Q:なんで顔を隠してるんですか? A:虫が寄るだろ
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副都を出て既に一週間が過ぎようとしていた。現在、俺らは西西北に移動している。目指すのはフィエの街。副都からラサンとフィエの街は直線距離で言えばどっこいどっこいだが、やはりラサンの方が少し遠い
それでもフィエに寄るくらいならばラサンへ直接向かった方が速い? まさに言う通りなのだが、例の大砲の存在は知っていても、どれだけの脅威かを知らないお義兄さんに伝える為らしい
昨日まで降っていたが本日は晴れ。道はドロドロで普通なら走れた物ではないが、今現在乗っている馬車はそんな事気にしないと突き進んでいく
アビーの持っているちょいと豪華な馬車より小さく、速さ重視で作られたっぽい。それでもカタリナさんを含めて座っても余裕で座れる大きさだ。流石に六人いたら入り切らないだろうが
御車するカタリナさんを見つめるウィルに嫌々ながらも義肢の着脱の練習をするアン。そして少し離れた所で最早何回か忘れるくらいぶっ続けで腕立てをする俺
汗が馬車に落ちないように布をましたにおいているのだが、もうびっしょりになっている
「流石にクサいの」
「確かに」
「二人がやれって言ったのに!?」
アンとウィルの無慈悲な台詞にツッコミを入れる。なんで俺が狭い馬車内で筋トレをしているか。理由は簡単だ。寝込んだ一週間分を取り戻す為に必死なの
身体というのは動かさなければどんどん弱っていく物で、筋肉の減弱は本当に大きい。毎日やっていた筋トレも、一日休めば元に戻すのに一週間かかると言う
確かに一週間も休めば百十倍の世界を動けた身体も腐り落ちて、百五倍に落ちる。勘弁して欲しい。……制裁が無いのが不思議で、腕立てを止めてあぐらをかいてからカタリナさんを見る
直に俺の目線に気がついた彼女は前を向いたまま口を開いた
「どうかしたか?」
「いつものカタリナさんなら、ウィルにツッコミを入れた時点で『友人でも魔王にタメ語は無いだろう!』的な事を言ってボコボコにされると思っていたので」
俺の勝手なイメージの全てをぶち込んだ質問をぶつけてみたが、カタリナさんは鼻で笑って答えた
「休暇中のウィリアム様は魔王じゃないからな」
そういう問題だろうか? 因みになんて事の無い会話をしているこの馬車は、舗装なんてされていない凸凹の道を走っている。しかも、アビーの馬車とは比べ物にならないくらいの、異常と言っても良いほどの速さで進むが、以外と揺れない
速いのに揺れないってのはそういう事だ。どんな魔法が掛かっているのだろう
〈真っ先に技術面を考えないんですね〉
大陸のトップ曰く、技術力は人間には敵わない。そう考えるとねえ
元より魔法とスキルで生活するのが魔族の基本と聞く。そんな種族に技術力なんて求めちゃいない。この大陸での自転車はあと百年は掛かるね。多分
なるほど。と全魔眼が俺の考えに相づちを打つのを聞きながら、御車台の前方を見る
馬車が普通じゃない速度に堪えられるという事は、引いている生き物も普通じゃないという事で。カタリナさんの鞭で走る生き物は、馬的な生き物ではなく。虎的な生き物だった。騎士達も使っていたが、副都では虎はどういった扱いなのか聞いてみたくもなる
〈それにしても、全くと言っていいほど襲撃なんてありませんね〉
全魔眼の呟くその言葉は俺も気がかりだった
ライラと言う魔獣の中でもとびきりヤバいヤツが動いているのに、副都を出てから一回も襲撃が無い。既にアンを奪う事を諦めているのか? いやいや、あり得ないでしょ
話に聞くフェンリルは、大魔帝王がいなければ一匹でカルタリンゴーンの全てを破壊尽くせると言われる魔獣。いわば、魔獣、延いては魔物の王
その復活を早める為の薬とも言えるアンを早々諦める物か。やっぱりウィルの存在が大きいのだろう
不思議と揺れない馬車の旅をそれから三日ほど楽しんだ頃
カタリナさんの一言で俺とアンは馬車の外を見る事となる
「ウィリアム様。村が見えてきました」
アンは先がフックになっている義手を馬車の内側に上手く引っ掻け、窓から身を乗り出す。俺もアンが落ちないように支えつつ外を見た
アビーとお義兄さんの故郷である村とは違い。緑と畑に囲まれた豊かな村が見えてくる
村にもグレードがあるんだな。家も、木や藁だけではなく。石の土台の上に立つ立派な木造建築も見えた。アビーの故郷は湧き水を水源としていたが、この村は滝から降りてくる水を糧としている
そのため、村人は多くの水を畑に廻しているのだろう
見えてから二時間ほどで村についた。ウィルは外出する時はかなりの頻度でこの村に寄るようで、村人達とも仲睦まじい様子で話している
アンとカタリナさんは馬車を、いや。虎車をひいて先に宿へと向かった。虎を休めさせ、荷物を置いて来ると言う
なぜ俺もウィルも、それに肖らなかったのか。理由はこの村の村長に挨拶をする為だ。この村の長は、アビーの故郷のように脳みそ筋肉していない普通の老人。体調も優れなく、家からあまり出歩けなくなってしまったとか
村に泊めてもらう側としてウィルが、村に迷惑をかけてしまうかもしれないという事で俺が出向く。当然だろう
村長の家は、先ほど見えた石土台の上にある立派な木造の家で、東側の部屋にいた。この村についた時から気になっていたが、服装が和服っぽい。ウィルを見て敷き布団から起き上がった村長が着ている服なんて旅館の浴衣まんまだ
いいなあ。俺も一着欲しい
「村長。また厄介になりますよ」
部屋に入って布団で寝ている村長と出入り口の中間くらいで俺らは座る。ウィルはあぐらをかいて、俺は正座をした
「おお! 魔王様。ワシがお迎えにもいけないばかりに、わざわざこんな所まで。申し訳ありません」
村長はヨボヨボかと思い気や、そんな事は無くやせ細ってはいるが目元は鋭い。因みに彼は魔族ではなくエルフだった
頭を下げる村長と一瞬目が合う
〈何かやらかしたんですか?〉
失礼なことを言う。何もしてないし、この先何かをやらかす予定も無い
頭を上げたエルフの村長は俺の方を見ながらウィルに「この子は?」と聞いた
「仕事で今この子と、あ〜。を! 護衛しているんです」
「魔王様直々に?」
驚きながらも一切俺から目を離さない村長が少し恐い
「まあ、俺の友人である事と、ヴァーニア様の命令もありますから」
ウィルが質問に答え終わると外からアンが俺とウィルを呼ぶ声が聞こえる。どうやら荷物を置いてきたらしい。ウィルはその声を聞いて慌てて話を変える
「悪いのですが村長。村を出る時また来るので今は失礼します」
頭を下げてそそくさと部屋を後にした。村長は何も言わず頷き、ウィルを見送る。取り残されると、とっても気まずいので、俺もウィルのあとに続こうと腰を浮かせようとした
「ああ、君。待ちなさい」
ですよね〜。めっちゃ興味津々で俺の事見てましたもんね。そりゃ待てがかかります
止められたからには逃げる訳にもいかず、俺は村長と向き直る。最初に聞かれた質問はとっても簡単な物で、どうしてウィルが護衛についているのかだった
元より話すつもりだったので、アンの事は伏せ。魔獣に狙われている事だけを話す。アンの事はあまり口外しない方が良い。これは俺を含めウィルに大魔帝王も同意の事だ
先ほどウィルが俺とアンを護衛していると言いかけ、訂正したのはその為だ
俺が魔獣に狙われている。そのため俺を泊めたこの村は狙われるかもしれない。先に謝罪をして、村長の言葉を待つ
「そうか。詳しい事は聞かない方が良さそうだな。その事はもう何も聞かないよ。村への心配も必要ない。この村は色んな意味で強いからね」
んん? 意味は全く伝わってこないが、取り敢えずは気にするなって事かな? 色々強いってなんだよ
まあ、考えるより先にお礼を言っておこう
「ありがとうございます」
「若い子がそんなに堅くならなくていい。少し近くにきなさい」
首を傾げながら俺は村長に近づく。取って食われたりはしないと思う
〈当たり前です〉
全魔眼の言葉を完全にスルーして、俺は敷き布団の横に正座。村長と目線が同じになった。とにかく俺の顔を観察。約一分間、凝視されるのに堪えられず目を晒したりもした
満足した村長は一言
「良い目を持っている」
一瞬ドキッとした。全魔眼の事を言っているのかと思ったからだ。ウィルにも大魔帝王にも言っていない俺の二つある最大の秘密。その内の一個だ
もう一つは転生者という事だが、こっちは全魔眼がバレそうになったら使う言い訳として秘密にしてあるだけ。だからそこまで隠しているつもりは無いけどね
でも、全魔眼がたった一分の凝視でバレるとは考えにくい。どういう意味だろう
「ああ、久しぶりの客人に気持ちが高揚してしまったらしい。年に似合わぬ興奮で疲れた。ワシは少し眠る事にするよ」
どこまでも説明口調なその言葉に俺も部屋を後にする事にした。頭を下げて、一事言って、部屋から出て行く。その間、どういう意味を込めた台詞だったのかを考えたがどうにも思いつかない
〈意味なんて無いのでは?〉
「結局はそういう事なのかな」
全魔眼の導きだした答えに違和感を感じつつ家を出る。その感覚は家を出た瞬間吹き飛んだ
目の前に現れたのは驚くほどの美人。十人に聞いて十人が美女と答えるであろう。絶世の美女
紅い髪に深紅の瞳。髪はうなじにかかるほどの短い物だったが、手入れをされている事は一目で分かる。出る所は出て引き締まる所は引き締まる。プロポーションもバッチリ
強いて何かを言うならば如何せん身長が高い事、三メートル近いんじゃないかな。肩幅も女性としては広めに感じる
肩幅は、肩を見せる様な服装をしているからかな? 身長もヒールを履いている。こんな村にそんなに気合いの入った格好をする魔族がいるとは
肩を見せる様なワンピースを身に纏う美女はウィルと話をしていた。一瞬、ほんの一瞬だけ浮気だと思った。カタリナさんが可哀想だと
そのときピースの全てが揃う
三メートルで、見た事も無い美女。村では少々浮いた服装。肩幅の広さ
カタリナさんは身長三メートルほど。俺はカタリナさんの顔を知らない。服装から考えて村の外から来たのかもしれない。カタリナさんは甲冑を着てかなりガタイが良さそうに見えた
〈導きだされる答えは?〉
「えええええええ!! カタリナさん!?」
驚いた声にカタリナさんは頬を赤らめながらウィルと会話していたのを止め、俺の方を見る。気まずそうに直ぐ顔をそらした
唖然とする俺の横にあんがうまい事、車いすを止めた
「私もビックリした。パパと同じ反応したの」
〈これで腹筋が割れてたら、第三魔王とどちらを選びましたか?〉
馬鹿言っちゃいけない確かに美人だが、人妻に興味は無い
風邪を引いてまでも書こうという私の意地を見よ! (正確には寝過ぎて寝れなくなったから書き始めました)
ツラたん。明後日テストなのに……
身体がだるおもで、後書きも調子が出ない。なんの話します? カタリナさんの話でもします? 私自身が美人設定にしたんですがあんまり興味なゲフンゲフン!
どうせ美人のキャラを作っても私じゃ扱い切れないので甲冑を来て貰おう
〜ボツネタ〜
「私もビックリした。パパと同じ反応したの」
なんと言う事でしょう。ウィルは同士ではなく面食い系でしたとさ
「ウィル」
「ん? なに?」
ウィルの腰回りに抱きついて叫ぶ
「お前にはガッカリだあああああ!」
ジャーマン・スープレックスを食らえ!
終わり




