大統領就任式
春先の風が吹き付けてくる。ほとんど冬と変わらないくらいの肌寒い温度の中、私はシートに座って、全天モニターに映るあたりの景色を眺めていた。今回支給されたロボは、儀仗型ザーゴであった。ビームサーベル、ビームライフル装備である。
前に乗っていたのは、市販のものであったが、今回は官制のものであって、カスタマイズをされていなかったので、動きが硬くなっていた。しかし、ようやく特別公務員になれたのだから、そこに文句を言うつもりは毛唐ない。
大統領府と名付けられた、巨大な四角い、A国のホワイトハウスの兄弟みたいな外観を備えた建築物の前に、広大な広場があってそこで、就任式を行うことになっていた。軍楽隊が、聞き覚えのある音楽を奏でている。
警備ロボは、私とクワンプ、名前がややこしいゴルダンのみであった。まさか、こんなめでたい日に誰かが襲ってこようなどと、予想だにしかなったのであるが、おそらくチャーリー•パイナップル元社長の独特の勘なのであろう。彼の少し気障ったらしい喋りが頭の中に蘇る。
「私はいつも勘や嗅覚を大切にしている……。多くの場合、予測が外れることもあるが、万が一の危険を察知するのは、そういう、一見、あてにならない第六感なのだよ」
彼のようなできる男が、そういうことを話すと何か、深い意味があるようにもとれるのであるが、今回は多少なりとも深い意味はあったみたいだ。
ドウッ。という噴射音がして、山の向こうから特徴のある、金切り声のような砲声が轟いた。敵の襲来であった。山を越えて、バーニアを噴かし荒地を疾走してくるのは、見覚えのあるジャンゴPK24四機。あれは、ガルダンの後期発展型バージョンである。
両腕にエネルギーライフルを装備して、目に映るものに弾幕で穴を開けようとする強襲機体である。私の頭の中に、女性のものらしき声が響いてくる。
「どうして、どうして、妹の秋葉を殺したの?あんたは」
これは明らかに、友人以上恋人未満の四条夏生の声であった。同じく儀仗型ザゴに乗っていた、クランプとゴルダンは他の相手を求めて左右に散開した。




