Q:これはお前がやったのか? A:マールさん人の話聞いて
怪しい。非常に怪しい。村長のヤツ、辺りを警戒しながらどこに行くつもりだ? しかも辺りを見回す頻度がどんどん増えていくじゃないか。目的地は近いと見た
朝ご飯のあとに消えるのはわかる。この村の長なら、別にどこに行くとかいう必要もないから軽い気持ちで見過ごせたが。ここまで怪しく動くなら話は別だ。一体どんな事を隠しているか楽しみだ
はっはっは! 精々俺の暇つぶしになるんだな!
〈主。村長が小屋に入りましたよ〉
おっと、目的地か。ふうん、普通の家に比べたら大きめの家だな。小汚い事に変わりないが、この家に何があるのかな
全魔眼。透視眼を頼む
〈了解です〉
プライバシー? この世界に来た時になくしちまったよ
木の壁がどんどん透けてくる。エルフの聴覚嘗めんなよ。集中すればこの村の半分以上の音を拾えるんだからな。壁も無い様なもんだ。先に会話を聞いてやる
『皆はどうだ』
『芳しくありません。悪くなる一方です』
『そうか』
なんだこの会話。壁ももう少し透かせば見えそうだ
ああ、見えた見え、た? これは……
〈随分酷いですね。怪我人の山です。ひーふーむーよー……十人って所ですか〉
酷い有様だ。腕のない者、足のない者。腕や足が変な方向を向いた者。皆が各所に包帯を巻いている。その包帯は赤黒く変色していた。一体全体どうなってる。この村ってもっとこう、明るいイメージだったのだけれど。一気に暗く見えるよ
いやそれよりも、気に入らない
〈あの中に行くんですか?〉
「勿論だ。あのまま放っておいたら変形したまま治癒するヤツだっている。つーか、包帯とか絶対変えてないだろ。巻いたヤツ殴りてぇ」
俺は今きっと仏頂面をしているんだろうな。だが知った事じゃない。遠慮はいらん。家の扉を力一杯開いてやった。村長、意識のある怪我人、怪我人に水を飲ませていた村人の視線が俺だけに集まる
村長のヤツは俺がここにいる事が驚きで仕方が無いらしい。お前をつけて来たんだよ。あ、全魔眼。身体を透かして骨だけを見るって出来るか?
〈可能です〉
ではやれ、オンオフは指示を出す。まずはオフ
〈仰せのままに〉
「き、キリル!? なんでここに」
今は無視だ。無視!
一番近くにいた股関節に包帯を巻いただけのヤツの近くで座る。まずは話をしよう。わめく村長は知らん
「こ、子供?」
「見た目が幼く申し訳ない。居ても立ってもいられなかったもので。お兄さんはどこが傷むんですか」
「え、は? 一体君は」
ちっ、面倒だな。全魔眼。催眠眼で質問に直ぐ答えられる様にしてくれ
〈よろしいので?〉
十人もこの反応されたら日が暮れるっての。最悪な症状のヤツは再建するが、十人も無理。可能な限り治療する
〈了解しました〉
「ごめんなさい。時間もありませんので、質問を優先してもらえませんか?」
正直この言い方嫌だな。やっぱり対話も重要なんだがね。答えるよりも速く俺はこの男の体を見る。頭の先から足の先まで、左ふくらはぎが異様にふくれている。なんでコイツ、身体にフィットする様なズボン履いてるんだ?
右手にハサミを作り出してズボンを切る。コツとして、足首の外くるぶし。その踵側からだとハサミが入りやすい。ここはテストに出ません
ズボンを切ると予想通り。ぐるぐる巻きの包帯が赤黒くなっている。包帯も切ってしまおう。ふむ、腫れてはいないな。なんか幾つも開いた穴のような、治り掛けの傷が見える
治療責任者、知識はなくともせめて包帯変えて。あと、全魔眼。オン
「その左ふくらはぎ、左の腰も痛い。歩けないくらいだ」
この村人はこっちを向いて答えるが、生憎表情が解らん。レントゲンいらずだ。骨が動いてる様にしか見えん。これはいい。確定診断しやすい。まあ、骨と筋だけなんだけどさ。病気? 専門家に見せましょう
まあ、生憎この世界では再建もあるから最終手段というものがあるんだけどね。
「腰をどうしたんですか? ぶつけたのでしょうか?」
「ああ、思いっきり」
「なるほど、どのくらい前にぶつけたんですか?」
「十日前のだ」
おいおい、この包帯何時のだよ。通過凄いなこの魔族達、もしかして皆十日以上前の怪我? だとしたらすんごい生命力だよ
あ、ちなみにこの人は駄目だ。最終手段を使うしか無いと思う。この人の左足はどんな駄目医者でも、あの診断するな。俺は医者じゃないけど
まずはふくらはぎの方だが、こっちは特に問題ない。骨にはって話だ。血管とか、神経とか、感染症とか気になる所だが、専門外なので解らん
問題は、股関節の方だ。というか大腿骨の頸部。先端の丸い部分、その下のくびれている、頸部と呼ばれる部分で折れている
これは俺の勝手な想像なのだが、この魔族は恐らく左足を噛みつかれ、振り回されたあげく左の腰を打ち付けられたと見た。成人魔族にそんな事が出来てしまう異世界って恐ろしいな
骨を治す時、大事なものはなんだと思う?
正解は骨内に張り巡らされた血液と、関節内に充満している滑液だ。大腿骨頭の最先端は、腰骨から繋がる大腿骨靭帯動脈と大腿骨頸部の下から流れてくる上、下被膜動脈によって栄養し、損傷を修復したりする
この魔族の折り方だと、その頸部の下から来る血管は立たれ、尚且つ先端の靭帯もぶつけた衝撃で切れてしまっている
用は、血管による治癒が難しいという事だ。見た所、骨頭が回転転位している。歩けないくらいの骨頭の骨折線、回転のある転位。パウエルは二度以上、ガーデンはステージ三
診断、大腿骨頸部内側骨折内転型。観血療法の適応だ
一人目から再建とは先が思いやられるな。健側をしっかりと見てっと
「お兄さん。痛みには強い方ですか?」
「え、そうだな。そんなに強くはないな」
「そうですか。じゃあ、我慢してください」
全魔眼。知覚強化スキル、九十倍
〈了解です〉
アダフさんの剣を作り出し、有無をいわさず左の腰から大腿を切り落とす。この九十倍の世界のまま左足の再建を行う
骨盤から始まり、大腿骨、脛骨、腓骨、距骨、踵骨、舟状骨、立方骨、内側、中間、外側楔状骨、一から五までの中足骨、一から五までの基節骨、二から五までの中節骨、一から五までの末節骨
腸腰筋、大腿筋膜張筋、大腿直筋、恥骨筋、大殿筋、中殿筋、小殿筋、大腿二頭筋、半健様筋、半膜様筋、大内転筋、長内転筋、短内転筋、薄筋、深層外旋六筋、外側、中間、内側広筋、前、後脛骨筋、長趾伸、屈筋、第三腓骨筋、長、短腓骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋
閉鎖神経、大腿神経、総……ええい! 長ったらしい
足を切られた魔族の叫び声を無視し、足を再建させた。どうだ、驚いて声も上がらないだろう。俺の魔力はそれなりに持ってかれたからな。健康な方の足を参考にさせてもらったから、間違いは無いはずだ。こっちの落ちてる方の足は、まあ。記念にでも取っておいてくれたまえ
さあ、あと九人。死ねるぜよ
「お兄さんはこれで終了です。もっと、ゆっくり見てあげたいんですけど、数も多いので失礼します。いきなり足切ってすいませんでした」
「キリル。お前、回復魔法を?」
切った瞬間は殺気がもれ出た村長が、驚いて声をかけてくる。いや、さっきから声はかけられてたんだけど無視してたんだよね。この家に入って来たときは少しばかり機嫌が悪かったから無視してたけど、そろそろ手伝ってもらうのもありかな。これから見る魔族以外の包帯を解いてもらおう
「ええ、手足に関しては一番得意です。手を貸してもらっていいですか?」
「斬り掛かったときは殺してやろうと思ったが、回復魔法が使えるのであれば話は別だ。勿論手伝おう。何をしたら良い?」
「彼らの包帯を取ってあげてください」
村長は頷くと駆け足で行動に移してくれた。よし次は、見るからに右腕の無い魔族の元に向かおう。ありゃ再建確定だ
「おい、さっきここで叫び声が上がらなかったか?」
もの凄いタイミングでマールさんがこの部屋に入って来た。今の俺は右手に血塗られた剣があり、周りには傷だらけの村人がいる。村長は部屋の隅にいる魔族の包帯を取っていているため、マールさんの視界には入っていないだろう
おっと、マールさんの目が据わった。急にこの光景を見たらそうなるよね。俺がやったみたいに見えなくもないよね
「はは、マールさん。ちょこっと俺の話を聞いてくれませんかね!」
全魔眼アシストで百倍の近く強化がなされ、ギリギリマールさんの剣を受け止められた
「問答無用」
村長と話しておけばよかった! 説明して外に待機してもらってたらこんな事にはならなかった!
「村長ヘルプミイイイイイ!」
濃い殺気の籠った連撃をさばきながら叫んだ
今日の通学中
「ああ〜、今日も私の書いた駄文を読み返さなくちゃな
…………ふう、読み終わった。ここにも書き間違えがあったとは、気をつけなきゃ。ん?
週間ユニークユーザ? ……126人だと? 百未満じゃない!」
電車の中という事でひとしきり喜んだあと
百人以上にこの駄文が読まれているという事実に無性に恥ずかしくなりましたとさ




