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Q:あ〜あ、泥沼になると思ったのになあ。姉さんはもそう思わない? A:あれ以上増えたらどっちか刺してましたよ


 アビー。その姿勢腹筋が見えない


〈腹筋しか見てないんですか? 主は子供に腹筋を見て離せと教えるのですか? さっきの己への殺意はどこにいった〉


 おっといけない。そうじゃなかった。片膝をつき頭を足れたアビゲイルさん。この世界の事は未だに解らないが、王様に頭を下げさせるのはいかがなものか。平謝りならそれだけで済むものを、本気で彼女を悩ませ膝までつかせるなんて俺は何をやっているんだ


 アビーの姿を見て説教しながらこちらを見ていたコレットさんもこちらに来るのが見えた。俺もアビーに駆け寄り肩を掴む


「アビー。やめてください。俺なんかに頭を下げちゃいけないですよ。村を見つけられなかったくらいで」

「頭を下げずにどう謝るんだ。それに、ボクはキリルの故郷の場所まで解っているのに伝えられないんだぞ」


 解ってるのに伝えられない? えっと、それはどういう事だ? 本気で謝っている様にしか見えないし、イタズラって事はないよな


〈立場上、という事ではないですか?〉


 魔王という立場だから俺の故郷のことを言えない? はは、それはちゃんちゃらおかしいだろ。なんでセーフフィールドも張られていないど田舎の村の位置を言っちゃいけないんだ


「主様! 頭をお上げください。アビゲイル・クーデン! 立場を考えなさい!」


 俺を押しのけたコレットさんが、まさかアビーに向かってキツい言葉を使うという光景に、思考が止まりそうになった。いや、やはりと思うべきかな? 俺の様な身元不明のハーフエルフに主が頭を下げていたら怒りもするか


 ゆっくりと頭を上げたアビーと叱る相手を変更したコレットさんのやり取りを見ていると、先ほどまで会話に加わらず、馬車から降りた三人を観察していたノアが俺の後ろに回ってくる


「キリル。アビゲイル・クーデンって、あの?」

「あれってのは、彼女の立場的なものですか? 魔王らしいですよ」

「本物なのか?」


 肯定するために頷く。フードを被っているノアの表情はまるで解らないが、なんだか機嫌は良さそうだ。やっと立ち上がったアビゲイルさんに近寄ると、今度はノアが両膝を地面に付けて頭を下げる。いわゆる土下座

 うん。俺はもう成り行きだけを見ていよう。処理が追いつかない


〈馬鹿ですもんね〉

「は、初めまして! お会いできて光栄です! 僕は配達人のノア、夢はラサンに住む事です!」

「え、ああ。はい、どうも。ボクはアビゲイル」


 ほらノアさん。アビーもドン引きだよ! 一旦こっちに引っ張って来て落ち着かせた方が良いんじゃないのか? 例え自分の街で皆から慕われてても、いきなり土下座されちゃ耐性のある人だって戸惑うし

 ラサンってもしかしなくてもアビーの領地の事かな。そうだとしたら、はじめて知った


「えっと、配達人。そこまで畏まらなくても。ボクは第五魔王程偉そうにはしないよ?」

「第五魔王なんて知ったこっちゃありません! 僕の憧れはアビゲイル様なので!」


 ら、ライバルだと!?

 これから時々手紙を書こうと思ったが、やっぱなしだ! 料理を教え、仲良くなって来たらなんとひどい仕打ちか

 よく見たらアビーの後ろでコレットさんがノアを睨み付けている。今なら仲良くなれそうな気がする間違いない。因みにマールさんは俺と目が合ってガッツポーズしている。それは応援しているのだろうか


「モテ期かこれ?」


 おっと落ち着け俺。あの犬は戦闘系ではない。よってアビーの好みとは外れる。ふう、危ない危ない。それにしてもアビーもおかしな事を言う。彼女のような見事に割れた腹筋を持つ女性が魅力がない、訳がない! 故に常にモテ期なんだ!


〈おや? 筋肉好きが高じた馬鹿な主。魔王が獣人に近づいていきますよ〉


 なんだと!


「すまないな配達人。ボクはボクより強い男以外は断っているんだ」

「え?」


 良かった! お断りの返事でホントよかった。ノアには悪いがここで現実を、あれ? ノアのヤツ。残念そうな顔をまるでしてないぞ。それどころか少し困った顔をしている。はて?


「アビゲイル様。そこは心配いりません。僕は女なので、夫婦になろうとは一切思っておりません」

「あ、そうなのか。男の子かと思った」


 あれ? なんかこの会話おかしくない?


〈ほう、それはどこら辺でしょうか。わたくしには正常な会話に見えますが〉


 いや、だってさ。ノアが自分の事女の子だっていってるんだぜ? 冗談キツいぜ。大体、喋り方だって女の子らしくないし。料理は絶望的だよ?


〈はい? 出会った頃から女じゃないですか。何言ってるんですか。喋り方くらいで男だと思ってたんですか? 料理が下手な女が居てもおかしくないでしょう〉


 な、なんだと? 何で、どうして俺の周りにはイケメン顔の女が多いのだ! 新しい人生で二度も『お前女だったのか』とか漫画的な事をやるとは思わなかったよ! 魔法で水浴びしてる時一緒にどうだ? とか言わなくて良かった


〈イケメンってより、獣顔ですけどね。三度目は何時でしょう〉


 縁起でもないことを言う全魔眼は無視して視線をアビーとノアに戻す。視界に入って来たコレットさんは安心してように胸を撫で下ろしている。マールはどこかつまらなそうだ。あれ? もしかして泥沼狙ってたのか

 しょうもない考察は置いておくとして、実は女だった二人を見てみよう。全魔眼との会話中に二人は随分と仲良くなったようだ。アビーが既に土下座をやめているノアを名前で呼んでいた。名前呼びのハードルが男である俺より低い気がするが、愛称では呼ばせていないからまだ許せるな


 二人の事をじっくりと眺めていると俺の視線に気がついたアビーが手をこまねく。会話にはいる気がなかった俺に取ってはありがた迷惑な行為だが、筋肉が俺を呼んでいるなら仕方がない


「なんでしょう?」

「いや、ノアとの会話も悪くないが。キリルとの話もまだ途中だったからな」


 ああ、そいえばそんな話をしてたんだっけ? 俺自身の事だったのに忘れてた。思えばアビーもノアもいきなり頭下げるのが悪い。俺の処理能力はそんなに高くないのだ


「俺の故郷を教えられないって話でしたっけ」

「ああ、立場上な。でも、ゼロではない。フィエの街まで行って、その街を治める魔王に詳しい事を聞いてくれ。ボクからはどこまで話していいか解らん」


 なんか村を探すの面倒ごとっぽくてヤだな


〈ビオの敵は諦めますか?〉


 それはそれ、これはこれだ。諦めるわけにはいかない


「キリル魔王様から魔王様を紹介されたのか? 凄いじゃないか」


 深いフードの中から尊敬のまなざしを向けられる。そんなに凄いのだろうか。知り合いが魔王しかいないって以外と悲しいものだよ。友達ほすぃ

 まあ、コレットさんは別として。マールさんとは仲はいいかもしれないな。おもしろがってるだけかもしれないけど。俺の考えなんて解るはずもなくコレットさんとマールさんは馬車に戻っていく。マールさんへの説教がぶり返したのは言うまでもないかな


「主様。そろそろ」

「解ったもういく。じゃあ、すまないなキリル。これが魔王の住んでる屋敷の場所だ」


 お礼をして四つおりにされた小さな紙を俺が受け取ると、アビーは馬車へと歩き出す。コレットさんは御車台へ、マールさんは屋根の上と出発の準備は既に完璧だ。離れていく彼女を見て、俺の隣にいるノアは少し悲しそうな雰囲気を出してた

 あ、いけない。いい忘れた事が


「アビー。故郷である村にはまた泊まりますか?」

「ああ、子供達の供養もしたいしな」

「それなら、大量の甘味でも持っていくといいと思います。とっても喜びますよ」


 笑顔の俺を不思議に思ったのか首を傾げたアビーはほんの少し動きを止めてから馬車に乗り込んだ。コレットさんが馬っぽいのに鞭を入れる。ひと鳴きして馬車はゆっくりと前に進み始めた

 窓から顔を出すアビーと屋根の上から手を振るマールさんに、俺も手を振り返す。ノアの振り方は尋常じゃない勢いで、風を切る音が随分と五月蝿い


「あ、キリル様。この腐った食べ物が入った鞄を約束通りお返ししましょう」


 馬車が少し離れた所で、エルフの聴力がある俺でなければ聞き漏らす音量の言葉が聞こえた。それから直ぐ、マールさんを飛び越えて俺のリュックが地面に落ちる。リュックの中から何かが潰れた音がしたが、海水漬けされた魔物肉だろう。すまない、食べてあげられなくて

 後中に何が入ってたっけ? ああ、ギャンブル用に確保しておいた魔核か


 シュンと肩を落とすノア。解らなくもない。あんなに素晴らしい筋肉が離れていくのは俺だって寂しい


〈この獣人のは、主よりももっと純粋な感情ですよ〉


 酷い言われようだ。んん? なんかクサくない。そう言えばノアって昼飯作ってたんじゃなかったっけ

 後ろを見れば予想通り鉄の鍋が泡を噴いていた


「わあ、ノア。ノア、アレ見て」

「なんだいキリル。僕の幸福感と消失感の余韻を味あわせてくれても、ゲッ!」


 やっぱり可哀想な感じに調理された食べ物を見て、ノアは大慌てで鍋を触った。熱せられた鍋で火傷をするという下手なオチはない。ノアは手袋をしているし、露出した肌はぱっとみどこにも見当たらないからだ。熱くて落としそうにはなったが

 それにしても、ローブもブカブカでゆとりがあるなとは思ったが、まさか女だったとは。料理が下手で僕っ娘、非戦闘系のサポート要因か。むう、ケモナーには人気が出るんでなかろうか?


「き、キリル。少し焦げてしまったが、それでもいいだろうか?」

「構わないですよ」


 汁物なのに野菜は真っ黒焦げだった。俺の指導がいけないんじゃないよな

 昼食と言うなの激闘を終え、俺らはフィエの街へと向かう準備をする。まあ、準備と言ってもやる事は野菜を切ったナイフだけを洗い、火の処理をするだけなんだけどね


 準備が出来次第、すぐに出発だ。次にアビーと会うのは何時になるだろうか。正直ついていきたかったが、折角話をつけてくれたのだから行く他あるまい。今度会う時までに! とはいかないが、それまでにそれなりに強くなっておかないと行けないな


「なあ、キリル」

「なんですか?」


 準備が終わり自転車にまたがるとノアが俺の横にちょこんと立っていた。近づく時の気配が薄くて、少しビックリする


「僕が女だっていったとき驚いたよな」

「ん? はい。驚きましたが、それが?」

「女でも友達でいてくれるか?」


 何を言っているんだろうこの駄犬は?


「当たり前じゃないですか。なんですかその質問」

「いや、いいんだ。ありがとう」


 フードで表情が見えないが、どこか嬉しそうだ


〈おお! 主。主人公がフラグを拾うみたいですよ!〉


 生憎だが守備範囲外だ。俺はケモナーじゃない。それにコイツの狙いは解っている。尊敬するアビーと会う為に、俺と友達を継続しようって魂胆だ! 女だからって所は意味不明だが、それ以外考えつかん!


〈……そ、そうですか〉


 ノアのおかしな質問を受けて二時間。とにかくアビーとの関係について聞かれた。懇切丁寧に話してやったよ。俺はいつかアビーを倒して結婚するんだとね! それと、上り坂が終わり、下り坂になった。漕がずに下るだけの楽そうな俺を見てノアが一言


「僕も乗れないか?」

「いや、これは努力してここまで漕いだ者にだけ与えられる幸福な時間なんで、お断りです」

「硬いことを言うな。友達だろう?」


「とっても便利な使い方ですね!?」


 アビーとの再開後、更に距離の縮まったノアを無視して前を見る。俺の視界には既にフィエの街が見えていた。鋭角な屋根の多い綺麗な街だ。魔王の印象アビーしかないけど平気かな?

 ま、なるようになるっしょ





 思ったよりも進みませんでした。ホントなら次の街に位行くつもりだったんですけどね


 さて、前回の続きでも話しましょうかキャラ作りの話。サブキャラの方が作りやすいんですけど、キリルとか書くのが一番ツラい。アウグストが一番書きやすい。二番目バネカー

 主人公にしちゃおうかな。タイトルかえなきゃ


〈私が一切でないので却下〉




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