Q:一番魔力を消費する魔法は? A:回復魔法らしいですね
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五歳になった
現在は父の格闘の授業だ。俺も受ける様になってからユリアーナとほぼ毎日手合わせをしている
たった今ユリアーナの拳が俺の頬を掠めた。掠めただけだというのに、頬の肉は波打つのでなく抉れた。この人は俺を殺す気なのだろうか。当たったら首から上が取れるわ! もしくは爆発四散
ユリアーナは格闘のセンスはあるが、対人となるとどこまでも真っ直ぐ突っ込んでくる。なので今のもギリギリ避ける事が出来た。避けるといってもエルフの危機感知能力に引っかかった脅威から全力で横に飛んだに過ぎない。地面に顎をぶつけた
顎をぶつけとと同時に、空気の入った紙袋が潰れた様な重い音が聞こえる。後ろから聞こえてきた音の正体を確認すると血の気が引いた
ユリアーナの拳が木に埋まっているのだ。まるで笑えないが、拳分の幹がコルクの様な形状で地面に落ちている
日に日に強くなっているとは思っていたが、ここまで来ると本当に死んでしまう。いや、毎日死にそうにはなっていたんだけど、昨日まではもう少し可愛かったはず
「ユリア。今日は随分と気合いが入っているな」
切り株に腰を降ろしている父がそんな事を口にした。龍族の常識をエルフ寄りの俺に当てはめないで欲しい。死んじゃうから
なんで、ただ気合いの入った姉に命を奪われそうになるんだ。おい! 異世界。過酷すぎるぞ! もすこしイージーにして、ルナティックをクリアできる程、俺のメンタルは強くない
なんでまたユリアーナがこんなに気合いが入っているのか。見当もつかない
「お父さんは黙ってて! どれだけ才能で負けてても私は、姉として魔法でも格闘でも負ける訳にはいかないの!」
あ、見当付くはこれ。姉の威厳という奴か。考えてなかった。どうもユリアーナの事は姉というより、妹の感覚になってしまう。仕方がないだろう! しょうがないだろう! 俺は精神年齢二十二なんだ。こんな小さな姉がいてたまるか!
ぶっちゃけ魔法の成績は、既に俺の方が上だ。そりゃそうだろう? 四歳の頃は、もう好き勝手魔法の自主練をしていたんだから
知識だって前世を受け継いでる。魔法の才はエルフ。負ける要素がない
その分格闘センスはユリアーナに勝てる見込みはない。一応筋トレとかしてたのが幸いしてか。危機感知と併用で無様に避ける事ができる。華麗に避けれる様になるのは何時になる事やら
「おーー」
ん? 父の様子が変だ。切り株に座って俯く父の顔は、俺の小さな背からでも解らない。身体を震わせ、絞り出された声
「お父さん、だと!?」
し、しまった。父はまだ知らない。ユリアーナは既にパパを卒業していることに!
父が家にいるときだけはパパと呼んでいるが、仕事でいない所では「お父さん」になっている
ユリアーナも失言に気がついたのか。大きな目を更に開いて父を見た
「ぱ、パパは黙ってて!」
この訂正はどうだ?
「もう、娘にもパパと呼んでもらえないのか……グス」
駄目だったか! 俺がパパと呼び直すのは、既に恒例行事になっている。しかし、ユリアーナはこれが始めてだ。精神的ショックが俺よりも大きいんだろう
マジで泣いてやがる。これは、あれだ。将来嫌われるお父さんの典型例だと思う。娘に依存し過ぎだ
父はゆっくりと立ち上がった。あ〜。凄く嫌な予感がします
「これよりお父さんがお前達と直々に組み手をする! さあ! 掛かって来い!」
掛かって来い! その言葉が聞こえた瞬間。危機感知に何かが引っかかった。身体が動く前に、俺の意識は遮断された
目が覚めた時もう父は仕事に行っていた
五体満足で目が覚めた事に感謝しながらリビングへ行くと、俺に気がついた母がこんな事を口にした
「あら、目が覚めたのね。右腕一本で済んでよかったわ」
「どーゆーこと!?」
「言葉通り」
恐い恐い恐い! もう訓練の域を超えた、ただの一方的な暴力じゃないか! 殺す気か! 家庭内暴力だい!
「冗談よ」
母よ。冗談は時と場合を考えてくれよ。日々死にかけている俺にそんな心の余裕はない。いや、訓練以外は平和そのものだけんどもさ
安心から溜め息がでた。それを見計らって母がもう一言
「骨一本だけだから」
アウトおおおおおお!
どんな表情だったのか、俺の顔を見た母は満足した様子で台所に消えていった
ユリアーナが起きて二人で遅い夕食を済ませる
俺が一瞬で気絶させられてからユリアーナは頑張ったらしい。父との組み手で五分堪えたとか。スゲ
今日のがんばりからか、ユリアーナは夕食を食べ終えるとふらふらと寝室に向かった。お、お疲れさん
俺も今日は特に疲れたので、今試している魔法の構成物質。その最適な量でも考えて寝よう
舟漕ぎをしつつリビングにある机の真ん中を見ながら、頭の中でどこを魔力で補い、どこを知識で補うかを考える
どうも今世の頭はずば抜けてよく、考察をしている間は物忘れとは無縁になる。記憶力も相当いい。まあ、忘れる物は忘れるのだがね。まず、今世父の名前を忘れた。困らないけどさ
暫くすると母が木の器に羊に似た家畜の乳を持ってきてくれた。温かい羊乳は、ほのかに甘い。甘味の少ないこの世界でミルクはチョコレートにも匹敵するね!
「何を考えていたの?」
おっと、この質問はよろしくない。言った所で理解もできないだろうし、何より変な目で見られるに決まっているからだ
「いや、特に何も考えてなかったよ」
最近はこの家族に対する接し方も大分親しくなってきた。親友といっても過言ではないね
母がミルクを一口飲んで笑う
「うっそだあ〜。時々難しそうな顔して唸ってたぞ」
「顔に出てた?」
「いや、全く」
かまをかけるか。いや、俺の口がユルいのか
「まあ、いいたくないのならいいさ。暇そうだし、座学でもする?」
「やる」
考えるよりも先に声が出た。魔法の勉強は楽しすぎてヤバい。ずっとしてたい
母の初めての授業はまず座学から入った。驚くべき事にこの世界は雨のシステムをきちんと理解できていたのだ。『小説家になろうぜ』というサイトで時々読んだ物にはそんな異世界はなかったはず
意外と発展している世界なのかも知れないな。ま、この世界の魔法ではそんなシステム知ってても意味がないのだけどね
構成物質まで考えなきゃいけないこの世界の魔法が憎い。もっと簡単に魔法を使いたかった!
「じゃあ、回復魔法の授業と行こうか」
お、それはラッキーだ。この世界の医療にも触れてみたかった
ちなみに母は回復魔法のスペシャリストらしい。ハイエルフは全員が回復魔法の使い手だが、母は頭一つ飛び出た使い手なのだとか
昔父が大けがをした時、内臓から綺麗に治したという。父が内臓を傷つけるくらいの強敵がいる事に恐怖を覚えるが、恐怖よりも内臓を回復できる母の魔法を教わりたいと思っていた
解らない事へ使う魔力量は計り知れない。だからこの世界の回復魔法を使う人は結構少ないと聞く
なにより俺は内臓系に弱い。専門は筋と骨だ。骨折なら魔力なんて消費しないで完治させる事ができると思う。後得意なのは顔のパーツ。目、耳、鼻の三つは構造も覚えている。単体で作り出したらめちゃくちゃ気味悪かった
回復魔法の授業だが、残念な事に五歳児にもわかりやすく説明していたため、全て知っている事だった
始めに、身体の中には血が入っているのよ〜。っていわれたとき、察せた。いい復習になったと思おう。一般教養範囲だけど
「キリルにスキルの説明はしたかしら?」
回復魔法講座・入門編を聞き終え、新しいミルクを入れてきてくれた母から始めて聴く単語が飛び出してきた
「スキル? 聞いたこと無いな」
「スキルは五歳を過ぎた辺りから目覚める特殊能力よ」
俺にいわせれば魔力そのものが特殊能力だ
「特殊能力ねえ」
「そ、スキルは大きく三つに分類されるの
一つ目は、ノーマルスキル。皆略してスキルって呼ぶわ。一般的な物で、努力次第で自分で身に付ける事ができる『錬金術』とか、『調合』なんかが一例ね。
二つ目は、レアスキル。一般では見られない珍しい物が多くて、自力で手に入れるとなると完全に才能が左右してくるね。簡単な『鑑定』や、一部の『魔眼系』、一部の一族だけが使える血統スキルもここに分類される
最期は、スペシャルスキル。世界でも百人もいないといわれてるわ。相手の使える魔法とか解るレベルの完全な『鑑定』や、危険な『魔眼系』ね。お母さんが見た事あるのは凄かったよ。お父さんの土手っ腹に穴をあけれる程強力な物だったわ」
あんなんでも龍である父に穴をあけられるのはどんな奴なのかと思っていたが、スキルが関係しているのか。スキルに寄って今後も左右されると
これまた楽しみが増えた。努力でどうにかなる物は今後の生活の為じゃんじゃん取り入れていこう
六歳で何話か伸ばすか伸ばさないか……
2017年4月28日誤字脱字修正。会話の微妙な修正




