Q:主はやはり退屈ですか? A:退屈とはどんな拷問よりもツラいと思う
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俺らは明日の朝までこの村で休息を取る事になった。当然護衛対象である俺らが自由に村を出歩く事はできない
事も無く。ウィルとカタリナさんの目の届く範囲ならばどこに行っても良い。基、二人のデートを後ろからついていくという謎の許可が下りた
正直、降りなくても良い。冬場でも雪の降らない村だからといって温かい訳ではない。畑に青々と広がる野菜達。大根に白菜、レンコンにネギ等々。全部に『みたい』というのを付ける事を忘れないでほしい
「のどかな村だ」
「何にも無いの」
〈良いですかアン。そういう時は、のどか。と言っておけば良いのです〉
まるで俺がこの村には何もないと言っているみたいじゃないか。思ってるけど口になんてしない
アビーの故郷よりも大人しい村人達のアクションと言えば。すれ違った時、柔らかい笑みを浮べて小さなお辞儀をするだけ
この村で育った魔族がどんな性格になるのか手の取るように解る。昨日の村長の台詞が不安を煽るな
ふとウィル達の方を見ると、木の上に見えるミノムシを指差して微笑んでいる。ビックリするくらい笑えないのですが、どこがそんなに面白いのか俺に熱弁して欲しい
娯楽が少なすぎる。だから俺の村が嫌で魔法にのめり込んだのだ。ああ、誰かマイクロ波の出し方を俺に教えて。この際、俺と同じ転生者でも構わない。確かいるんだろう?
〈ええ、同時に転生とまではいきませんが。確か二人いましたよ〉
「なんの話? パパの友達?」
「いんや。会った事も無い。会った所で解らないしな」
そういえば、なんで神とやらは俺と他二人をこの世界に転生させたんだ? 思い返してみると全魔眼が神とやらの伝言を言ってたな。何だっけか。『転生させる事になってしまってすまない』とかだったかな
ふむ、なぜ謝ったのだろうか?
〈あ、思っちゃいました? 今まで全くと言っていいほど気にしてなかった方がおかしいんですけど。その考えに行き着くまで本当に時間がかかりましたね〉
知ってんのか?
〈いえ全く。私も気になってたから一緒に考えたかったんです〉
全魔眼に聞いた俺が馬鹿だった。神様の考えなんて意味不明。理解不能。不毛な思考だったな。はいはい終わり終わり。転生させてもらった事だけで十分。一生が二度もあるラッキーな男だぜ
俺が真剣に考えるのはアンの今後と今日の晩ご飯の事だけで良いや。あとはアビーの腹筋の素晴らしさ
衣食住の内、二つだけ気にしてれば住は速攻で建ててみせる。ああ、素晴らしきかな異世界ライフ
〈そんな事言わずに考えましょうよ。転生ですよ転生? 凄い事じゃないですか〉
「だあ! うるさいな。どうでも良いんだよ! そんな事考えるくらいならトースターの構造考えた方が有意義だよ!」
おっと、思わず叫んでしまった
流石にウィルにも聞こえる範囲だったので声をかけてくる
「どうしたキリル。喧嘩?」
ふむ、どう答えたもんか。言い訳を考えるため、知覚を強化して考え込みたい所だが……
〈ちぇっ、なんですかなんですか。アンという可愛い娘が出来たら私なんて構ってもくれないんですか。そりゃアンは可愛いですよ。私はただの球体ですよ。だからなんだって言うんですか。かれこれ十一年は一緒にいるって言うのに。それ以前にも私は主の為に、この世界の文字とか言葉とか必死で覚えて様々な知識を集めたというのに。少しくらい私のわがままくらい聞いてくれたって良いじゃないですか……ブツブツ〉
初めて見るモードの突入してしまった。なにその、気になる幼なじみに彼女が出来た時みたいな内容。いや、よくわかんないけどさ。反応に困るんですけど
とにかく早口でぶつくさと呟く全魔眼は一先ず置いておいて、先にウィルの方だな
「いや? 喧嘩じゃないよ。アンと野菜の食べ方で意見の相違があってな。ちょっと熱くなってしまったんだ」
「はあ、そうか。あんまり細かい事気にしてるとその内嫌われるぞ」
余計なお世話である。さて、次は全魔眼の新モードの方をなんとかしよう
屈んでアンの耳元で囁く
「アン。悪いんだけど、このまま少し全魔眼と会話させてくれ」
「全然良いの。あと私はお野菜もお肉もどんな調理法をしても美味しいと思うよ? 生で食べると調理のありがたさが解るの」
何ヶ月も山にいた少女の言葉は重い。だが、アンはノアの料理を食べればその考えも変わるだろう
「全魔眼。悪かったよ。夜とかゆっくりできる時に話し合おう。ついでにお前がどうしてそんなに完璧な超絶スキルかってのも考えよう」
〈ハッ! 確かに褒め言葉は嬉しいですが、私がその事に気がついてないとでも思ったんですか? それで私の機嫌が直ると思ったら大間違いですよ。知ってるんですよ攻撃系のスキルがホントは一番欲しいってことも〉
やべぇ、なんだかめっちゃ卑屈になってんぞ。それに伝家の宝刀褒め落としも通じない。というかバレてた。なんだか俺の方が恥ずかしい
「はあ、悪かったよ。確かに最近無視したりとか多かったしな。なんでも言え。できる事なら叶えてやるぞ」
〈やるぞぉ?〉
「か・な・え! させていただきます」
大魔法が飛び出してきそうな呟きが治まり、全魔眼が一先ず黙り込む。俺はアンにお礼を言ってから背筋を伸ばす。ひとしきり考えた結果。全魔眼は答えを出した
〈じゃあ、ジャパニーズ切腹が見てみたいです〉
罰ゲームの域を越えた
俺に死ねと!? 嘘だよね全魔眼! 嘘だと言ってよ相棒!
〈割り箸でお腹は十字に裂いてくださいね〉
注文が細かい! 思わず両手で泣き顔を覆って踞るくらい俺の心は追い込まれているよ!
だけど今回、全魔眼の意志は驚くべき程固いようで、黙りこくったまんま何も言わない。そうとなれば俺も覚悟を決めるしか無いようだ。痛いのは嫌だが友情を失うのはもっと嫌だ
切腹って痛過ぎて途中で死ぬとか聞いた事あるけど、頑張って意識を繋いぎ、注文通り腹をかっ捌いたら直に傷を直そう。俺はその場に正座をする。自動洗浄スキルで血の汚れは直に落ちるし、服はアビーの子供衣装。へそ出しで良かった
右手に割り箸を作り出し、頬に一粒の涙を感じる。恐怖で泣いたの久しぶり
〈おお、見るに堪えない。これは見せられませんよ〉
「はあ、はあ!」
あとほんのちょっぴり遅かったら死んでたかも
いきている素晴らしさに感謝しながら涙を拭う。因みにこの後ウィルとカタリナさんにめちゃくちゃ怒られた。なんで切腹したのかとか、どれだけ熱くなってんのとか
とりあえず、アンに論破されて自分の過ちを正そうとした結果。という非常に脳みその回路が狂いに狂った回答しか出て来なかった
それでも全魔眼には本気で許しを求めている事が伝わったらしく許してくれた
今後は全魔眼をぞんざいに扱わないようにしよう。そう堅く誓う
フラグを建てつつ日常回は意外と難しいと感じた今日この頃。皆さんはどうお過ごしですか?
私は本日のテストを終え、余りのできなささに後悔しながらテレビアニメ『レジェンズ』を観ていました
なんだそのアニメ知らんという方は、私の作品なんか読む前にその神アニメを見る事をお勧めします。私の作品は後回しにしてください
因みにアニメを見ないという方は『マテリアル・パズル』という漫画を急いでブックオフで買ってください。最早再版もされる事の無い神漫画です
どちらも完結済み(マテパは完結して次のシリーズに移ること無く、打ち切りという悲しみを背負っていますが、一応は区切りが良いのでセーフです)で続きは無いので安心してください
私の中での神漫画上位三つに君臨するマテパ。富樫先生の作品が大好きな私に浮気を教えた張本人です。そう考えると荒川先生の『ハガレン』も私に浮気させたな。罪深い。褒め言葉ですよ?
漫画やアニメの話は楽しくて次々話してしまいますが、この辺で止めておきます
因みにカットした切腹描写は後に活動報告で、思ったよりもグロくなかったけど
2017年5月15日 誤字脱字修正。全魔眼が撃つになりかけた時、八年一緒と言っていましたが十一年でしたやっちまったぜ




