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Q:その誓いは私が覚えておきましょうか? A:どっちでもいい。アンの為なら俺はもう誰にも負けないから


 3351文字


 もうどれだけの時間が経ったのかも解らない。ライラという化け物との戦いの末、俺はアンに深い傷を負わせてしまった

 ちっぽけな力しかしない俺が誰かを守ろうなんておこがましい行為だったんだ


 今の視界に映るのは自分の両手の平。力が入っていない指は曲がって爪が俺を指差す

 名前の思い出せないメイドが、ベットに座るだけの俺に食事をもってくる。でも、食べる気はさらさら起きない。料理に手をのばす事も、ベットから立つ事も、身体を動かす事ができない


 いや、動かしたくない。全てが煩わしい


〈もう三日は何も食べていません。本当に死んでしまいますよ〉


 三日も食べてないのに、こんなにも腹は減らない物なのか。死ぬのも楽じゃない

 俺の言い方が気に入らなかったのか。全魔眼は声を荒げた


〈いい加減にしてください! いつまでそうしているつもりですか! 主はこんな所で立ち止まるお方ではないでしょう

 友人が亡くなった時も、復讐を心に決めた! ここで止まれば、全てが無駄になってしまうのですよ!?〉


 何を言うかと思えば、笑わせてくれる。俺はそんなにも出来たヤツじゃない。どれだけ足掻いて谷底から這い上がった所で、何ができるようになった?

 俺はだって感情があって、心が左右されるんだ。俺はもう


「俺はもう、終わったんだよ」


 ベットの脇に置かれた机の上、湯気のたつ料理の匂いも感じなくなったこの身体。遠くで全魔眼が唸る声を聞きながら、楽になる事ばかり考えている

 それ以外の事を考えると、直ぐにライラとの戦いを思い出す。そうなると、自分が許せない


 なんで俺はアンにであって直に手を取ってしまったのか

 あそこで俺がアンを助けなければこんな事にはならなかったのかもしれない

 もっと速く見つけてウィルに預ける事が出来たらこんな気持ちになる事もなかった


 もっと、もっと俺が強ければ


 苦しい息が詰まる。悔しい腹が立つ。無力な俺を、殺したい

 それをしないのは俺が死を恐れているからだ。なんて弱い。なんて愚かだ


 遠くで扉が閉じる音が聞こえる


〈第一魔王〉


 全魔眼の声で、閉じられた扉は俺のいる部屋のだという事が解った。ずっと姿を見せなかったウィル。なぜだか救ってくれた本人が目の前にいるのに礼を言う事もできない

 できる限りウィルの方を向くがやはり謝辞の言葉は出ない


「ふう、カタリナに聞いた通り。酷い顔だなキリル」


 いつもと変わらぬ調子のウィルは肩を落として、ベットの隣に立つ


「俺は友人を大切にするといっただろ?」


 前にも聞いたその言葉を聞いて、きっと俺もここから動けないのだろう。なぜその話を今するのか解らなかったが、ウィルは続けていった


「随分と弱っているようだから、もっと大切にしてやろうと思ってね」


 そういうと靄がかかっていた視界が揺れた。俺はウィルに胸ぐらを掴まれ乱暴にベットから放り出されたのだ。受け身を取る気も起きず、顔面から床に落ちる

 投げ飛ばされるにあたり、ベット脇の食事が乗った机に身体のどこかをぶつけ、床と当たった額と頬から血がもれる


 飛び散った血が、バラまかれた食事につく。だからなんだという話だ。まあ、これが大切かと言われれば疑問が残るが


「立ちなさい」


 俺はうつ伏せに倒れたままで動く気はない


「なぜ立たないのですか?」


 久々に丁寧な物言いを聞いた。寧ろ俺が聞きたいなぜそんなにも怒る? ああ、俺が今現在この家の金を使って住んでいるからかな

 返事をするつもりのない俺に気がついたのかウィルは頭の横に立つ


「手足があるのに、どうして使わないのですか?」


 この言葉は、久々にハッキリと聞こえた。俺には一番耳障りな言葉だったからだ。お門違いというのは解っていても、俺の怒りの矛先は変わる


「何が言いたい?」


 かなり攻撃的な俺の言葉を聞く気がないのか質問には答えない


「この世に手足のないものがどれだけいると思いますか。それを、持っているのに使わないのは随分と勿体なく感じまして

 こうして柄でもない説教をしにきたんですよ」


 説教? そんな物受けたくもない。怒りは増し、つい力の入る拳で床を押し身体を起こす


「本当はする気なかったんですよ? ですがね。部屋の外から聞こえたあの言葉は許せません。アンちゃんが君を助ける為に自らの命を捨てる気でいたのに、その答えは余りにも酷すぎます

 君なら待っていれば立ち直れると信じていたのですがね」

「悪かったな。期待を裏切るようで。でも、俺じゃアンを守り切れない。ウィルが代わりに」


 その先は口に出せなかった。腹が煮えたくりそうなほどの怒りすらも、ウィルの顔を見て消え去った。表情はなかったが、その瞳の中には怒りが見え隠れする

 無力な俺が起こす怒りの炎よりも、圧倒的に強い感情を感じた。それだというのに丁寧な口調は変わらない


「アンちゃんはもう目が覚めているんです。なのになぜ、この部屋に来ないか知っていますか?」


 怒りを掻き消された俺は、いつの間にかベットに腰かけていた時のように力が入らなくなっていた。ただただ怒れるウィルを見つめて動けない


「君が過呼吸で倒れた時に察してしまったんですよ。今の自分を見せれば、君が不幸になると。そして願い続けている。君がいつか立ち直り、自らの意志で部屋にきてくれる事を」


 ウィルの怒りが消え去ったのがわかった。深い溜め息をつき、俺を抱えるとベットに座らせる


「見知らずの少女を見て守ろうなんてする。その娘を守るため化け物と称される魔獣と戦った。君は優し過ぎたんだ

 生きていく上で、優しくありたければ強くならなければならない。キリル達はまだ強くなれるよ」


 それ以上は何も言うこと無く、ウィルは黙って部屋を出て行った。直ぐにメイドさんが来て床にこぼれた料理を片付けようとする


「ああ、待ってください。俺が片付けます」


 メイドさんの手を止めてもらい俺はベットを降りる。屈んで床の料理を手に持ち、口に運ぶ。一番赤くなった物を食べたが、血の味がする

 床に物を食べた事に驚いたメイドさんが俺を止めるが、彼女を静止させたまま食べ続ける


「お止めください。私が主様に怒られてしまいます。何かを食べるなら新しいのをお持ち致しますから」

「なら、三日分は持ってくてください。お腹が減って死にそうです」


 可哀想な物を見る目で見られたが、いった通りメイドさんは三日分の食事を用意してくれた。それら全てを食らい尽くした頃には既に真夜中。重たい腹を引きずって俺は一人、三つとなりの部屋へと向かう


 正直、全魔眼やウィルの説教で立ち直れる程。俺の気持ちは落ち着いちゃいない。今も頭と心の中はグチャグチャだ


 アンの姿を見ればまた倒れてしまうかもしれない

 アンの姿を見ればあの戦いを思い出してしまうかもしれない

 それでもやらなければならない。伝えなくてはいけない


 部屋に入ればアンは既に寝息を立てていた。食事中に全魔眼から聞いた話では一週間ほど引きこもっていたらしいが、そんなにも時間が経っているようには思えない

 部屋はまるで変わっておらず、違う点と言えばアンゴレさん達がいない程度だ


 寝相のいいアンは静かに眠る。長い髪は乱れること無く毛布に治まり、手足のどこもめげること無く真っ直ぐと眠っている

 アンの顔を見るのは大丈夫だったが、毛布のへこみを見ると気分が悪くなった。苦しいし悲しい


「アン。俺が君を始めてみて、助けたのは単なる『哀れみ』だけだった

 それだけで守ると抜かし、結果それが傷つける事に繋がってしまった


 だけど君は傷つく事を受け入れ、俺を助けてくれた

 今なら、今だからこそ誓える。どんな敵からもアンを守るよ


 これは哀れみなんかじゃない。命の恩と、親の義務だ」


 眠っている相手にいっても仕方が無いか。明日の朝また来て、もう一度言おう

 そう思ってアンに背中を向けた直後。靄がかかった視界と聴覚が晴れる


「じゃあ、まだ呼べるね。おやすみ。パパ」

「おやすみ。アン」


 振り向かないで部屋を出て行く。振り向きたくても振り向けなかった

 あんなにも多くを失ったのにも関わらず、要因が俺にあったのにも関わらず、まだ俺をそう呼んでくれる


 親が子に涙を見せてはいけない。どんな意味を持つ涙であれ、弱さを見せてはいけない。これから先は、強くある俺だけを見てもらうのだ

 俺がもう一度立ち上がる理由はそれで十分。いままでどおり、ビオの敵を討つため。アンの手足の借りを返すため


 ライラを殺す





 主人公の感情の起伏が激しすぎる。主人公目線でなければ感情を書く事ができなかったですが、それがとても難しい

 多少グダグダに、更には強引になってしまいましたのは、私の実力不足ですね。申し訳ない


 昨日の内に投稿したかったのですが間に合いませんでしたね。できればセットで読んでもらいたかったです


 関係ないですが、この話のタイトルが今まで最も悩んだ(納得したとは言っていない)

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