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Q:アビゲイルさんこのたびの目的は? A:なんだっけ


 剣と剣がぶつかり、幾つかの火花を散らす。マールさんの斬撃は、首、肩、大腿と血管の多くが集まる所ばかりを狙ってくる。かなり直線的な攻撃だ。しかし、手数が多く。繊細

 十数秒という短い時間で打ち合い。マールさんの剣士としてのタイプが解った。素早さと正確さで攻め、相手のミスと呼吸の隙間を討つ。堅実な剣士。俺の使うアダフさん直伝、普遍の剣術とはまるで違う

 チョロく警戒心の強いマールさんの事だから、一瞬でケリを付ける最速一撃必殺系だと思ったのに! 長い事剣を振るタイプでないと思ってたのに!


 通常の速さで換算する十数秒は、百倍の世界で行動する俺に取っては余りにも長過ぎる。右手はもう限界に達した。筋肉が震えて力が上手く入らない。でも、ここで力を抜いたら一刀両断されそうだし。俺はどうしたらいいんだ。速いし多いんだよ!

 寝ていた魔族も、包帯を外すのを手伝ってくれている魔族も、皆が俺らに注目する


「村長ヘルプミイイイイイ!」

「ま、マールさん。何をやっているのですか!?」

「おやめくださいマール様!」


 村長とさっき足を再建した魔族に声をかけられてマールさんの視線が一瞬外れた。右手限界、直ぐさま左手に持ち替える。これならいける

 一歩前に出て、マールさんと力が均衡する様に剣を押し込む。連撃を防ぐ為だ。押し込む力で剣が細かく振るえ、小さく連続的な金属音を出し続ける

 動きが止まったのを見て、すかさず村長が動いた。ナイスだ! そのままマールさんを抑えてくれ!


「はいはいはい! チャンバラは終わりだ。マールも剣を収めろ」


 三度なる手拍子にその場の全員が動きを止める。落ち着いた声の主は勿論アビゲイルさんだ。周りもざわつく。出来る事なら手足無い魔族達は安静にしてて欲しいんですけど

 マールさんと暇つぶしで手合わせしてたんだから、一緒に来るのは解ってたことだ。いきなり斬り掛かって来たものだから気を取られ過ぎた。魔王をどうにか出来る力は持ち合わせていないぞ


 家の中に入って来たアビゲイルさんは、一度室内を見渡した。その後に俺を見る。未だに剣を突き合わせていた俺とマールさんは細められたアビゲイルさんの目を見て直ぐさま剣をしまう。マールさんは鞘に、俺は消す


「少年。ここで何をしていた?」


 細くなった目が元に戻る。怒っているという気配はない。むしろ、未だに俺を睨み付けるマールさんに解ってもらおうという心遣いを感じた


「治療をしてました」

「何をいう!? 血のついたあの剣でか!」

「ええ、まあ。マールさん話聞いてくれないんですもん」


「ふむ、この落ちている足に関係があるのかな?」

「はい。今から治療しても良くならないと思ったので、ぶった切って新しい足を作りました」


 何を言ってるのか解らない。そんな顔をアビゲイルさんとマールさんがした。百聞は一見に如かず


「見せた方が速いですね」


 俺は腕の無い魔族の隣に座る。七年前の俺の様に前腕がなくなっている。健側をしっかりと見て、触ってから観測の傷口付近に触れる。もう一度治した事なある怪我だ。前よりも最適化して無駄な魔力を省けるだけ省いてみよう


 骨、筋、神経、血管が傷口からみるみる伸びて形を成していく。腕、手と形になった人体模型。最期に皮がそれを覆う。再建完了だ。魔力の最適化も図れてかなりの量を節約できた。あと四、五回再建する事が出来れば、前腕は本当に魔力なしに出来るかもしれない

 治療を終え、二人の方を向く


「元よりある足を治すよりも、こっちの方が速く、尚且つすぐにでも動けます

 そのため、そこのお兄さんの足を切ったんです」

「手足を再生させるレベルの回復魔法。まるでハイエルフみたいだな」


 まあ、母はハイエルフですからね。俺はそのハーフだけど。ハイの半分はどの位置になるんだろうか? 普通のエルフ? それともやっぱりハーフエルフ? どうでも良いかそんな事


「じゃ、じゃあお前は本当にただ治療を?」

「ええ、出来ればもう少し話を聞いて欲しかったです。おかげで右手を使いすぎて力が殆ど入りません。二日は取れませんよこれ」


 早とちりだったという事に気がついてもらえた所で、マールさんからのキツい睨みはなくなった。まあ、勘違いされる様な物をもってたのがいけなかったんだけどね

 右手を開いたり閉じたりして確認するが、本当に力が入らん。右腕全体も重いし、三日もすれば良くなるかな? 最近よく筋肉痛になるな。そろそろ、知覚強化して動ける範囲広がったんじゃないの?


〈今度百十倍試してみますか?〉


 せめて百一からにしてくれ。昨日の身体能力強化魔法で俺は学んだんだよ


〈そっちの方が面白いのですが〉

「治療を続けても良いでしょうか?」

「ああ、すまなかったな少年。村長、この者達の怪我はなんだ? 説明くらいあるだろうな」


 おお、それは俺も知りたいな。なんでこんな酷い怪我をしてるんだ? そこの所を構わず治療を始めちゃったからな。作業しながら聞くとでもしますか。次は足無い魔族でもやるか。再建を使う必要がぱっと見ありそうなのはあと三人か。最初の魔族の例もあるし、まだいそうではあるけど


 さてさて、傷口見せてくださ〜い


「……魔獣が出たのです」

「何? この辺りにか」

「はい。ワーウルフ、しかもフェンリルの眷属でして。遠征中だったグループはこの通りです」


 あ、綺麗な断面図ですね。大丈夫ですよ。直ぐ良くなりますから。再建します

 なるほど、こんなガチムチのガタイ抜群共がのけ並みズタボロなのはそういう事か。狼男の魔獣。あの青い炎を使えるとなれば、厄介なのはこの上ないだろう。ぱっと見炎でやられた魔族がいないのが気になる所だが


「遠征……まさか。初狩りか?」

「……はい」

「初狩りって、じゃあここにいない子供達は!?」


 はい。終了です。見える範囲の怪我は全て治したつもりですが、内臓などもあとで見させてもらいますね

 子供、そうか。この村に何か足りないと思ったら子供がいないのか。元気に走り回る子供がいないんだ。通りで静かで、物足りなくもなるはず


〈初狩りってのは、どれだけ多くの子供を連れて行くんでしょうね。この村で子供を見た記憶はありませんよ〉

「ワーウルフに連れて行かれました」

「魔獣が誘拐だと? なんの為に」

「マール。それはあとだ。村長どこで子供達は連れて行かれた?」


 はい。次は貴方ですよ。おや、この断面図。他の魔族さんよりも新しいですね。なに? 焼かれたから切った?

 炎を使ったは使ったけど、治療の為に切り落としたのか。なるほど


「マールさんマールさん」

「ん? なんか手伝うか?」

「いえ、初狩りってなんですか?」


「ああ、この村特有の行事だよ。村訓として『男は強く。女は美しく』ってのがあるんだ。初狩りは成人してない男の子が、村でも強い男達に護衛されながら狩りを体験するって行事」

「へえ、わざわざすいません」

「いや、いいんだ。解らない事があったら、なんでも聞いてくれ」


 なんだろ? マールさんがなんだかしおらしい。もしかして俺を攻撃した事かな。別に気にしてないんだけど。……今後はちょっとその事で弄るかもしれないけどさ


〈めちゃくちゃ気にしてるじゃないですか〉


 それにしても、今俺が治療してる魔族はこの村でも強いヤツらなのか。おっと、いけない。コイツらに襲われても俺は負ける事は無いだろう。なんて思ってしまった。怪我人にこんな事思っちゃいけないね。不謹慎だ


〈なぜです?〉


 なぜって、魔法で作った物は消せるからだ


〈いざとなったら身体の一部を消すと?〉


 ああ、まあ。壊すにしても色々ルールがあるんだけどね。お前が居なかった間にそういうのは研究済みなんだ。例えば、無機質の物体を作ったとしよう。それは俺の目の届く範囲内にあれば消す事が出来る

 消す物が生物だと触れてないと壊せないんだ。お前が居ない間に眼球を作ったときも、最初消せなくて驚いたな


 話がそれたな。その間に残りの魔族が二人になったのだけれど。残念、もう魔力切れだ。すっごい脱力感。全てを投げ出したくなる程だよ。村長達の話はどこまで行ったのかな?


「では、魔獣の場所は解っているのだな?」

「はい。ここより三日。東にいくと森がございます。ですがフィールドがいともなれば、魔物の数も多く。我々だけでは」


 なんか難しそうな話をしてるな。残りの二人は骨折とかは無く、牙や爪による外傷がメインだ。俺の出る幕は無いが、せめても傷を洗ったりしてあげよう。包帯も綺麗に巻こう

 映画とかである。ウォッカなんかをかける消毒方法。あれって実は消毒としての意味を全くなしていないんだ。病院とかで使うエタノール消毒液はアルコール度数七十とかで、呑むウォッカは高くて四十とかかな?

 消毒するなら六十は低いね。七十、俺は八十は欲しいと思う。最悪スピリタスをかけろ。スピリッツでも可


〈はて?〉


 どうかしたか?


〈ええ、さっきの話で少し気になる所が〉


 さっきってどれだ?


〈後頭部の長い魔族の話です〉


 気になる様な所なんかあったかな。女は美しくの所だとしたら、この村は頑張ってると思うぞ。腹筋はもう少し割って、腕の筋とかももう少し盛り上がったら完璧だと思うけど


〈いや、大人の女性ではなく。少女達の方です。わたくし達、見ましたかね?〉

「マールさん。この村の男の子が居ないのは解りましたが、女の子は居ないのですか?」


 〈早っ!〉なんて全魔眼入っているが、気になったのなら聞けば良いのだ。都合のいい事になんでも聞いてくれといっているのだからさ

 確かに全魔眼のいう通りだ。俺はこの村に着てから子供の姿を見ていない。男の子も女の子も見ていない


「む、居るに決まってるだろ」

「でも俺、村に着てから見てないんですけど」

「キリル。娘達には家から出ない様、言い聞かせているんだ」


「なぜです村長。村の中ならそんな事気にする必要なんて無いのに」

「アビゲイル様だよ。子供達の口から漏れてしまうと思ってね。もう手遅れだが」


 隠したかったのか。理由も何となく解る。アビゲイルさんの性格から察するにーー


「ボクちょっといってくるよ。もう何日も経ってはいるが、遺骨の一つもないなんて可哀想すぎる」


 言うと思った。多分だけど、もう魔王会議の事なんて忘れているんだろうな





 大腿骨頸部内側骨折内転型って骨頭壊死が後遺症に入ってたっけ? 教科書開くのめんどくさい


 さあ! 今回も後書きをやっていきまっしょう!


 凄いビオ君の話書きたい。出会い編とか書きたい。一話で終わりそうだけど……

 ああ、それよりも本編ですよ本編。この村って一話くらいのつもりだったのにまだ出れてない。話を延ばす才があるのかもしれない


〈寝言は永眠してから言え〉

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