たぶん、特別。③
自室に戻り、先ほど購入したネックレスに護り付与を始める。
頭に関する全てのダメージを無効化するために、複雑な魔法陣を展開する。
護りの付与しかできないことが歯痒い。蘇生や寿命管理、長寿の魔法が扱えればよかったのに。
「できた。」
カリナやレティから聞いた話では、カリナの前世の死因は頭部に何らかのダメージを受けた可能性が高いということだった。
もう一つの要因として呪いが上がっていたが、カリナがありえないと言っていた。前世には魔法の類い、つまり呪いが存在しなかったらしい。そしてドラゴンも。
だからカリーナの人生と自分の人生は似ているけれど、死なないように意識して行動選択することも含め、同じようにはいかないと言っていた。
「それでも聖女のことを信じるんだもんね。」
一人きりの部屋でボソッと呟く。
呪いなんてありえない、なんて言っていたのに、聖女の話す、唯一の死亡フラグが呪いである話はすぐに信じた。
レヴシオン自身もその時は話をすぐに信じてしまったが、よく考えたらそれだけを盲信するのは危険すぎる。
「僕みたいな例外もたくさんあるって言ってたし、その例外の僕がカリナを守ってあげなきゃね。」
護り付与の効果を持ったネックレスは小ぶりながらも輝いている。毎日付けてくれれば突然頭部への力が加わったとしても、このネックレスがカリナを守ってくれる。
ネックレスを箱に戻し、リボンを結び直す。
そしてすでに脱いでたたんでおいた制服のポケットに入れておく。
明日の帰りにでも渡そう。
すぐにでも渡したい気持ちはあるが、もう少しだけ僕の手元に置いておきたい。これからカリナを守り、ずっとそばにいてくれるネックレスを。
翌日、カリナの反応を楽しみにしながら放課後を迎えた。
「カリナ、帰ろ。」
カリナに声をかけると、寄りたいところがあると言う。
新しいスイーツでも見つけたのだろうか。カフェでネックレスを渡すのも悪くないなと考えながら行き先を聞くと、アクセサリーショップだと言う。しかもお揃いのアクセサリーを買いたいと。
なんていいタイミングだろう。
何を買うか決めていないようだが、もう僕の中では決まっている。昨日決めた。指輪だ。
どれにしようかと楽しそうに、でもどこか不安そうに選ぶカリナを指輪へ誘導する。
「ねえ、私もそう思ってた。」
笑っているのにどこか泣きそうなカリナが答える。
「同じデザインのやつを同じ指に付けると、その二人は特別なんだって。カリナは僕の特別だから指輪で決まりね。」
レヴシオンがそう言うと、何かを我慢していたのか、カリナの瞳から涙が落ちた。
カリナの肩を抱き寄せ、そっと目元を拭ってあげる。
なんと声をかけるか、一瞬考えて出遅れている間に、カリナが慌てて口を開く。
「あれ、えー、なんでだろう。なんか止まらないや。」
笑いながら大粒の涙を落とすカリナは。急いでハンカチを取り出し、目元を覆った。
愛おしい。
反射的に正面からカリナを抱きしめる。何が今彼女を不安にさせているのだろう。
普段から平静を装いながらスキンシップを楽しんでいるカリナが指輪を嫌がるわけはないし、嬉し泣きにしては表情は暗い。
「少し外に出ようか。」
たまたま被っていた深めの帽子をカリナに被せる。寝癖が治らない日で良かった。
近場のカフェに入る。窓側の席に案内されたが、人目の少ない席にしてもらう。
適当にドリンクとカリナが好きそうなケーキを二人分注文すると、少し落ち着いたカリナが申し訳なさそうに、ごめんね、と口を開いた。
「何も。僕ちょうど喉が渇いてたんだよね。もう少ししたら混み始める時間だし、先が空いてる時間に休憩できてよかったよ。」
ニヤッと笑うと、カリナがまた申し訳なさそうな顔をする。
「……あのね、誤魔化しきれないし、もう素直に言うけど、私は、レヴィがそばにいない日が来ることが怖い。レヴィのいないこの世界は生きていけない。」
「なに、そんなこと?大丈夫だよ。僕はずっとカリナのそばにいるから。」
「いつもそうやって優しくしてくれるよね。……レヴィ、私が死ぬまでずっとそばにいてね。でも、レヴィは私のことを一番にしないでね。」
「何言ってるの。カリナは僕の一番だよ。」
怪訝な顔をして言葉を返すと、カリナは泣きそうな顔をしながら口元だけ微笑んで見せた。
レヴシオンはカリナのことが理解できない自分に嫌になり、今日はもう帰ろうか、と口にした。
二人は少しギクシャクしながら、頼んでいた飲み物とケーキを口にし、アクセサリーショップに寄ることもなく、あまり会話をすることもないまま眠りについた。




