも白い。体長も二十メートルとか言ってしまうほどの大きさだ。最早ビル

 でもそれ以上に目を引いたのはドラゴンの頭の上に座る少女


 百五十程度の身長の人の身体と足を持ち。顔に被った黄色い狐のお面と白いワンピースがよく目立つ。身長と同じほどの長さがある腕は毛深い。チンパンジーか? そして同体ほどの大きさのリスの尻尾を持っていた

 あれは人ではないだろうな。多分魔獣


「またエラいのが出てきたな」

「ウィルあの子も魔獣なのか?」


 というより見えるのか? 流石にこっちは聞かない。ウィルは振り向いて頷いた


「アレはライラと同じ位ヤバいよ。魔道化物まどうばけもの・ツトジス。魂食獣こんじきじゅうと同じ人型の魔物さ」


 またも化け物がやってきたって事かよ。やってらんないな

 そんな事を考えていると、まるで拡声器を使った時みたいに大きな声が村全体に響き渡る


魔道化物まどうばけものなんて可愛くない〜! 今は魔道化物だうかもって言うの!』


 ツトジスの声なのか? 魔道って付く位だし、こんな事までできるとは。魔獣じゃなければ弟子入りしてた所だ

 そんな事を考えていると、ゆったりと空を飛ぶドラゴンは遂に村の上空まで迫ってきた


「アタシ達の事は今後、化物なんて呼ばないでもらいたいな」


 拡声器的な魔法が無くても声の聞こえる場所まで来たからか。ツトジスの肉声が聞こえる。幼い声で魔獣というよりもただの子供の声みたいだ。話し方も挙動も子供

 しかし、その手と尻尾が人でも魔族でも獣人でもないと知らしめている


 ウィルは右手に持つ剣をツトジスに向けて構えた


「悪いですが、アンちゃんは渡しませんよ」

「だよね。大魔帝王も護衛を奮発しすぎでしょ。第一魔王ってライラさんが勝てないんだからアタシが勝てるはず無いっての」


 諦めが速いな。随分と素直な魔獣だ。ライラもワーウルフもだが、魔獣ってのはかなり人間じみた性格になる。魔族と敵対関係でないなら良い友達になれそうなのに。少し残念な気がする

 でも、魔獣は魔物が言葉を理解して話せるようになった個体。人を襲うと言う本能的行動は抜けないのだろう


「アタシじゃ無理だから。適当な嫌がらせして帰る事にした」

「嫌がらせ?」


 思わず声に出してしまった。この一言を拾うようにツトジスが口を開く


「そうだよキリル君。でも安心していい。嫌がらせ程度だし、君と久遠人に危害が加わる事は無いと思うからさ」


 俺の名前を知っている? ライラから聞いたのか?

 答えを考えようとしていると、ツトジスは指で摘んだビー玉をドラゴンの上から落とした。その玉は村の前へと落ちていく。どうやら中には入るコースに無いな


 ビー玉の行方を見ているとウィルに声をかけられ、少し下がるか。衝撃に堪えるよう忠告された。俺は後者を選んで馬車の横からは離れず踏ん張った


 直後、ビー玉が地面に落ちた。落ちた瞬間、強い光と衝撃が怒り大きな砂煙が舞い起こる。爆発物だったのか? それにしては落ちる位置も違うし。スタングレネード的な効果を持った物ならば少々威力も弱い

 砂煙も身を隠すにしては舞ってはおらず、上空のツトジスとドラゴンも目視できた


「中々興味深い魔法ですね」

「アタシは天才だからなんでもできるんだよ」


 二人の会話を聞いて俺はウィルの前方に目を向ける。爆発物ならば小さなクレーターが出来ている所だが、それとは逆に山が出来ている事に気がつく


 十メートルはあろう巨大な身体に、手に持つのは規格外とも言えるほどの巨大な鉄のこん棒

 緑の肌は見た目だけでとても分厚いのだと解る。横の幅も広く、隣にいれば山と変わらないだろう。下あごから伸びる牙は長く、大きな一つ目は目の前にいるウィルを見つめていた


 サイクロプス。そしてフィールド内に入れて大魔帝王の防御装置に引っかからないという事は。魔獣


 神話の巨人が現れたのだ





 コメント欄にも書いてありますが

 私の成績があまりいいとは言えない状況で、少々投稿頻度を落とそうかと思います


 できる事ならば平日に一本。土日に一本を投稿して行くスタイルとします


 どうかお許しください

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