Q:お義兄さんはいつもこんな朝をおくっているのですか? A:この時の為だけに外に仕事部屋を作ったと言っても過言ではない
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どこかの扉が閉まる音が聞こえ目が覚める。部屋の外からは「朝ご飯、あっさご飯」と鼻歌交じりでソアさんのひとり言が聞こえた。扉の音は彼女が部屋を出た時に聞こえたんだろう
〈おはようございます主。まだお早いですがもう起きられますか?〉
「ああ、おはよう。もう起きる」
俺は昨日長い交渉の末、夜遅くまでソアさんの屋敷にいた。結局勧められるまま屋敷に泊まることとなったのは言うまでもない
思い返せば今の所滞在費を払った記憶がないな。いつまでも続くとは思えないし、お金を増やしておかなければ。昨日既に売ったバスケットボール級を除いても、銀貨二枚分に相当する魔核がまだある。今日当たりにでも売るか? それとも換金はせずにとっておくか
その考えは後にして、目が覚めてしまったので今の内にストレッチをしよう。自転車での旅をしているとき筋肉痛予防として朝と夜のストレッチが習慣になってきた。健康的だし今後も続けよと思う
ストレッチが終わったので開脚とか、逆立ちなども取り入れてみたが。やっぱりこの身体の身体能力が高いため、難なく出来てしまう。多分次から逆立ちはやらない
一応今日の夜に魔核からの魔力抽出を教わる予定なので昼間はどうしようか。この屋敷に留まるという選択肢はない。ソアさんの餌食に会うこと間違いなしだ
魔核は冒険者のギルドで換金できるようだし、登録していない俺でも換金できるか話を聞きにいくのもいいだろう。その後は、ノアを探してみるのもいいかもしれないな。明後日まではこの街にいるはずだし
〈旅に出るにあたり、磁石や地図も欲しいと言っていませんでしたか?〉
確かに、そう言うのは旅の先輩でもあるノアに聞いてみるのも手かもしれない。今日一日のスケジュールを考えているともう一度扉が閉じる音が聞こえた。さっきよりも小さく、静かに閉じられたと判断できる
屋敷には俺、お義兄さんとソアさんしかいないので、誰かが侵入しているということを除けば。お義兄さんしかいない
「ソアおはよ〜。今日もなんて可愛いんだ!」
「おはようございますバネカー様。朝食までもう少しです。抱きつく力をもう少し緩めていただけると早くご飯が食べられますよ」
「ソアの作る朝食の為ならしかたがない」
う〜む、お義兄さんはどうやらソアさんの前では精神年齢が著しく下がるようだな
〈聞いてて痛々しいです〉
全魔眼に口がついてなくてホントに良かった。お前は直ぐに口に出してしまいそうだからね。さて、お義兄さんも起きたし俺らも部屋を出ますかね。顔洗いたい
部屋を出るために扉を開けると、そこにはソアさんがいた
〈びっくりした〉
うん。え? なんでここにいるんだ? さっきまでお義兄さんと話してたじゃないか
満面の笑顔でタオルを一つ腕にかけて直立するソアさん。なぜだかそれを見た瞬間開けた場ありの扉を閉じてしまった。少し受け入れがたい現実だったからだ。歩く音とか俺の耳に聞こえてなかったのですが、瞬間移動の類いか?
「おはようございますキリル君。そろそろ起きる時間かと思いましてここで待たせてもらいました。お顔を洗いに行くのでしたらタオルがありますが、いかが致しましょう?」
こ、これがスペシャルスキル『完璧メイドちゃん』の力だとでも言うのか。やろうと思っていたことを確実に解っていて用意しているとしか思えない。もうホラーの域。失礼だが扉一枚を挟んで返答させてもらう
「ありがとうございます。じゃあ、ちょっと外に行きますね」
「湯浴みする程暖まっていませんが、個室がありますよ。勿論お顔を洗うだけでも構いません」
それはいわゆる風呂だろうか。お世話になった谷底には作ったのだが、まさかお目に掛かるとは思わなかった。そう言えばアビーの屋敷にもそれらしい物があるとかマールさんが話していた様な? それに昨日もソアさんがお義兄さんに選択肢を与えてた
少し見てみたい。そう思ってしまったので意を決し部屋の扉を開ける
「じゃあ、少しだけ」
「はい! 主様も昨日はキリル君とのお話で入られなかったので、汚れたお顔くらい洗ってもらいましょう」
「ソアさんは凄く自然に毒を吐きますね」
理解できなかったのか首を傾げた。タオルを受け取り彼女の後ろに続く、お義兄さんにも説明をして俺と二人で風呂にいくことにした。ソアさんは朝食の準備だ
野郎二人で顔を洗いに行くということで、俺が男色家だと思い込んでいるソアさんはお義兄さんの貞操の心配をしていた。勘弁して欲しい
風呂は木で出来ており、さながら人が入れる超巨大な木製の桶。これを作るのは大変だっただろう。こういう職人もこの世界にいるというのが解る出来栄え
別の場所で水を温めて少しずつ桶に貯めていく源泉掛け流しの温泉みたいな仕様。流れ出る水を手で掬う
「おお、丁度いい」
「この器を満たす時はもっと熱いんだ。貯めてる途中で冷めてしまうからな」
「なるほど、ソアさんは本当に出来たメイドさんですね」
「そうだろう! そうだろう! もっと褒めていいぞ!」
自分のことの様に喜んでいる。愛妻家ですね
〈愛妻というよりは狂妻家ですね〉
それは、狂った妻を愛することをさすのか。それとも狂った程妻を愛しているのか。どっちなんだ?
〈両方ですね〉
狂気に満ちた家庭であるということが伺える。手早く顔を洗い、朝食をとる為戻っている最中だった。お義兄さんが今日一日俺は何をするのかと聞いてきたので、伝えるのは先ほど軽く考えた予定
もちろんソアさんが嫌で街に出るとは言わない。一日中ソアさんに気を使わせるのが嫌ということにしている
「なるほど。ただ、今の話に問題があるとするなら。地図が難しいな」
「え、なんでですか?」
「この大陸の地図ってのはもの凄く高価なんだ。私たちの王の意向でね。魔王でも持っているのは私と、第四魔王だけだな」
嘘だろ? なんてややこしい考えの持ち主なんだ大魔帝王
「私の持っているのも大陸の全体地図で、地域地域が書かれている細かい物はないんだよ」
「ええ、じゃあ遭難したら終わりじゃないですか」
「まあ、道があるからそれさえ外れなければいんだが。君はそれじゃ駄目だよな」
解っていらっしゃる。俺は道を外れてでも山を登り、故郷の村を探すんだ。それに周辺地図がないのなら、まず間違いなく遭難します。山素人だもん。山奥の村に住んでても村から出たこと無いし。う〜ん
「よわったなあ」
「でも山産まれだし、大丈夫なんじゃないの?」
「ははは、俺が谷に落ちたの七歳ですよ。村の外に出たこともありません」
「それもそうか。その話は今日の夜だな」
お義兄さんの話が終わるのと、長い廊下を行き目的地の部屋につくのは同時だった。さらに俺ら二人が扉の前に立つと同時に中からソアさんが扉を開ける。くそ、頭以外の駄目な所は発見できなそうだ
昨日の時点で本日の夕飯まで約束されていたが、顔を洗いに部屋を出る前は魔王ということもあり、お義兄さんが先に朝食をとってその後俺とソアさんだと思っていた
しかし、そんなことはなく。三人で机を囲み朝食をとる。従者と食べるというのはアビーとの旅の時とさほど変わらん。この兄妹が特別なのか、全ての魔王がこんな感じなのか気になる所だ
白いテーブルクロスの上。真ん中には各種果物が盛りつけられ、手前には朝食は柔らかいパンにジャム、ゆで卵、手の平サイズの分厚いハム、紅茶と何かのジュースが置かれている
「私には祈る神はいないが、君はどうする」
「一応、神は信じてますが祈りはしません」
転生させてもらったらしいけど会ってないからね。突然の転生だったからね
う、う〜ん。それにしても王様になった気分だ。二人ともモクモクと食べ進めていく。パンを千切っては食べ、千切っては食べ。俺もそれに合わせて千切ってみるが物足りない。屋敷を出たら屋台で何かを食べよう
こういう所はアビー達と食べた方が楽だったな。注意するのはコレットさんくらいだったし
かたっ苦しい朝食を終えると、お義兄さんが家を出る準備をすると言って部屋を出て行こうとする。悪魔と二人っきりにされるのは困るので俺も外へ行く為の準備をしに部屋へと戻る
リュックの中を確認して背負う。俺の装備に新しくお財布が追加され、こいつは代理魔法で革製の袋を作った。売り買いしないのであれば幾らでも自分の為に魔法で物を作ろう
外に出ると既にお義兄さんがいた。まあ、彼がいるということはソアさんもいるという訳で
「バネカー様。今日も早く帰ってきてくださいね」
「ああもちろんだ! 必ず早く帰るよ」
「私は寂しいです。離れたくありません!」
とかうんたらなんとか。仕事に行く前のお義兄さんとソアさんのイチャイチャを一通り見て街へとくり出す
観光兼旅の支度だ。地図以外の物は手に入れなければならない。まだ登り始めたばかりの太陽をみながら背を伸ばす
今回から前書きに文字数を書いておきます。三千文字の軽い物を読みたい人向けですね
前書きの使用法を考えてみた。タグに書いとこうかな
どうも、皆さんごきげんよう。さて、世の中そろそろ新学期。私も同じく学年が上がります。そして受験です
まあ、なので毎日投稿は目指しますが、もしかしたら! 投稿ペースが落ちる可能性というのも捨てきれません。というかいつかは落ちます
もしそうなったときは見切りをつけちゃってください!
別に待つのにはなれている。というハンターハンターファンの皆さんはめっちゃ感謝します
ま、げんじつとうひのためまいにちPC弄るのは止められそうにありませんがね




