宿命の決戦
オムロンは、愛機となったガルダンを進めながら、ライバルが撃墜されたことを感じた。
「あいつ、宇宙の意思に精神を持っていかれたな……」
腕前は誰よりもある男だが、精神的に弱い人間だということは聞いていた。彼はナイーブすぎる上に信仰がなかったので、心がいつも不安定なのだ。
対するにオムロンはいつも孤独の中で生きてきたのであるが、静馬のように脆いところがなかった。まるで、修験道の山伏のようなものであった。
「宇宙の中に意志を見つけようとすると、逆に宇宙に魂を持ってゆかれることになるのだ。ありとあらゆることは、我々の感想を超越している。ヴィトゲンシュタインが一般意志と名付けたものだ。神の意志は……人間には永久にわからない謎であろう」
無人戦闘機が何機か飛んできて、オムロンの進行を妨げたが、あっさりとライフルで始末すると、そろそろ大統領府であった。
「あいつ。やる気満々じゃねえかっ!」
昼間の陽光に照らされて荒野に立っているのは、両腕のない機動兵士であった。それは、まるで幽鬼のような禍々しさを感じることができた。
「オムロン。決着をつけようか」
「そんな出来損ないの機体でっ」
と叫ぶと、オムロンはガルダンを疾走させる。このスピードは流石の赤い獅子座流星群でも反応できまい、と悦に入っていると、その場にゲオンダはいなかった。スピードでは互角なのだ。
オムロンは意表をつかれたが、ゲオンダは後ろにダッシュして悠々と丘の上に立っている。そして、両肩のビームキャノンが火を吹いた。
盾で防ぎながら、今度はガルダンが後退する。そのタイミングでゲオンダはダッシュしてきたのだ。ガルダンは、盾を捨ててすぐにソードを前に突き出したが、
「シュッ!」
ズオンダは、斜め上方に飛んだのであった。腕のない身体で何をするつもりかと注視すると、ゲオンダの両肩から鞭のような赤い光条が迸り左右からガルダンに襲いかかった。
普通のパイロットならこの奇襲に困惑して凍ってしまうだろうが、オムロンはすぐに対応した。ビームソードで円を描くようにして受け流したのである。ゲオンダのビームウィップは絡まることはしなかった。すぐに消える。そして、今度はキックをしてきたので。そこにこそ、彼の真骨頂があるのだろう。
「あるものを使い、その最良の部分を引き出す」
それは人使いもそうだった。冷徹なそして完璧な人間である。オムロンは、しかし、彼のようになりたいとは思わなかった。それは、完璧に見えるが上に脆い何かを生じさせてしまうのだ。オムロンは叫んだ。
「戦闘は理屈じゃないんだっ!」
ガルダンの機体が赤く光ると、ゲオンダの背後に回り込んだ。両腕がなく小回りが効かないから、ガルダンと比べると、機動力が少し落ちるのである。




