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Q:これから大きな魔核を手に入れたらご提供させてもらいましょう。いかがです? A:う、っく。……その条件ならいいだろう


 黒い髪の魔族。おでこから二本の角が生えている。アビーは上に向かって伸びるが、目の前に座る魔王は下に伸びていた。白いシャツに黒い肩掛けをかけたとてもシンプルな格好で、ぱっとみ、魔王には見えない程おっとりした目元

 身体の線は細く、ひょろっとした感じ。俺を見る彼の顔は、どこまでも珍しそうなものを見る目だ


 魔王様が帰ってきて、メイドのソアさんがすぐにここまで連れてきてくれた。部屋に入ると嬉しそうな顔をして席についた

 俺らの間には机があり、その上にはソアさんが入れた紅茶のカップだけが乗っかっている。今は俺の分だけが机の上に置かれ、魔王様は香りを楽しむ様にカップを口につけたまま動かない


「紅茶を飲まないのかい? 私の妻が入れた紅茶は美味しいぞ」

「待たせてもらっている間に沢山飲みましたので。本当に美味しい紅茶でした」

「ふふ、話に聞く通り。子供らしからぬ発言だ」


 肉体年齢十三歳だけど、精神年齢は三十だからね。しかし、玄関から聞こえた態度とはまるで違うな。ソアさんと二人きりの時だけなのかな。あっちの方が親しみやすそうなのに

 魔王様は紅茶を飲んで欲しそうな顔をしているので、別段喉が渇いている訳ではないが一口だけ飲む。うん。美味しい


 満足そうな顔に一安心だ。ああ、こういう真面目なやり取りをするのはいつぶりだろう。アビーとは出来なかったからな


〈主の方から壊しにいってるだけなんですが〉


 俺は真面目に話してるつもりなんだがね


〈絶対嘘だ!〉

「それにしても、キリル君。君が生きているとは本当に驚きだ。始めに聞きたいのだが、この七年。どこに居たんだい? アビーとはそこの話をしなかったものでね」


 おや? アビーからどんな風に伝えられたのか解らないが、少し違和感がある言い方だ。まるで俺を前から知っていたみたいな。あと、魔王はみんな愛称呼び名のか?

 紅茶を机に戻すと、魔王様も紅茶を机に戻した。ゆっくりと足を組み、どんな意味があるのか分からないが笑う


 魔王が一体どこで俺のことを? 村で俺の事を捜索でもしたのかな。警察の様な機関があるとは思えないし。もしかして村はこの街の近くにあるとか


「そんな不思議そうな顔をしなくていい。私は魔王の中でも特別でね。大陸中の情報が入ってくるんだ。君は、まあ。一部ではちょっと騒がれたからね。思い出せただけ」


 俺って心を読まれやすいとは思っていたが、顔に出てたんだなあ。ポーカーフェイスを覚えよう。顔を後だとして、話をしますか。アビーの時はかなり時間が掛かったし、今回はかいつまんで説明しよう

 俺が死んだと思ってたんだから、谷に落ちた所までは知っているだろう。落ちたあと、谷底の話からでいいかな

 外が暗くなってきたとは思っていたが、俺が話し終わる頃にはもう真っ暗になってしまった


「谷底に人間か。要報告だな」

「大魔帝王ですか」

「私たちの王だからね。様を付けてはくれないかな」


「失礼しました。失礼続きで申し訳ありませんが、俺からも聞きたい事があります」

「聞くだけなら聞くよ。君の知りたい事には答えられないかもしれないけど」


 ええ〜。それでは意味がない。それを聞きにきた様なもんなのに。確かに、アビーもそんなことを言っていたな。じゃあ、駄目もとで聞いてみるとしますか


「聞きたいのは村がどこにあるかです」

「ふむ、それは言えない」


 まあ、そうですよね


「が。ラサンは最北端だ」

「はい? なんですそれ」


 空な話の変化に首を傾げて聞いた質問は無視され、魔王様は話し続ける。一体どうしたのだ


「君が流されてラサンにきたという事は、東よりか西よりかは解らずとも、北上したという事は間違いない」


 あ! そうか。今までの経緯を辿って、村の位置を逆算しているんだ。その考えはなかった。問題があるとすれば、方位磁石もなかった洞窟内はほぼ迷路だった事

 その事をふまえても半年は潜っていたのだから、ここら辺ではないだろう。洞窟内ではウロウロしてたし休憩も多かったが、一ヶ月でつくこの街の付近という事はない


 色々と考えを巡らせていると、魔王様が頭を掻きつぶやく


「関係ないんだが、南の地方は年中熱くてね。標高が高くても雪が降る事がないんだ。魔王になる前はアビーとよく旅行に行ってね」

「あの」

「ん? どうした」


「村の事とか良いんでアビーとの関係教えてもらえます? え、なんなんですか旅行って。自慢? は? は?」


 なんだあ、コイツァ。アビーと旅行だと? うらやまけしからん! 優雅に紅茶をすすりやがって、顔面潰すぞコイツ


「あれ、アビーから聞いてないの? 私の名前はバネカー・クーデン」


 なんじゃあコイツ。名前がなんだって、クーデン? 最近どっかで聞いた様な気がする


「アビーは私の妹なんだ」

「お義兄さん。バカンスで言った南には海とかあるんですかね? アビーは水着持ってたりするんですかね」

〈さっすが主。こういう手の平返しはお得意ですね!〉


 HAHAHA。態度を改める為なら何度でも捻り切っちゃうよ。千切れても生やすからね。それにしても危ない所だった。未来のお義兄さんに向かって殴ったり、失礼なことを言ってしまう所だった

 大いに笑う全魔眼と同じく、お義兄さんも紅茶を持ったまま肩を振るわせている。彼は笑う立場ではなく俺にキレてもいいと思うのだが


「いやあ、コレットの言う通りだな。ホント子供とは思えない言動だ」

「それは、まあ。すいません」

「別に責めてる訳じゃない。私も子供の頃は君の様に大人ぶって、生意気なガキだったからな」


 そして現在は変わった女の趣味で、ぶっとんだメイドを嫁に迎えたということか。俺はお義兄さんと女性の趣味について語り合う事はないな

 それからは他愛無い会話をしてソアさんの夕食を待つ。待つと言っても、お義兄さんが遅らせたのだ。もしかしたら俺の舌足らずな説明をアビーかコレットさんに聞いていたのかもしれない。マールさんは、そう言うの気にしないタイプだと思う。最初の説明の時もなんだかんだ最期まで聞いてくれたし


 会話をしつつ村の位置を予測するのは忘れていない。先ほど打ち切ってしまったが、南の方速までも雪が降らないと言っていた

 村では雪が降ったので、極端に南という訳でもないな。短くてもここからまた一ヶ月から二ヶ月の範囲を南下して手当たり次第に山を登るか? 北に行き過ぎず、南に行き過ぎず。そうなると磁石と地図が欲しい


 お義兄さんが予測するよう薦めるのはセーフなのかと思ったが、範囲が広くて探すのにも時間が掛かる。その事を込みして、言える範囲を教えてくれているんだ

 ああ、考えれば考える程お金の必要性が増してきた。この際だ、恥を承知でお金の事を聞こう


「そうだ。お義兄さん」

「どうした。未来の義弟」

「俺、お金を持った事がないんですけど。どんなお金があって、どれだけ価値があるのか教えてくれませんか?」


「確かにそれは困るか。工面してもいいが、金のつながりってのは脆いからな」

「借りようとは思っていません。知識を恵んで欲しいんです」

「なるほど、本当に出来たヤツだな。わかった。実物を見て教えた方がいいだろう」


 お義兄さんは腰についた皮の袋を机の上に置くと、中身を全て取り出して並べた。大小、金銀銅とバラバラだ。通貨ってこんなにあるのか。正直多い


「一番小さい通貨から説明するか。この銅のちっこいのが一番価値の低い硬貨だ」


 指先でつまんで俺へと差し出す。地面に刺さった一本の杖が斜め上から見る形で描かれていた。地面から真っ直ぐ伸びる杖は持ち手と思われる場所でUターン。折り返した先が直線になる前に泊まっている

 銅貨には大きさが変わっても同じマークがついていた


 次に渡されたのは銀貨。これも銅貨と同じく斜め上から見た描写で、雲の上にシルクハットが乗っかっている。わたあめみたいな雲の上に、丸い鍔のシンプルなシルクハット

 どうか同様大きさに関係なくこのマークがあり


 最期の金貨には銀銅両方のマークが描かれている

 硬貨の説明も終わり、十分に理解した


「さて、あとはどうお金を手に入れるかです」

「十三だと冒険者にもなれないからな。何か売ってみたらどうだ?」

「売ると言われましても。基本的に使うもの以外持っていませんし。魔法で作り出した物を売っていたら、働かずして無限にお金を稼げてしまうのでやりたくないです」


「立派な考えを持っているようで安心した。働くにしても、子供じゃなあ。取り敢えずその鞄の中で一番使わないものを売れば良いんじゃないか?

 使うものしか入れていないと言っても、予備分を売ってしまうとか」


 なるほど、予備か。村で貰った鞄かな。取り敢えずリュックの中身を全部出してみるか。ティーカップを端によせ、お金を全て財布の中へと戻してからリュックの中身を一つ一つ出していく


 ノアに貰ったお手紙セット。村で貰った調味料が少々、一対の火打ち石、作業用ナイフと研ぎ石、ケース付きオイルランプに予備の油三本、革製の肩掛け鞄、あとは小指の爪サイズの魔核が一、二、三、四……

 いつの間にか散らばってしまっていた魔核を一つずつ取り出していると、お義兄さんが魔核を一つ摘む


「なんだ。これを売ればいいじゃないか」

「え、魔核って売れるんですか」

「冒険者は魔物を倒して魔核を剥ぎ取るんだ。これを換金する。これで金銭は問題ないな」


「じゃあ、お義兄さんが持ってるのでどれくらいのお金になりますか?」

「ん〜。結構大きいし、銀貨二枚かな」

「え!? そんなにですか?」


 おいおい、洞窟内で俺どんだけお金落としてきたんだ? ああ、勿体ない。じゃあ、最後に倒したあのドデカイバスケットボールの魔核はおいくらになるんだ

 解らない事はすぐに聞こう


「ではこのサイズのは?」

「どれ、だ!? なんだそれは。大きいな」

「やっぱり大きいんですか」


「かなり危険度の高い魔物だな。大型の魔獣と変わらない。価値にしたら、大金貨一枚と同じ価値があってもおかしくないな」


 マジでか! 壊さなくてよかった。剥ぎ取っておいてよかった。生きたまま切り離してよかった!

 大型魔核を感動しながら撫でているとお義兄さんが唸っていた。足を組んで顎を指で触れる。大分様になるポーズ

 気になって見ていると左手の指を三本立てて俺の目線の高さで止める


「だ、大金貨三枚で私に売ってくれ」

「はい!? その金額、さっきの三倍ですよ?」


 テレビの通販とは逆で。最初に低い値段を言って、次にかなり高くして値段交渉をする技か? ちょっと今、本当は大金貨五枚以上の価値があるのではないかと思ってしまった

 しかし、ここまで良くしてくれたお義兄さんがそんな事するとは思えない。一応理由を聞いておこう


「魔核は魔物に魔力を供給する重要な機関。そのため濃い魔力が宿っているんだ。まあ、その。私のメインスキルは珍しい事に魔力を使ってね。これだけ大きな魔核なら、加工して魔力のみを抽出すると三回は魔力なしでスキルが使えるんだ」


 ここにも俺と同じでスキルに馬鹿みたいな魔力を持ってかれるお方がいたああああ!


〈馬鹿見たいとは失礼な。わたくしは燃費がいい方ですよ。種類によっては〉


 指を一本立てて答える


「大金貨一枚でいいですよ。二枚分は魔力抽出の方法が知りたいです」


 この提案にお義兄さんは足を組むのをやめ、顔を伏せて両手で覆う。とても悩んでいるのが見てわかるが、これは俺にとっても知っておきたい情報だ。最高に魔力を消費する天鏡眼が使いたい放題になるかもしれないからね


〈使いたい放題は無理でしょう。主考案の使い方したら九十秒で干涸びるんですよ?〉


 え、そうなの? ま、まあ。沢山予備の魔力を集めて十秒ぐらい使えればいいさ

 悩むお義兄さんを待っていると、扉が二度ノックされ。ソアさんが入ってきた


「お夕食の準備が出来ました。難しいお話をしているようですので、よろしければ一度ご休憩にされてはどうでしょう」

「そうだな。未来の義弟。君も一緒に食べよう。交渉は食後に」


 お礼を言って部屋を出て行く二人に続く

 やっぱり夕食は驚くくらいの料理が出てきた。ソアさんは頭はおかしいがその有能性は間違いない。他人が作った物で、久しぶりに美味しいと感じたのは全てノアが悪い


 因みに夕食後の交渉は成功し、魔力抽出の方法は明日教えて貰える事になった





 そういえば、忘れてましたが。一話一話のタイトルでも作中で話されなかった会話だと思ってもらって構いません。タイトル回収とか出来そうにないんで、そこらへんは皆様の想像力で補ってください!


〈読者任せの最低な投稿者ですね〉

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