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Q:ここはどこでしょう A:剣と魔法の世界


 3984文字


 誰かが部屋を出ていく音が聞こえて目が覚める。ゆっくりと目を開けた。今日も今日とてログハウスの様な天井を見上げる。窓から入る朝日が温かく、目覚めはもの凄くいい


 俺がこの天井を見る様になって一年が経過した。わかったことは多々ある

 一つ、俺は剣と魔法の世界に転生したという事


 いいたい事はわかる。俺だって笑ってしまうよ。その手の知識に疎い訳ではないにしろ。実際に自分がこういう事にあると、真っ先にわき上がった感情は、異世界に対する『興奮』


 ……などではなく。あの後の前世の事で頭がいっぱいになった。『不安』一色

 父さんは俺が死んだ後、後を追う様に自殺してしまったのでは無いか。とか、おっぱいだか胸筋だかわからない女性達のデータがちゃんと後輩の手に渡ったか。とかだ

 別世界にいる俺に、それらを確認する術がないと割り切れる様になったのは、この世界に来て半年経ってからだ


 二つ、筋骨隆々の父親は龍の一族。始めて見たときはギャビ・ガルシアを連想させたお義母さんは、今世の母親で、ハイエルフ。決してガルシアのガタイではない。そして、この世界で始めてみた幼女は妹ではなく、姉


 これも訳がわからない。父も母もどうやら、かなりの血統、らしい

 父は高名な龍族の次男坊。長男が一族を率いているにもかかわらず、好き勝手に生きている。これもそう聞かされた

 父よりも凄いのは母だ。この世界にハイエルフは九人しかいないらしい。ただのエルフはひと月探せば二人は見つけられるとか何とか


 結果。キリルと名付けられた俺と姉のユリアーナは、すんごい一族とものすんごい一族のハーフだ

 ユリアーナは耳の長さでエルフと一発でわかるが、俺はさして人間とかわらん

 う〜ん、サラブレット


 父方の祖父。黒龍の色を受け継いだ黒目黒髪に、ユリアーナ程の長さはないにしろ尖ったエルフ耳。肌の色も橙色で、耳を隠せば日本人で通りそうだ。エルフ補正でかなり整った顔だというのは確認済み。前世の地味顔の何一つも継承していない


 三つ、姉は見た目が母親似だが、それ以外は父親似。俺は見た目は人型に変身中の父親似だが、それ以外は母親似


 これに関してはそのまんまだ

 龍族の戦闘センスに腕力、生命力、強者を嗅ぎ分ける事もできる異常に鋭い嗅覚はユリアーナに受け継がれ

 エルフの魔法センスに聴力、視力、生命の、特に嫌な気配を感じる感覚はキリルこと俺に受け継がれた


 見た目は逆だ。ユリアーナがエルフで

 俺は龍族、が人に変身したときの姿にそっくりだとか。最初は龍が変身する事に驚いたな


 四つ、今暮らしている所は山の上の方にある小さな村で多くの魔族が住んでいるとの事


 この世界には三つの大陸があるらしいが詳しくは教えてくれない。だから俺がどの大陸のどの山に住んでるかはよく解っていない

 村は村で、親同伴のもと何度かで歩いた事がある。人口? 五十人前後の村だ。小さいのか大きいのかは都会の知識しかない俺にはわからん


 五つ、三歳までの記憶がない所を見るに、この世界の言葉と文字に関しては身体が馴染んでいる様子


 これは最早何も言う事はない

 日本人の赤ちゃんが毎日、来る日も来る日も日本語を聞いて勝手に理解するのと同じだろう。あれって毎日英語と日本語を使い分けると両方話せるらしいよ。どうでもいいね


 まあ、大きくはこのくらいかな。


 ああ、最期に前世の記憶に曖昧な所があるってのも話しておこう

 曖昧な所があるって言い方も、どうかと思うんだけどね。前世の名前が思い出せないのだ

 俺の名前どころか父さんや、後輩の名前までだ。どんな人で、どんな人生を歩んできたかは覚えているのに名前だけがてんで出て来ない

 これも前世を心配するのと同じ様に、考えても無駄そうだ


 転生から今日までの事を考えていると、玄関の扉が開く音が聞こえる。もの凄く慎重に開けたな。ゆっくりゆっくり扉を開けている音がまだしている

 寝返りをして、隣で寝ている美しい幼女(姉)の肩を揺する


「姉さん。父さんが帰ってきたよ」


 一度そう声を掛けると、ユリアーナの意識は覚醒して目を大きく開ける。開けた瞬間、お腹の毛布を取っ払い「パパ〜!」と叫びながら、四人の寝室を飛び出していった

 ここは家族全員が寝る部屋。さっき部屋を出て行ったのは母で、玄関から入ってきたのは仕事を終えた父だ

 俺もベットから出るとしよう。玄関で娘に腰回りをホールドされているであろう今世の父の元に向かう。一応この家の家族ルールで朝昼夕の三食は一緒の食卓に着く事になっている


「父さん。おはようございます。お帰りなさい」


 案の定ユリアーナにホールドされている父に挨拶をする。寝癖頭のユリアーナのホールドは可愛く見えるが、あれは非常に危険である。一度された時は死ぬかと思いました。というか母が回復魔法を使えてなきゃ死んでた。見た目は子供でも中身は龍を色濃く受け継いだ化け物だ

 そんな脅威の大好きホールドを受けて笑顔の父は、俺の挨拶で苦笑いになる


「相変わらず他人行儀だな」


 ああ、また素で挨拶してしまった。それもしかたがないだろう身体は肉親だが、心は他人だ。名前が思い出せない前世の父さんだけが俺の心の肉親。どうしても一歩距離を置いてしまう

 俺の中では一年そこらで家族にはなれない。しかし、向こうはそう思ってないので挨拶し直そう


「父さんおはよう。おかえり」


 すまん父よ。精神年齢二十一歳にしてパパとは呼べないんだ。それ以外の理由もあるけどさ


「なあ、ルマリ。四歳ってもうパパと呼んでもらえない歳なのかな」

「アナタは気にし過ぎですよ。……キリル。パパって呼んであげなさい。呼ばないと後で泣くんだから」


 ルマリと呼ばれたハイエルフ。というか母がいつの間にか俺の背後にいた。この人の接近はいつも気がつけない。唯一部屋から出て行くときだけ気がつけるが、多分わざとだと思われる

 気配の感じ方か、少しでも音に敏感になる為の訓練の可能性が高い。四歳児にやらすな


 そして背後から小声でかけられた言葉には涙が出そうだ。握りこぶしを作りゆっくりと口を開く


「お、おかえりパパ」

「ああ! ただいまキリル!」


 上機嫌になった父が俺とユリアーナに合わせて屈むと抱きついてきた


 ほら着たこれ!

 これがマジで苦痛。感覚的な意味でも、言葉の表現でもなく、身体的苦痛なのだ

 背骨がきしむ。何度タップしても聞いちゃくれない


 長い包容を乗り切ると朝食の準備をする。準備といっても運ぶだけだ。木のボウルに入った朝食をリビングに持っていくだけ

 食事を済ませると父は寝てしまう。夜中、魔物らが村に入らないよう警護をしている


 父が寝て母の家事が終わると今度は魔法の授業が始まる

 教師は勿論母だ。最古の魔法を使うハイエルフから教わり、父が起きると龍種から素手による格闘を教わる。サラブレットがその親に教授されたら、そりゃ偉い事にもなりますわ

 といっても俺はまだ見学だ。五歳になるまで両親は俺に何も教える気がないらしい


 なので、暇な時間を見つけては勝手にやらしてもらっている。母がユリアーナに教えている事は以外にもためになったので、毎日聞かせてもらった


 この世界の魔法は、かなり万能に近い

 この世界も前の世界も、一年見てきた自然現象は大体同じ。自然現象が同じなのだからこの世界を構成している物質は同じはずだ。村の畑にある鍬は鉄製だったし、家の窓はガラスだ

 前世で将来楽をする為に勉強していた事が役に立ちそう。この考えに思いついたときは前世に感謝した

 生命がどんな進化をすればできる様になるのかは知らないが、この世界では小さな小さな一生命体が全ての物質を作り出せる不思議な力をもつ。その名も〈魔力〉


 その魔力を用い、物質を作る。そして知識を用いて、形を成す


 勿論魔法を使うのは簡単ではない。知識のないものを作るには代償として、大量の魔力を必要とする

 逆に言えば、知識があればその分必要な魔力が減る

 作れない物の例を挙げるなら、タイムマシン。これはどんな物質で、どんな構造になっているのか。俺には、というか天才といわれる人にもわからない。だから作れない

 作れる物の例を挙げよう。例えば、水。水素と酸素で出来ているので、この二つを魔力で作りだして、構成する。簡単な物は化学式を思い浮かべるだけでいい


 某錬金術漫画にかなり近いが、あの世界はないものは作れない

 しかし、この世界ではない物も作れる。なにより、わからない所は魔力でゴリ押す事ができる

 医療従事者を目指していた俺の知識はそういった化け学向きではないが、一応どんな物がどんな物で想像はつく。後は魔力で補う方法を使えば、いつか電子レンジくらい作れるだろう


 おっと、これをいい忘れてはいけない

 魔力で作った物質は任意に消す事も出来た


 どれだけバラバラに壊しても消えなかったのに、消えろと念じたら綺麗サッパリなくなったのだ

 魔法は奥が深い


 だからこそ俺はどんどんこの世界が楽しくなってきた

 この持っている知識と、これからの知識。そして、この世界特有の魔力で俺は誰よりも楽をして生きていく事を誓う


「キリルどうしたの? 変な笑い方して」

「あれ? 姉さん魔法の授業は?」

「終わったよ」


 なんと、休憩を何度かは挟むにしろ三時間はある魔法の授業が終わってしまったのか

 変な笑い方ってなんだ?


 この後は父を起こし昼食を済ませたら、素手による格闘の授業だ。前世では非筋肉系だったので今世では筋肉が欲しい

 ユリアーナは父似で格闘センス抜群だが、魔法は得意ではない。母曰く才能があるようだが、ユリアーナに出来て、前世の知識持ちの俺にできない事はない。魔法に限るけど


 これまたみっちり三時間授業を終えると自由時間だ。外に遊びにいくも良し、家で寝てるも良し

 俺は毎日遊びにいく。村の方には行かず、家の裏手にある森に入り魔法と筋肉造りに勤しむのだ。一応村の中なので魔物はいない

 暗くなったら家に帰り、夕食を食べて仕事いく父を見送る


 これが一日の大体のサイクルだ





 魔法の件は某漫画に強く影響を受けてる感が否めない


 でも、自由度はこっちの方が高いからいいかな


 2017年4月27日誤字脱字修正。描写に少々の手入れを加えました。そこまで細かく呼んでる人はいないかな?

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