たぶん、庇護欲⑤
本当に意味が分からない。
気持ち悪いと思いつつ、貴重な情報源かもしれないと、レヴシオンが折れる。
「はあ。団長さん、この子もとりあえず連れて行こうよ。なんかおかしいから見張っておきたい気持ちもあるし。」
「え、ええ。そうですね。レヴシオン殿が良いのであれば……。ユイ様、この先の話には極秘事項も含まれます。何卒、口外されませんようお気をつけください。」
「はい!ありがとうございます!」
何ともいえない表情の二人とは裏腹に、ユイは満面の笑みを浮かべて馬車に入る。
自分の隣に腰掛けようとしたユイをレヴシオンが睨みつけたのを見て、ルイスがこちらへどうぞ、と自分の隣に座ることを促した。
「君に聞きたいことはたくさんあるんだけど、今はとりあえず二つ答えて。」
「はい。なんでしょうか。」
不満そうなレヴシオンを前に、ユイはニコニコとした笑顔を崩さない。
「一つはカリナの行き先の目星。もう一つはカリナのことどこまで知ってるの?」
「まず行き先ですが、ラソザ村の可能性が高いです。そして明日の朝には全て解決している可能性が高いです。」
「その根拠はなんなの?情報源は?」
「その話をする前に、私からも質問があります。レヴシオン様とカリーナ様のご関係はどういったものなんですか?レヴシオン様はカリーナ様の味方なんですか?」
「味方以外の何者でもないけど。君こそどの立場でその発言をしているの?何でそんなにカリナのこと知った風なわけ?」
「すでにお伝えしたとおり、私はカリーナ様のファンであり、カリーナ様こそが私の推しです。だからある程度の情報は心得ています。例えばカリーナ様のピアスの話、とか。」
ユイの口からピアスの話題が出た瞬間、レヴシオンだけでなくルイスも身構えた。
「あっ、安心してください!カリーナ様が嫌がることや傷つくこと、カリーナ様の不利益になることは絶対にしません!これ、口外してはいけない内容って分かってますよ。だからあの場で言わずにこの場に混ぜてもらったんです。」
レヴシオンとルイスは顔を見合わせると、楽な姿勢に座り直し、肩を下ろした。
「はあ。君すごく扱いがめんどくさいね。僕、嫌になってきちゃった。こんなことなら何も知らず気づかず、カリナに言われたとおりさっさと帰ってチョコスコーンでも食べてればよかったよ。」
「ユイ様、諸々の話は追って聞かせてください。とりあえず、ラソザ村のことや、明日の朝までに解決するという話について、知っていることをお聞かせ願えますか。」
「はい!もちろんです。カリーナ様のためになることならなんなりと!」
疲れた顔をする男性陣とは対照的に、明るい表情のユイは答える。
「レヴシオン様、確認ですが、本当なら聖女である私が攫われるはずだった、ということで間違いないですか?」
「君があの辺のベンチにいるのが日常だったならそう。」
「それならラソザ村のイベントで間違いありません。聖女に村の流行病を治させようとしているんです。その元凶になってしまっている魔獣を倒したら解決して帰れます。」
「イベント……?ずいぶん楽観的な呼び方するね。ふざけてるの?」
「ふざけてません!ゲーム内ではそう呼ぶんです!」
「は?ゲーム?ふざけてるよね。信用される気ある?」
「あ、いや、もー!なんて言ったらいいのかな。これはその……先見!私の先見みたいな能力なんです!」
「そんな能力初めて聞いたんだけど。団長さん、この子本当になんなの?ただの回復がちょこっとできる子じゃないの?」
「先見の話は初耳です。ユイ様、他に隠し事はありませんか?」
「隠し事というか……ちょこっとチートはありますけど……今はそんなことより、カリーナ様のお話をしたいです!とにかく、今回のイベントでは生死に関わるようなことはありません。本当は私がイベントをクリアしたかったですけど、カリーナ様なら余裕でクリアなさって帰ってこられると思います!」
「じゃあもういいや。帰ってチョコスコーンを食べながらゆっくりすることにするよ。僕もう帰るね。」
面倒くさくなったレヴシオンが馬車から降りようとすると、ユイが裾を引っ張り引き止める。
「レヴシオン様、このままルイス団長に送ってもらいましょう!チョコスコーンを食べながら、カリーナ様とレヴシオン様のお話を聞かせてください!」
キラキラした瞳と、頑なに離されないシワになった自分の服を見て、ため息をこぼす。
「僕は一人でいいんだけど。ねえ、団長さんももちろん付き合ってくれるんだよね……?」
苦い顔をしたルイスは、少し頭を抱えたあと、御者へ行き先を告げた。




