Q:声をちゃんと抑えてますか? A:無論、小声です
暗い洞窟の中をヴェネの少し後ろを歩きつつ進んでいく。気配では近くにいないのは確かなのだが、魔物が徘徊している洞窟を堂々と歩くという神経がおかしい。俺だって七年間ひっそりと洞窟を進んで来たというのに。今も暗視スキルは欠かせない。なかったら一寸先は闇になっている事だろう
しかし、気配に頼るのもよくないのかもな。彼女に気がつけなかったし。声をかけられた時は、突如現れた様にしか感じなかったもの。全魔眼は見えたか?
〈いえ、盲点を見ているみたいに不思議な感じです〉
何その感想。解りづら。そもそも、全方向を見てるお前に盲点とかあんの?
「あの、幾つか聞いてもいいですか?」
「ん? 構わないですよ。答えられる物であれば、幾らでも」
ボーダーは解らないが片っ端から質問攻めをしてやろう
「なんで魔具とやらの事を調べているんですか?」
「教えられないです」
「冒険者ですか?」
「教えられないです」
「この洞窟にきたのは何時頃ですか?」
「教えられないです」
「子供達が捕らえられていると知って思った事はなんですか?」
「やっぱり即刻救出ですかね」
「どのくらい腕に自身がありますか?」
「教えられないです」
「どうしてそんなにも堂々と洞窟を歩けるんですか。恐くないんですか?」
「気にする程の事でもないので」
「読心持ちですか?」
「いいえ」
「主に使うスキルはなんですか?」
「教えられないです」
「歳は?」
「死にたいんですか?」
「貴女の事を信用してもいいんですかね?」
「それを決めるのはキリル君でしょう」
「好みのタイプは?」
「私と同じ、美形の両性愛者ならどちらでも」
こ、コイツはヤバい。ガチのヤツだった。最期の質問真顔だった! 結局、好みと読心持ちでないかの質問にしかまともに答えてくれてないじゃないか
試しに聞いてみたが、嘘かホントかも解らん。ふと、目の前を歩く魔族は足を止めた。振り返った彼女は人差し指を立ててこういった
「さて、キリル君。この先に三つの分かれ道があります」
「え、そうなんですか?」
気配を感じ取れはするが、洞窟の構造までは解らない。この魔族のスキルか? スペシャルスキル・マップとか。もしもそんな物があるならば是非欲しい
「この洞窟は中央の大部屋に、大部屋を中心とした四方の中部屋のある形をしています。幾つか狭い道があるのですが、この先の分岐はその小さな道の一つです。多くな道程中部屋と大部屋に繋がっているのですよ」
「なんでわかるんですか」
「教えられないです」
「さっきからそればっか!」
「スキルを隠すのは当たり前でしょう」
全く持ってその通り。彼女は立てた指を道の先に伸ばす
「君はまず、左に迂回して中央の大部屋に向かいなさい。左の道は一直線に中部屋に繋がっています。中部屋には子供達がいますが、先に大きな通路を見つけて、魔獣を倒すのですよ。いいですね?」
「貴女は?」
「私はこのまま一番手前の中部屋の片付けをします。この部屋にいるのは魔物だけなので。その後は子供達の救出をします」
だからなんで……聞いても無駄か。どうにも信用ならんヤツだが、複数のワーウルフを相手にするのは骨が折れるやも知れん。一対一でさくっと終わらせよう
「左ルートなら巡回中の魔物もいないでしょうしゆっくり行くといいですよ」
言うだけ言って彼女は再び歩き出すその足取りは軽やかだ。巡回ルートまで把握済みって、何日も前からここにいたのか?
考えているうちに三つの分かれ道が見えて来た。左は小さな道で、真ん中はどでかい、右は前者達の真ん中くらいの大きさだ。魔族は親指を立てて俺に向ける。俺が左の道に入った後で手を逆さにでもするんでなかろうか
「じゃあ、俺はこっちですね」
「ああ、頑張ってくれたまえよ」
キリルが細くくらい道を進んで行くのを見送ったヴェネは静かに微笑んだ。一度深呼吸をした彼女はスキップで真っ暗な洞窟を進んでいく
有頂天の最中、百メートル先の闇の中に気配を感じ取った。二つの気配。洞窟内を巡回中のワーウルフはまだ彼女の存在に気がついていない。ヴェネは静かに、ゆっくりと左手を押し出す
それだけで、たったそれだけで二匹のワーウルフは何かを感じること無く命を落とした。ヴェネは風を操り、挽き肉を作り上げたのだ
「ゴメンね。ここにいる魔物は、全員助ける事は出来ない。恨むなら、フェンリルの眷属についた自分にしてくれ」
別の場所の巡回をしていたワーウルフが、横を通り抜ける風を感じた瞬間、崩れ落ちたり。異変に気がつきそうになったワーウルフは、顔にかかる風邪を感じた後の思考がなくなったりと。一方的な虐殺が行われた
洞窟の入り口から最も手前にある中部屋。ここは魔物達の部屋だ。外敵からの襲撃に直ぐ対応できる様、ワーウルフの魔獣が考えついた結果。現在は巡回以外の、ほぼ全ての魔物がこの場で仮眠を取っている
ヴェネは肌で感じる風を頼りに、魔物達のいる大まかな居場所を確認する。その後、風を使い。音を収束させ、置きている魔物の位置を把握した
頭の高さまであげた手を、ピアノを強く鳴らす動作の様に降ろした。置きていた魔物が同時に、綺麗に頭を落とされた
中部屋の中央までゆっくりと歩いて来たヴェネは、掌で顔を仰ぐ様に手を挙げた。完璧に、寸分の狂いもなく、寝ていた魔物の下、地面から石の刺が頭を貫く
「……ほ、殆ど終わってしまった。ついつい、調子に乗ってスキルまで使っちゃったし、こんなもんか。後は美少年に任せよう。あ、子供子供」
小走りで走るヴェネの視界。共有眼を用いて視界を盗み見していた全魔眼は一人で圧倒されていた。桁違いの強さを持つ魔族の存在を自身の主に言うべきか。言わぬべきか
ここは言わぬべき。暗視スキルに枠を使っているため、知覚強化は出来ない。目の前に立つ青い体毛の男から気を逸らしてはいけない
「魔獣……ですか」
「言葉を話せたら人間にしか見えないか? 雑種よ」
「どちらかと言うと、ミュータントかな」
〈その会話が通じるのはこの世界にいませんよ〉
ついつい口に出たツッコミで話すタイミングを失った全魔眼は決めた。あの魔族の事は後で報告しよう。と
もう少し伸ばせると思ったんですが、なんでこうなった?
誰の目線からでもない文章。むずくね!? コレから時々書く予定はあるんですけどね。修練します




