復職
その翌日、私は近所のガストで友人の会田鉄夫と会っていた。恐らく、会田という名字だから、私は会っていたのかもしれない。相田だったら、会わなかったのかというと、それはわからないが……。
「詰んでいるとは何か、ということか」
「うん」
「なるほどねえ。この会田鉄夫、そんなことを考えたことは一度もなかったが、究極的には、『生きるべきか、死ぬべきか』というシェイクスピアの問題になるんだろうね」
「トゥービーオアノットトゥービーか」
「ザッツォールライト」
「ふーん」
その時、私の脳裏によぎったのは……私は、その日の朝、目が覚めると、前歯が乾ききっていたことであった。すぐに、唇で、乾きを潤したのであるが、そのことと、シェイクスピアがどう関係するのかはわからない。今、目の前で、会田鉄夫は他人事のようにカラカラ笑っている。いかに、友人と言えどもそこは他人なのでしょうがない。
「結局、ロボットに乗るしかないってことなのかなあ」
「そうだね。他に君のやることはないのかもしれない」
「そうか」
読者よ。私は実はロボット乗りだったのである。しかし、給料が少ないのでやめていたのであるが、段々、生活費に困っていたので、またロボットに乗ることに決めたのだった。
時代は、搭乗ロボット元年。私はたまたま工業科の高校を出ていたので、ロボット搭乗免許一級を取得していたのであった。操作的には、フォークリフトとそんなに変わらない。アームがあって、二足歩行で走る感じである。たまに、背中にスラスターがついている。細かいところはAIが制御してくれるので、ゲーム感覚で、乗れる。
「はあ、やだなあ」
「しょうがないだろ。才能があるんだから」
「困ったもんだよ」
私は、それから、数日後に、近所のロボット工場にゆき、ライセンスを取っていることを告げると、早速、作業用ロボットに乗って、岩を持ち上げたりした。
「あ、経験者なんだね」
ということで、また解体業の作業員として復職することができたのである。これはこれで、怪我したり事故になったりすることも多いのであるが、しょうがない。やるしかない。
ああ、本当は楽な事務仕事がしたかったが、今や、AIによって、ホワイトカラーの仕事は、昔の十分の一に減っているのであった。最近では、自動運転車が増えてきて、この解体ロボ操縦もいつかは、なくなるかもしれない。そういう意味でもゲンナリする。




