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Q:おや、ハーシェル様。ご機嫌が良さそうですね? A:ああ! 友達が出来たんだ


 2741文字

 お久々の三千未満


 ハーシェル様の依頼を受けると決めて屋敷を出る準備を整え中、防寒着を着込む俺の隣では魔王がリュックを興味深そうに眺めている。リンチしてしまったお詫びだと言って屋敷に泊まれる事になったが、この誘いを受けるかどうかはまだ決めていない

 理由として探す範囲は聞いたところセーフフィールド内だからだ。まず街の中にいるとは思えない。これは当たり前だ。だったら山の中、いちいち街に帰ってくるのはめんどくさい。俺なら山の中でも野宿は出来るし問題は食料問題だけ


 街を出る前に何かしらの食料を買っていこう。一週間は潜るつもりで買いだめだ。久遠人という人を探すに伴い聞いておかなければならない事がある。ハーシェル様がみているリュックを背負う


「ハーシェル様。俺はその人を探せばいいんですか? 見つけるだけ?」

「ふむ、見つけるだけでいいけど。捕まえられるのであれば捕まえてもらいたいね」

「捕まえる。ですか。了解です。出来そうならばやってみます」


 玄関まで道案内すると、部屋を出た俺のあとをハーシェル様がついてくる。まあ、確かに俺だけじゃ屋敷から出れそうにないからね

 理由は解らないが生け捕りが好みと。考えてみれば俺が襲われた時もやたら腕を狙ってきたもんな。無力化を図っていたのね。ん〜将来的に危険だと思われる敵国の人間を生かす理由として考えられるのは、二つかな

 洗脳して敵国のスパイとして使う。または貴重な情報源として生かす


〈または奴隷として扱う。監獄で幽閉。四つだと思いますよ〉


 それにしても、どの道悲惨な結果だね。可哀想


〈それにしても産まれたばかりの人間ってどのくらいの歳なんですかね?〉


 どういうこと?


〈この街の魔王は今世のお父上を子供の頃から知っています。そう考えると、この魔王からしたら誰もが子供としかみれないと思うのですが〉


 俺の前を歩く見た目の若い魔族をみる。不老種は肉体の最高潮で成長、または老化が止まる。見た目だけでは一体どれだけの時間を生きてきたのかは解らない

 ノアの言う魔族やエルフには年齢不詳のヤツが多い。という言葉がやっと理解できた気がした。俺が年齢とか種族を言うだけで理解されるのは国柄のおかげだね


 それならなんで俺は奇怪な目で見られる事が多いのだろう? 不老種がいるくらいなら子供の姿で大人びたことを言っても変ではないだろうし


〈肉体の最高潮という部分を忘れておいででは?〉


 問題は全て解決した

 会話も程々にひと際豪華な扉の前に到着。玄関かな? ハーシェル様が扉を押して開けてくれたので、一礼して外に出る。屋敷を出た瞬間に緩やかな風が冷気を運び全身を包み込んだ


 寒さを感じ次に入ってきた情報は視覚。地面から数段高い位置で、白銀の世界が目の前に広がった。小高い丘の上にある屋敷からは山脈に囲まれた街全体を見渡せる。全ての家の屋根は雪が積もりすぎないよう鋭角で出来ており、もれなく雪によって白く染まっていた


 色を付ける吐く息はゆっくりと上へと登っていく。街を見下ろしていると屋敷の外二十人程の騎士が待機している事に気がついた。騎士十人、まさかね

 そのまさかだったようで、騎士達は俺の姿を確認するとゾロゾロと集まってくる。隊長と思わしき騎士が兜を脱ぎ、地面に片膝をついて頭を下げた。続けて他の騎士達も同じ様に頭を垂れる

 驚きなのは俺と変わらない強さを持つ一番から三番までの騎士のうち、二人が女だった事


「この度は十分な確認もせず、我々の安易な判断で襲撃した事をお詫びを申し上げたく参上しました。お許しを!」


 隊長の言葉で騎士達は更に深く頭を下げた。そこまでしなくてもいいのに、ハーシェル様が言った様に俺は自分の身体を治療できるからあんまり気にしていない。多少のトラウマが出来ただけ


〈超気にしてるじゃないですか。女々しいですね〉


 俺と同じ体験をしてから言ってみろ


「俺はーー」


 階段から降りて騎士達に「気にしてない。頭を上げてほしい」こう言おうとした時だ。素早く俺の隣をハーシェル様が通り過ぎ、騎士達を庇う様にして立ちはだかる。いや、別に傷害じゃないんだけどさ


 なんてくだらない事を考えていると、ハーシェル様は騎士達と同じ様に雪の上に膝をついた。そして頭を下げる。それしちゃ駄目だろ! 正真正銘の魔王様ですよ!?


「ちょ! ハーシェル様! 頭をお上げください。気にしていませんから」

「例え貴方が気にしていなくとも、国の治安維持を目的としている組織なのです。この事柄は見逃せません

 騎士団の団長として、大陸を守る魔王として、この身は我が主、ヴァーニア様の物。命を差し上げる事は出来ません。だからこそ、この小さな頭を下げるしかないのです

 心からの謝辞を。申し訳ありませんでした」


 命って……ハーシェル様。アナタの謝り方は重すぎるよ。でもまてよ。ここでそのまま許してしまうと、こんな謝り方をした方にも失礼だ。この場で引き受けた仕事をやらずに情報だけ貰うってのも、おかしな話になってくる


〈いや、なんでここまでされて寧ろ罰を与えようとしてるんですか。鬼ですか主は〉


 よし決めた


〈無視? 無視ですか?〉

「では、ハーシェル様。二つ、お願いを聞いていただけますか?」

「我が主の契約に反する事でなければ幾らでも」


「では、決まりです。まず一つ、これから俺はアナタに敬語を使いません。友達になってもらいます」

「友達ですか? 構いませんが」

「二つ目はアナタの事をウィルと呼ばせてもらいますがよろしいですね?」


 あまり理解できていないようで、ウィルは首を傾げながら頷いた

 ふふん。ハーシェル様なんて長くカタッ苦しい呼び方がさっきから嫌だったんだ。これで普通に話せる。敬語を使わない友は、ビオ以来だろうか。悪くない気分だ。歳の差はとんでもないけどな


「さあ、ウィル。立って、いつまでも王の頭を友である俺に見せないでくれ」

「そうだねキリルく……キリル。じゃあ、仕事に行ってみようか。帰ってくる気がなさそうだが、いつでも来いよ。俺は友人を大切にするタイプなんだ。同僚は居ても、友はいないけど」


 依頼人と請負人という関係ではなく、友として俺は見送られて街にくり出した

 

 

 

 雪の降る真っ白な道から、去っていくキリルの姿を見るウィルは大変満足そうに微笑んでいた。その顔が見えない真後ろに立つ騎士達、その隊長が声をかける


「宜しかったので? 我らのミスとはいえ、友人などと。触れ回るのでは?」

「いいんです。俺は今、とっても満たされています」


 騎士団に意味は伝わらなかったが、ウィルはそのまま続けてひとり言を呟いた


「俺は長く生き過ぎたなあ。友達は、ソウンアロ以来か。全く、キリルの将来が楽しみだよ」


 一度大きく伸びをしたウィルは騎士達に通常の業務に戻るよう指示を出し、屋敷の仕事部屋へと向かった


 未来の英雄を思いながら





 ノアの言葉を思い出す場面で文章を思い出してみた所、エルフなんて一言も言ってない事を思い出しました。あの会話だけみると、主人公がまるで魔族の様に感じてしまいますね(笑


〈笑えないんだが?〉


 この駄文の主人公は魔族の大陸に住んでいますが、魔族の血は一滴も流れておりません


 次回、久遠人登場

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