たぶん、特別。②
聖女にカリナを取られた。
まあ、たまの放課後だけだけど。
カリナの横はずっと僕の場所だったのに、カリナの死亡フラグを無くすためとは言え、正直おもしろくはない。
今日も二人で何か話しながらエリアヒールの練習をしている。
上手に教えられるか分からない、なんて言っていたのに、どうやらうまいこと教えられているらしい。
あの聖女は軽いヒールしか使えなかったのに、今日は範囲こそ狭いがエリアヒールを展開できるようになっていた。
聖女には言わないように念を押されているけれど、あれはカリナが毎晩魔法書を読み込んで勉強しているからだ。詠唱のいらないカリナが、本来ならあんな長い詠唱を暗記しているはずはないのだから。
最初のうちはガゼボで二人のことを見ていたけれど、頑張っているカリナに何かしてあげたくなって、暇なこの時間を有効活用することにした。
僕がここにいてもいなくても、あんまり変わらないだろうし。
レティに声をかけて植物園を出る。
カリナに何かしたいとは言え、何をしてあげたら喜ぶだろうか。
公爵家の娘であるカリーナは、望めば大体のものは手に入る。
カリーナも贅沢をするタイプではなかったが、カリナはカリーナ以上に質素だった。
流行りのドレスは追いかけないし、買い物も月に一度商人が来る時に少し買い足すだけだ。
たぶん何か買ってあげても喜ぶタイプではない。
……いや、僕からのプレゼントならなんでも喜ぶかも。宝石じゃなくて屋台で売ってるオルゴールを贈ってもきっと大切にしてくれる。
物を大切にする人だ。僕からの贈り物でなくても同じように大切にするのかも。
でもその辺のやつと同じにしないでほしい。
僕だから嬉しい、と思ってほしい。
一緒に観劇に行くのはどうだろう。最近流行ってるらしいし。
でも毎日忙しそうにしてるカリナにはゆっくり休んでほしいような気もする。
考えながら街を歩いていると、アクセサリーショップが目についた。
そういえば、初めてカリナと街に来た時にお揃いのアクセサリーを買おうとしていたんだった。
まだ知り合って間もない頃だったけれど、カリナは自分のものだって目印を付けたくて提案した。
もう目印なんて付けなくても、誰から見てもカリナは僕のものだって周知できてる……と思ってた。
実際そうだった。少し前までは。
「やっぱり目印が必要かも。」
聖女が好きなのはカリーナであってカリナではない。けれど、彼女と過ごす時間が増えれば、聖女だってカリナのことが好きになってしまうだろう。
ドアについた鐘をリンッと鳴らしながら、アクセサリーショップに入る。
初老の男が落ち着いた顔でようこそいらっしゃいませと声をかけてきた。
レヴシオンは笑みを返すと、店主と見られるその男がいるカウンターに近づき、問いかけた。
「特別な子に特別だって伝えられるアクセサリーって何かな?」
店主はそれでしたらと、店内の一角にレヴシオンを案内した。
棚に並んでいたのは大小の並んだ指輪だった。
「東方の国では、想い合う男女は同じデザインの指輪を同じ指に着けるそうですよ。ご本人が同席しないとサイズが分からないのでサプライズには不向きですがね。」
「へぇ……。」
この国の慣わしではないようだが、カリナは元々この国の人間ではなかったわけだし、指輪もいいなと、レヴシオンはその一角をじっくり見た。
でもそうか、サプライズか。
指輪はカリナとまた見にくるとして、何か他にもプレゼントしたいな。
カリナに必要なもの……といえば、必須ではないけれど、やはり頭を護るアイテムを身につけさせたい。不要だとしても、カリナを護れる安心材料は多い方がいい。
護りの魔法付与は自分でするとして……。
「いいね。ありがとう。次は頭に身につけるものも見せてくれる?」
「頭、ですか。」
「うん、頭の周りがいいんだ。それで毎日見につけて欲しいんだよね。」
「なるほど。ヘアアクセサリーはその日の洋服に合わせて決めることが多いので毎日というと難しいですね。例えば頭ではなく、首元にシンプルなネックレスなどはいかがでしょうか。」
そう言って店主は小ぶりな宝石がついたネックレスをレヴシオンに見せた。
店主がわざと選んだのか、偶然なのか、その宝石は黄金色だった。
「僕の瞳の色だ。」
瞳を輝かせるレヴシオンに、店主が微笑む。
「ええ、お相手の心臓の近くにご自身を連想させるアイテムがあるというのはワクワクしますね。」
「うん。うん、そうだね。これにしよう。」
いい目印を見つけたとレヴシオンは満足気な顔をする。
「いい買い物ができたよ。ありがとう。」




